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【十二の星の華】ゴアドー島を襲うもの

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【十二の星の華】ゴアドー島を襲うもの

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第4章 その通路の先には

 扉の前でゴーレムたちと学生たちが相対する中、脇をすり抜け、通路を駆ける姿がいくつかあった。
(エメネアのボケっぷりからすると、マトモに遺跡の管理してないし、何があるかもすっかり忘れてそうだからなあ。逆に掘り出し物があるかも)
 そんなことを思いながら、ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)は特殊なフィルターを貼った布を纏い、柱の陰などに身を潜ませながら金品財宝のありそうな場所を感じ取りつつ、奥へと進む。
 20体ほどのゴーレムは階段を降りきった辺りまで並んでいるけれど、身を隠しているミューレリアに気付くものはないようだ。
 月詠 司(つくよみ・つかさ)は、ゴーレムの注意が他の学生に向いている隙に、脇を通り抜ける。
 けれど、ミューレリアのように姿を隠す術を持たない彼は、直ぐに見つかってしまい、ゴーレムに囲まれてしまった。
 光条兵器――暗く炎のように揺らめく大鎌を取り出し、大きく振りかぶる。刃がゴーレムの身体に傷を付けた。
 傷付けられてもゴーレムは怯むことなく、司に向かって、ビームの発射口のある腕部を向ける。エネルギーが発射口の先に集まったかと思うと、勢い良く射出された。
 咄嗟に交わすけれど、交わしきれずにビームは司の纏うヴァンガード強化スーツを貫いて、痛みを与えてくる。
「痛いけど、倒れている場合ではないですからっ!」
 司は、ドラゴン特有の怪力と身のこなしを組み合わせた武術で、ゴーレムへと近付くと付けた傷へと拳を入れた。
 そこから罅が広がって、ゴーレムの腹部が粉々に破壊されていく。
 崩れ落ちた頭部は光を失い、動作を停止させた。
 次のゴーレムに襲われないうちに、と司は奥を目指す。
 灯りのために光術を用意していたけれど、通路には自然と灯りが点っていた。

 その巨体でゴーレムをなぎ倒すように進んでいたレイオール・フォン・ゾート(れいおーる・ふぉんぞーと)と、パートナーの篠宮 悠(しのみや・ゆう)であるけれど、転倒しただけでは起き上がってくるゴーレムに、気付けば囲まれてしまっていた。
 大鎌を手に、突進攻撃をする悠と、高周波ブレードを手に、爆炎や轟雷を放つレイオールであったが、ゴーレムの数が多く、戦況は良くない。
「『試作型星槍』なんてものが出てくるのなら、『大星槍』とか『真・星槍』とか『星槍・真打』とかいうものまで出てきそうだよな」
「流石にそういうのはないんじゃないかな」
 そんなことを話し、ゴーレムからは隠れてやり過ごしたりしながら奥を目指していたエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)は、通路の先に友人らの姿を見つける。
「悠さん! レイオールさん!」
「今助けるよ!!」
 高周波ブレードを手にすると、エヴァルトは駆け出す。ロートラウトもハルバードを構えながら、続いた。
 それでも直ぐに戦況が良くなるわけではなく、ゴーレムからの攻撃に4人は押され気味だ。
(このままでは負けてしまう? こうなったら……!)
「ワタシの体を使え!」
 レイオールは胸部を開いて、ロートラウトを受け入れようとする。
「一か八か、合体やってみよう!」
 ロートラウトは招かれるまま、彼の胸部へと登っていった。
「!?」
 驚くパートナー2人を他所に、レイオールの胸部へとロートラウトが収まる。
「合体! クロス・ロートラウト!」
 レイオールとロートラウトの声が重なり、そう名乗り上げた。
「FlammeSchwert,Fullung!」
 爆炎が高周波ブレードから放たれる。
 それはゴーレムを包み込んで、燃やし尽くした。
 沈下した後のゴーレムの瞳は光を失っていて、焦げ、立ったまま機能停止している。

 ミューレリアと司が通路の奥へと辿り着いたのはほぼ同時であった。
 地下への降り口同様、観音開きの扉が閉ざされている。
「開けますよ」
「ああ」
 左右それぞれの扉に手を掛けて、2人はゆっくりと開けていく。
 扉の先は、大きな部屋が広がっていた。
 ただ、扉がある面以外の壁際には円形状の培養器が並び、中央には刀鍛冶屋を連想させる道具などが転がっていて、大きな部屋も狭く感じられる。
「何だ、ここ……」
 ミューレリアは1歩踏み入れながら、辺りを見回した。
 司も中央へと近付いて、道具を手にとって見るけれど、何のための道具なのか、見当が付かない。
「戻りましょうか」
「そうだな」
 財宝のような目ぼしいものは見つけられず、2人は部屋を出た。
 地上目指して、再び通路を駆けていく。