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温室の一日

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3.未知への扉

「無い……どこにも無い!」
 ショウは唇を噛んだ。
(どこに行った触手! どうして現れない!?)
「……わらわは戦闘能力は無いに等しいのですがぁ、襲ってくる触手を氷術で応戦しようと思っていたですぅ。背後からは弱いのですが…」
 きょろきょろと周囲を窺ってリタは笑った。
「でも、心配する必要はなかったですねぇ」
「ははは……」
 口は笑っていたが、ショウの目は笑っていなかった。
(全く! 一体俺が何のためにこんな所までやって来たと思ってんだ!)
 ショウは唇を尖せた。

「…あ〜ぁ、つまんな〜い」
 香苗は両手を伸ばして、大きく伸びをした。
「女の子を助けて香苗自身も楽しもうと思っていたのになぁ……」
 香苗は、草むらにぼすんと腰を下ろした。
 暗い表情の香苗に、留美は隣にしゃがみこんで顔を覗きこむ。
「わたくしも同じですわ。ケルベロスさんの餌にタネ子さんをとってこなければならないってことは、当然あの触手の森を通らなければならなかったわけで……当然それを楽しみにしていて…でも……」
 小さくため息をつく。
「駆除に除草剤を使ったのかもしれません。でも、木酢液や竹酢液など薬品の使用を極力避けませんと、触……タネ子さんまでやられてしまいますわ。きっと何処かに残っているはずです」
「……そう、だね…そうだよね…」
 香苗は小さく笑った。

「どり〜むちゃん…離れないでくださいね、あ、あぁ、あ、離れないでくださいっ」
 涙目になりながら、ふぇいとがどりーむにしがみついていた。
「離れないから、大丈夫だから。さすがにこんなに密着されると身動きが取れないよ」
「嫌です、離れません! 離れたらどうなるか……」
「もうー…」
「だって触手がどこから出てくるか分かりま……わっ」
 いきなり、どりーむがふぇいとを草の上に押し倒した。
 息がかかるほど近くにお互いの存在を感じる。
「あたしがここに来た理由、聞きたい……?」
「ど、どりーむ…ちゃ…」
「聞きたい?」
 次第に近づいくる唇……

「……ふふ、ふふふ」

「え?」
「ふふふっ、ふふ……」
 ムードをぶち壊して、同じく近くに腰を下ろしていたアリアが急に笑い出した。
「アリアちゃ〜ん、これからなのに〜」
 起き上がるどりーむに、アリアは笑いながら答えた。
「だって…ふふ、あぁ、やぁ……んっ、だめ、だめぇ……」
「へ?」
 見ると。
 草むらに座ったり寝転がったりしていた皆が、身悶え始めていた。
「一体なに!?」
 伸ばされた足の間から見え隠れする草が……動いている!
 よく観察してみると、一体全て、丈の低い触手で埋め尽くされていた。
 寝ころんでいた場所は、触手の絨毯だったのだ!
 虫やタネ子のような怪物が大大嫌いな香苗は、下に生えている触手を虫と錯覚して腰が引けてしまい、動くことも出来なかった。

「これ、スゴイでございます……!」
 つかさは、お尻の下で蠢いている触手に、素直に感動した。
「くすぐったいと言うか…やっぱり…あ…」
(「女子のぞき部」では初行動ですから頑張らないといけませんのに……)
 超ミニメイド服の下は何も着けていない。
 その隙間をぬって、小さな触手が進入しようする。
 餌食になっている人を探して、それをのぞくのが今回の目的のはずだったのだが。
 自分が触手に絡まれている!
 立ち上がろうにも、吸い付いてくる触手の力は強く、身動きが中々取れない。
「な、なんなのこの虫!? いやああああああ!」
「虫じゃないですわアリアさん! これは……これは触手です!」
 留美が悲鳴じみた声をあげる。
「はぁ、はぁ……もぅ、やめて、んああああああ!?」
 いつの間にか、触手の上に仰向け・うつ伏せ状態の面々。
「………」
 大佐はその様子をしっかり撮影しまくっていた。
「最高なのだよ……あぁ、もちろん野郎はスルーだがな。おっと声が入ってしまった。後で編集せねば」
「それ、後で自分にもコピーしてくれないでありますか…?」
 厳重なコーディリアの監視下に置かれていたはずの剛太郎が、こっそり話しかけてきた。
「……高いが…大丈夫であろうな?」
「うええぇえぇ〜! お金取るでありますか!?」
 思わず叫んでしまった口を慌てて押さえる。コーディリアはまだ気付いていない。
「当たり前だ。我のコレクションだぞ」
「そんなぁー…」
 コーディリアの視線が剛太郎を捕らえた。徐々に近づいてくる。時間は無い!
「…げ、激安価格で……お願いするです…」