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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第1回/全2回)

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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第1回/全2回)

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 しかし、次の瞬間、アンジェラはリング・ダガーを取り出すと、くるっと一回転させ、アストライトにそれを袈裟がけに振り下ろす。すると、アストライトの戦闘本能に火がついたのか、ブレードで攻撃をし、ルミナストンファーと籠手型HCでリングダガーの攻撃を防ぐ。だんだんと優勢になるアストライトに、次の瞬間、アンジェラは履いていた8センチのピンヒールで急所を蹴りつけたのだ。
「◎△※…!!!!」
 さすがのアストライトも、ピンヒールで男性の一番大事なところを攻撃されてはひとたまりもない。
 どさっと急所を抱えたまま、倒れてしまう。
「し、しそんが、しそんができなく…」
「ごめんなさぁい。素敵なぼうや。でも、お仕事だから、ね?」
 とアンジェラは美しい髪を振り乱し、今度は巨大なアンテニー・ダガーとリングダガーで、アストライトにとどめを刺そうとする。
 しかし、その刃はリカインによって蹴り飛ばされてしまう。
 弓矢を使う他の隊員を超感覚+ドラゴンアーツで叩き落し、援護に立ち回っていてきたリカインはさすがにお互い、罵詈雑言を吐き合う相手であっても、大事なパートナー、アストライトの危機にかけつけたのだ。
「うちの馬鹿になにすんのよ!」
「ば、か、女はお前だろ」
「うるさい!」
 リカインはチェインスマイトで、美しいアンジェラの髪を掴み、振りまわそうとするが、さすがにそれはアンジェラのプライドが許さなかったらしい、殺気を感じ取り、アンジェラは後退し、リカインにムチを振るうが、それを避けるとリカインはアストライトにパワーブレスをかけてやった。
「な、情けなすぎる…」リカインはつぶやく。
「やめてよね、この髪の毛、あなたのような小娘とは全く質がちがうのよ」
 アンジェラは高笑いすると、部下達に一掃の命令を下す。
 だが、ここにも勇者はいた。
 鈴木 周(すずき・しゅう)、その人である。今までの流れを見て、更に燃え上がったナンパ師魂は抑えられない。
 アンジェラにちょっかいを出そうとする周。
「おっねええさああ〜ん!! 俺が女の子に乱暴できるかよ。そんな危ねーもん捨てて、俺と仲良くしようぜ!」
 後ろからアンジェラの腕を押さえてしまい、くるっと体を一回転させると、まじまじとアンジェラの顔を見つめる。
「うわー、かわいー唇だなー。ん〜…」
「あ…」
 アンジェラは周に唇を寄せられて、一瞬恥じらいを見せる。
「うへへ、責められるのは慣れてねーの? 俺に任せとけって!」
「あら? そう? じゃあ楽しみにしようかしら? でも、私もあなたみたいな若くて綺麗な男の子は大好きよ?」
 と、タッチしてこようとする周の足元をなぎ払うと、急に態度を豹変させ、アンジェラは今度は周を押さえつけ、馬のりになって騎乗位の形を取る。周が見上げると、眼前にパンツスーツのアンジェラの恥骨部分がすぐ目の前にあり、美しい二つの乳房が山を為しているようにも見えた。
「ふう、暑いわね…、少しボタンを外してあげるわ」
 ブロンドをぱっとかき上げ、そういうと、アンジェラは周のボタンを一気にびりっとはじき飛ばし、その唇を奪うと、次にのど元にキスマークをつけてしまう。きゅうっとした痛みがのど元にしたと思うと、赤いあざがつけられる。そしてぺろり、とアンジェラは周ののど元を舐め上げた。
「ひぃぃぃぃ〜!!」
 周は何がなにやら解らず、叫び声を上げてしまう。
「本当にこんな状況じゃなければ、もっと面白い事ができたんだけど、ごめんなさいね。ほんとはあなたも殺さなきゃいけないけど、可愛い男の子は特別よ。私の所有物って印もつけちゃったし」
 と、言うとアンジェラはにっこり笑って周のみぞおちに拳を叩き込むと、失神させてしまう。
「羨ましいわ、隊長」
「全部のことが終わって生きてたら、フランチェスカ、あなた、あの子を好きにしていいわよ。私の次にね」
 部下の赤毛に白い肌が美しいフランチェスカにアンジェラはそういうと立ち上がった。
「楽しみだわ。東洋の男の子は味わったことがないですもの」
 くすり、とフランチェスカは天使のように優しく白い歯を見せて笑いをこぼした。
 
