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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)

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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)
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第1章 戦場 

ケセアレ・ヴァレンティノ! いざ参る!!」
 と藤野 赫夜(ふじの・かぐや)は星双頭剣を振るい、ケセアレに挑んでいく。
「来るがいい! セルバトイラの赫夜! お前の血肉、全て切り刻んでくれるわ!」
 ケセアレは光条兵器「カンタレラ」の鋭い剣を赫夜に向かって構えると、刃を合わせた。一瞬、火花が散る。星双頭剣の力に対して、ただの光条兵器であるはずのケセアレの剣は互角にガチガチと刃を鳴らして赫夜の星双頭剣をはじく。それほどに、ケセアレの剣の腕は常識の範囲を超えたものだった。
「くっ…」
 赫夜は更に攻撃してくるケセアレの剣を右に左にと避けた。
「赫夜、俺たちで足止めする!」
 グレン・アディール(ぐれん・あでぃーる)が叫ぶと、ソニア・アディール(そにあ・あでぃーる)が光術を放ち、一瞬ケセアレの目がくらんだ間にグレンは煙幕ファンデーションで煙幕を張り、光学迷彩でグレンの姿を赫夜と見せるようにし、そしてブラックコートで気配を消した。
「…幻影か…だが無駄だ!」
 グレンはその上で光学迷彩とブラックコートを解除、ケセアレに攻撃させる為にわざと腹部に隙を作り、正面から突撃する。
「そこか!」
 ケセアレはグレンにカンタレラを突き刺そうとする。しかし、ぎりぎりのところでグレンはそれを避けるが、服は裂け、腹部に一筋の傷が入り、血が噴き出す。
「グレン!」
 ソニアはグレンの名を叫ぶが、グレンは「問題無い!」と応えると、ケセアレの腕を掴み氷術で固めてしまう。
「この小僧が!」
「今だ、赫夜!」
 グレンが叫んだ。
「ケセアレ!」
 赫夜は星双頭剣の切っ先をケセアレに向け、煙幕の中から飛び出してくる。
「おろか者どもめが! その程度の小細工、私に利くものか!」
 その瞬間、ケセアレは氷術で繋がれた腕をぐるり、と腕ごと廻してグレンを突き放すとその凍った腕で星双頭剣を受け止め、その力を利用して氷をバラバラっと砕いてしまい、そして腕が傷付かないタイミングでさっと身を引く。
「なんて豪腕なの…」
 ソニアが叩きつけられ、腹部から血を流すグレンを抱え起こすと、ケセアレの実戦能力に目を瞠ってしまう。
「私を誰だと思っている。お前達、小僧や小娘とはくぐってきた修羅場の数が違う」
 それを見たアンジェラが
「あ〜あ。ケセアレ様を本気にさせてしまったようね…あの方は子供の頃から戦場で陣頭指揮を執り、且つ、権謀術数にも長けている…子供が数名集まっても、倒せる相手ではないわ」
 と、独り言を呟いた。
「くそ…」
「グレン、動いてはだめですわ!」
 ソニアは体を無理に起こそうとするグレンを止めた。
「大丈夫だ…致命傷じゃない…」
 そのままケセアレはカンタレラで赫夜と太刀を交わす。
「くそ…」
 防戦一方になってくる赫夜にケセアレは笑いを漏らした。
「どうした、セルバトイラの赫夜。それでも十二星華か? それとも真珠の伯父の私を傷つけることを躊躇しているのか? だとしたら、甘いな! その甘さ故にお前は五千年前に守るべき『ひい様』とやらを失ったのだろう!」
「『ひい様』のことはいうな!」
 赫夜がひらりと、身の軽さを活かして後退する。
 そこにアシャンテ・グルームエッジ(あしゃんて・ぐるーむえっじ)は、右手に光条兵器の小銃「スィメア」を構え、左手には刀を持ち、赫夜とケセアレの間に割って入る。
(誰にも後悔などさせたくはない、そして、可能な限り、皆が納得できる、満足できる結末を迎えたい。そのために、今必要なことは…赫夜を、無事に護ること…彼女の目的を達成するまで、ケセアレに手出しはさせない…!)
 カンタレラを持ったケセアレにスィメアを打ち込むが、ケセアレはまるでそれが見えているかのように避け、アシャンテにカンタレラを袈裟懸けに打ち込む。しかし、アシャンテは刀で防ぐ。
「小娘、やるではないか」
「赫夜には、手を出させない…!! この身を盾にしてでも…!!」
「それではその望み、叶えてやろう」
 ケセアレはそういうと、アシャンテの腹部に膝蹴りを入れる。
「あぐっ」
「アシャンテさん!!」
 それでもアシャンテはスィメアでケセアレを撃とうとするが、遠方からミケロット・ダ・コレ-リアがシャープシューターで、アシャンテのスィメアを打ち落としてしまった。
「あんなところから!?」
 驚くアシャンテに、ケセアレは
「…我々と貴様らのレベルの違いを思い知ったか、娘」
 とカンタレラでアシャンテののど元を狙う。
「覚悟するがいい!」
 ケセアレの言葉にアシャンテが目を閉じた瞬間だった。菅野 葉月(すがの・はづき)が遠当てで、ケセアレの体をはね飛ばすと、アシャンテは隙を見て赫夜の手を引っぱり、ケセアレから遠ざかる。
「餓鬼共めが。ダンツオ、ジーノ、アンジェラ! その餓鬼共らを排除せよ!」
 ケセアレは受け身を取ると、部下達に命令を下した。
「ケセアレ様の御名のもとに!」
 ダンツオが叫ぶと、部下達も呵成を上げる。元ネッリ隊もその体を一層、大きくし、アンジェラ隊もそれぞれに武器を持ち、生徒達に対して向かってくる。

 道明寺 玲(どうみょうじ・れい)は赫夜の側に付くと
「藤野赫夜、『ガードライン』の用意は整っております。お使いください!」
 とサポートに回る。
(それがしは全てのゆく末がどうなるのか、見てみたい…そして藤野赫夜が精一杯戦うというなら、それを助けてあげたい…)
 玲は心の中でそう呟いた。
「ありがたい!」
 赫夜はそういうと、玲の『ガードライン』と合わせ、星双頭剣を振るう。すると、さすがのケセアレの「カンタレラ」にもダメージがあったようだった。しかし、そのケセアレと赫夜の間にダンツオ隊や元ネッリ隊が割って入り、星双頭剣を体ごと受け止めてしまうと、部下達の体からは血潮が噴き出した。
「…関係のないものは、去れ!」
 赫夜はその血潮をまともに浴び血にまみれ、苦悩の表情を見せた。
「これは私とケセアレの戦いだ! 無用の人死に、出したくはない!」