天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

【十二の星の華】想う者、想われる者

リアクション公開中!

【十二の星の華】想う者、想われる者
【十二の星の華】想う者、想われる者 【十二の星の華】想う者、想われる者

リアクション

 エルのそばにはベアと陣が付き、肩を叩いて慰めている。
 ホイップはというと、部屋の隅にうずくまってしまっていた。
「ホイップ、どうしたの!?」
 慌ててルカルカが駆け寄った。
 心配そうにのぞきこむと、ホイップの顔は最高潮に真っ赤で今にも泣きだしそうだ。
「えっと……うんと……」
「うん」
「エルさんの顔が見れない……どうしたら良いの?」
 ルカルカはその答えを聞いて、優しく笑いかけた。
「それって、ホイップがエルを好き過ぎてだね」
「えっと……そ、そうなのかな?」
「うん、そうだよ」
 そばに来た黎が頭をぽふぽふと叩く。
 ホイップは黎の仕草に少し落ち着いて来たようだ。
「わ、私……もしかして、エルさんを振らなかった?」
 どうやら頭が真っ白になっていたらしい。
 この質問には皆、目を反らした。
 その反応でホイップは理解したようだ。
「エルさんにちゃんと伝えなきゃ!」
 ホイップが立ち上がろうとしたが、それをダリルが制して、もう一度座らせた。
「その前に1つ資料を提供しよう」
 そう言い、懐から取り出した紙を渡した。
「何……?」
 ホイップはその紙を読んでいく。
 するとそこにはエルの行動レポートが書かれていた。
 それも事こまかに。
 内容は女性への過剰な親愛行動の列挙。
「会話等の理由はあるが、過剰接触の理由にはならないだろう」
 ダリルはそう付け足した。
「あちこちで女の子のお尻を追っかけてるんだネ。唾付けまくってGETできたらラッキー、みたいな。女の子はアクセサリーって感じ?」
 クマラがレポートを覗きこみ、言う。
「短命な種族は子孫を残すのに貪欲だ。彼は本能に従っているだけなのだから責めてはいけないよ。まあ、今後も同じ事をしつづけるだろうがね」
 メシエは言ってから手をぼむっと打つ。
「ああ、ホイップ。キミも『その女性達の中の1人にすぎない』っていう事なのだな。得心がいったよ」
 最後のメシエの言葉にホイップは真っ赤から白へと変わった。
「人生は面白いものだ」
 淵は真っ白くなっているホイップの頭を撫でた。
「多くの得がたい友がおる。それで十分であろう」
 そう慰める。
「ホイップ……周囲がどう言おうと、一番大切なのはホイップ、『お前自身』の気持ちだろう? こんな状況だ、いつ言えなくなるかも分からない。もう想いが固まっているのなら、伝えられるうちに伝えておいた方がいい」
 呼雪の言葉に耳を傾ける。
「お兄ちゃんは妹いっぱいで軟派なとこもあるけど、ホイップさんのことが本当に大好きで、大切にしたいと思ってる。これだけは間違いないんじゃないかな。だから、私は協力した。他の協力してくれた皆もきっとそうなんじゃないかな?」
「誰かを想って、想われて……時にはぶつかったり、離れ離れになることはあるかもしれない。でも、それでも想い続ける力があれば。また必ずめぐり合える。隣で笑い会える。一緒に色々な運命を共にすることができる。私が見るに、お兄さんにはその想う力が十分にあるみたいだね」
 リースとノワールの言葉。
 やっとホイップは戻ってきたようだ。
「私……これはちょっと許せない……」
 ホイップから真っ黒いオーラが見えるが気のせいだろう。
「でも……うん、エルさんを好きって気持ちはなくなってないから……」
 皆はその先の言葉を待つ。
「だから、やっぱりちゃんと伝えてくる!」
「頑張ってね!」
 ルカルカが背中を押すと、ホイップはエルの元へと戻って行った。
「ふぅ……藍澤位信頼できる奴ならよいのに……」
 ダリルはそう呟いたが、誰の耳にも入らなかったようだ。


「エルさ――」
 ホイップは灰になっているエルの元へと駆け寄ろうとした、が――
ホイップーーー! さあ、わたくしと百合百合するのですわーーー! あの愛の日をもう一度ーーー!」
 ロザリィヌが横から飛び付いて、ホイップを押し倒した。
「も〜! 良いところなんだから邪魔しちゃダメだってば!」
 怪しい手つきで服を脱がせようとしていたロザリィヌを引っぺがしたのはミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)だった。
「わたくしとホイップの愛を邪魔する者はこうですわーー!」
 ロザリィヌは自分の邪魔をしたミレイユに鋭い眼光を向けると、怪しい手つきを始め、ミレイユに襲いかかった。
「えええーーっ!?」
 簡単に押し倒されてしまい、動揺するミレイユ。
 お構いなしに服を脱がしに掛かった。
「だ、ダメーーーっ!」
 ミレイユは思わず光術を発動させた。
「あーれーーーーー…………」
 かなりの近距離の為、避けることが出来ず、ロザリィヌは障子を突き破り、夜空に輝くお星様となってしまった。
「ふぅ……って、あ……あとで謝らないと!」
 ミレイユは慌てたが、とりあえず深呼吸し、呼吸を整えた。
「はい、ホイップさん」
 ミレイユはまだ倒れていたホイップに手を差し伸べる。
「ありがとう」
 ホイップが立ち上がると、ミレイユは背中を押した。
「頑張って!」
「うん!」
 ホイップは無事、エルのもとに辿り着いた。