 国頭 武尊(くにがみ・たける)は『光学迷彩』を使用し、猫井 又吉(ねこい・またきち)の操縦する小型飛空挺で左の展望台に強行突入を図ると、バッとアンジェラ達の中央部に降り立った。煙幕ファンデーションを使用し、守備隊の視界を塞ぎ戦闘開始する。
「く!」
 ファンデーションのため、左の展望台は一時、騒然となってしまう。
 武尊は、煙幕を使用した事で、一時的に自分の視界も塞がれたが、『殺気看破』を用い、『シャープシューター』と『スナイプ』を用いた二挺拳銃での『スプレーショット』で奇襲を行うが、敵もさるもの。武尊が攻撃をかけてくる方向へ向かい、弓矢が放たれ、また、銃使いのフランチェスカの銃弾が次々に襲い掛かってくる。
「やべえな。…でも思って居た以上に良い女じゃねえか。ぜひ、『アンジェラ隊長』をひざまづかせたいもんだ」
 煙幕が張れてきた頃、武尊はアンジェラ隊の面々に対しては『シャープシューター』と『スナイプ』を活かし、なるべく手足を狙い、戦闘能力を奪うに留めた。
(ただし、『アンジェラ隊長』は別だ、鞭を弾き飛ばした後、銃弾を足元に打ち込んで踊らせ、心を折って屈服させてやるぜ。ふひひ、まるで悪役みたいだ)
 武尊はそう考え、アンジェラの鞭を狙い撃ちしようとするが、その瞬間、背後から『スプレーショット』を持つ手元にチンクエディアが刺さり込む。
「い…!」
 幸い、チンクエディアは武尊の手元をかすめただけで、大事にならなかったが、振り返った武尊の瞳には、まだ幼い少女のような茶色の豊かな髪をしたミニスカートのスーツ姿の女子がいた。チンクエディアという言葉の由来は、伊語で5本の指を意味するcinque ditaである。しかし、大ぶりなもので、背中に背負うのが普通であった。そして、そのスーツ姿の女子は、まだ、150cmになろうかと言う小柄さでありながら、今度は自分とほぼ、同じサイズのクレイモアを手にしているのだった。
「ベアトリーチェ、早くやっちゃいなさい、その男。アンジェラ様をなんとかしようとしてたみたいだから」
「はあーい。コンスタンツァ先輩。ごめんなさい、素敵なお兄様。その軍服風のツナギ、嫌いじゃないですよ」
 ベアトリーチェと呼ばれたその新人隊員らしき女子はにっこり笑うと
「クレイモアを使うのは初めてです…私、イタリア人ですけれど、ハイランダーに憧れてて、ええ、ハイランダーはスコットランドの山岳民族で、素晴らしい戦闘力を持ってたんですよ。高い山、空気の薄いところでどのように戦っていたのでしょうね。素敵だと思いませんか? ああ、無駄口ばかりでつまらなかったですか。では本題に参りますね。…ごめんなさい、お兄さん!」
 クレイモアをぐおんと廻すと、ベアトリーチェは武尊向かって振り下ろそうとする。万事休す!
 しかし、その瞬間であった。猫井 又吉(ねこい・またきち)が武尊を咥え、ベアトリーチェの攻撃から守ったのだ。
「ま、又吉…」
「武尊ともあろうものが、何やってんだ。女なんかにうつつをぬかしちまうからだぜ。不運と踊っちまいたかったのかい? さってと城のお宝でも頂戴するぜ! イタリアン・マフィアのケセアレの城、お宝もざっくざくなはずだ!」
「逃がしませんよ〜!」
 ベアトリーチェは武器マニアなのか、今度はレイピアで追いかけてくる。
「うっぜえな〜 女子供にも容赦はしねえぞ!」
 又吉が火炎放射器を振り回すと、さすがにベアトリーチェも追いかけるのをやめる。
 そして、そのまま、城の中に突入する又吉と武尊。
「お〜たからはどこだ〜!! 貧乏は罪だ〜!!」