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【十二の星の華】想う者、想われる者

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【十二の星の華】想う者、想われる者
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第2章


 秘湯迷宮の前。
 意気消沈した顔が揃っている。
 七枷 陣(ななかせ・じん)は自分の銃型HCに反応があるのを見て、慌てた。
「うおっ」
「どうされましたか?」
 隣に寄り添っていた小尾田 真奈(おびた・まな)が聞く。
「ん〜……フィックくんが奴らの位置を送って来てくれたみたいや」
 陣のその言葉に皆の顔が変わる。
「幸さんとフィックくんが奴らを追いかけてくれてたみたいや。これで奴らのもとに乗りこめる」
 陣がにやりと笑うと、それぞれが支度を始めた。
 さらに、陣の携帯にはメールもきており、それについて陣と真奈は準備をしたのだった。


「エル! どういうことですか!?」
 エル・ウィンド(える・うぃんど)の側に駆け寄ってきたのはホワイト・カラー(ほわいと・からー)だ。
 エルに携帯で事情を聞き、慌てて向かって来てくれたのだ。
「うん……ホイップちゃんが……」
「しっかりしてください!」
 ホワイトがエルの両頬を軽く叩くと、パチリと良い音がした。
 叩かれたことによって、呆然としていた顔が引き締まった表情へと変わっていく。
「そうだね。一緒にいってくれるかい?」
「勿論です。その為に来たのですから」
 どうやら気合いが入ったようだ。


「なになに〜、なんなのよぉ〜」
「なにかなー? なにかなー?」
 桐生 円(きりゅう・まどか)のもとに辿り着いたオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)が声を揃えていう。
「やりたいことがあってね」
 円が言うと、2人は顔を見合わせた。
「よくわからないけど〜、面白いことになるのなら手を貸すわぁ〜」
 オリヴィアは円が温泉の為に置いてきていた防具を渡す。
「たたかう? たたかう!?」
「たぶん、そうなるかもね」
 ミネルバはその言葉を聞くと両手を上げて喜んだ。
 そして、忘れるところだったと円の武器を渡した。


 グラン・リージュと一緒にいるのはカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)だ。
 前回の迷宮のときから一緒にいる。
「ホイップちゃんの居場所も分かったみたいですし……他の方の足手まといになるのは嫌ですからボクはここで鄙さんと一緒に帰りを待ってますね」
「何言ってるの!?」
 グランの言葉にカレンが頬を膨らませた。
「一緒にホイップちゃんを助けに行こうよ!」
「しかし……」
「行くぐらいしても大丈夫だろう? いざとなったらカレンと我が守る」
 ジュレールが後押しをする。
「そうだよ! ねっ? 行こう? きっとホイップちゃんも喜ぶよ!」
「はあ、そうでしょうか?」
「そうだよ! それに……ホイップちゃんに告白出来るチャンスがあるかもしれないよ?
 そうカレンがささやくとグランは困惑した表情を浮かべた。
「ボクは……告白する気は――」
「さ、支度〜、支度〜」
 グランの言葉を最後まで聞かずに、支度を始めたカレンだった。


「陣さん、正確な位置の情報を聞いてもいいですか?」
 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が陣に声を掛けた。
「おう、ええで」
 陣は銃型HCを見せながら説明をする。
「ありがとうございました」
「かまへん、かまへん。じゃあ、俺らは先に行ってるから」
「ん? みんなと一緒に行かないの?」
 先に行こうとする陣と真奈にセシリア・ライト(せしりあ・らいと)が聞いた。
「はい。幸様に呼ばれておりますので、先に行かせていただきます」
 これには真奈が素早く答えた。
「気を付けて下さいね」
 フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)の言葉に陣は笑い、真奈は軽く会釈した。


「えっと……すみません、今まで温泉に居たのですが……どういう事態なのでしょう?」
 今朝、秘湯についてまったりしていた鷹野 栗(たかの・まろん)は戦闘の音がするのでこちらの方へと出てきたのだった。
「あ、はい。私も今、エルさん達から事情を聞いたのですが……」
 こちらに着いたばかりのリース・アルフィン(りーす・あるふぃん)が簡単に説明をする。
「そんなことになっていたのですか……玄武甲があるというのは朝食の時に聞いてましたが……微力ながら私もお手伝いさせていただきます」
「それは心強いです!」
 栗の言葉にリースと一緒に来たノワール クロニカ(のわーる・くろにか)が笑顔で言った。
「それに……なんだか胸の辺りがざわついて……向かわなきゃいけない気がするから」
「?」
 リースとノワールは顔を見合わせて首を傾げた。


 準備が整うと、皆はキマクにある洋館へと出発したのだった。
「ホイップ殿……皆、気を付けてな」
 秘湯 鄙は呟いて、空を仰いだ。