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【2020授業風景】サバイバル調理実習!?

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【2020授業風景】サバイバル調理実習!?

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《11班》

 「うん、結構バラエティーに富んだ食材が集まりましたね」
 11班の調理担当、夜住 彩蓮(やずみ・さいれん)は、希望していた以上に色々と集まった食材を見回した。
 「あのう……本当に、私たちが捕まえて来た『あれ』も使うんですか? 一応、毒を持ったものが紛れていないかどうかは確認しておきましたけど……」
 レジーナ・アラトリウス(れじーな・あらとりうす)がおそるおそる言う。
 「せっかくですもの、手に入ったものは全部使いましょう! ご飯に木の実を混ぜて炊くんですが、佃煮にして添えたらいいと思うんですよね」
 彩蓮はまったく動じずに、まだガサガサ言っている布袋を持ち上げた。この程度で動揺していては、戦場で治療に当たる衛生科などやっていられないということか、それとも、『食べられるものなら何でも食べる』という個人的な舌の鈍さがなせる業か。
 「お鍋にお湯を沸かして、袋ごと入れて茹でた後、足を取ってもらえます? 間違っても袋を開けて、中身だけお湯に入れようとしちゃダメですよ。逃げちゃいますからね」
 「了解であります! レジーナ、鍋を」
 金住 健勝(かなずみ・けんしょう)が袋を受け取った。まだ信じられないという表情で、レジーナは水を汲みに行く。
 「このウサギはどうするー?」
 自分で捕まえて来たウサギをさばきながら、曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)が尋ねる。
 「マティエさんが採って来てくれたイワゴボウと一緒に汁物にしましょう。お肉は下ごしらえや後始末が大変なので使わなくても良いかなと思っていたんですけど、捕って来たものを使わないのは良くないですものね」
 彩蓮は答えると、調理台の上にどん!と川魚が入ったボウルと、皆が校外へ食材探しに行っている間に演習場の周囲で集めた、ヒニラプラというニラに似た形の、ニラに辛味を加えたような味がする赤い野草の束を載せた。
 「クレアさんは、私と魚の下ごしらえをお願いします。マティエさん、イワゴボウをささがきにして、それが済んだら、こっちのヒニラプラを洗って来てください」
 「了解だ」
 「おっけー」
 クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)マティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)も、それぞれ言われた作業にかかる。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

《12班》

 12班の調理台では、イタリア出身のアクィラ・グラッツィアーニ(あくぃら・ぐらっつぃあーに)が盛り上がっていた。
 「イタリアと言えばパスタ! 砂漠の中だろうが本校の修復作業中で食材が乏しかろうが、パスタを作るしかないよね! ほら、パスタマシーンもちゃんと用意したし!」
 パートナーのアリスアカリ・ゴッテスキュステ(あかり・ごってすきゅすて)と協力して作ったパスタマシーンを指差して、アクィラは叫ぶ。
 「えーっと、汁物はソパ・デ・アホ、デザートはこの瓜を使うとして、この場合、リゾットが主食になるのでしょうか? それとも、パスタが主食になるのでしょうか?」
 蒼空学園の芦原 郁乃(あはら・いくの)のパートナー、守護天使秋月 桃花(あきづき・とうか)が首を傾げる。
 「サワガニはパスタに入れるんですよねぇ。だったら、具を多めにして主菜扱いにしたらどうでしょうかぁ?」
 アクィラのパートナーのシャンバラ人クリスティーナ・カンパニーレ(くりすてぃーな・かんぱにーれ)が、調理台の上の材料を見て言った。
 「サワガニとこのキノコと、山菜と、あとは缶詰のトマトソースを貰って来てありますから、パスタを少なめにすれば、メインっぽくなると思……」
 「パスタ、減らすんだ……」
 とたんにアクィラががっくりと肩を落とした。
 「戦場でパスタの多いも少ないもないでしょう!」
 アカリが一喝したが、その後、
 「量の多少はあんまりこだわらないけど、ゆで加減は柔らかめでお願いね」
 と、ゆで方に注文をつけ始める。
 「えええ、固い方が腹にたまるし美味しいって!」
 アクィラが反論し、二人はそのままパスタのゆで加減についての論争に突入してしまった。
 「すみませんねぇ、パスタのこととなると譲れないみたいで。パオラさん、先にソース作ってしまいましょうか」
 クリスティーナは桃花に謝ると、アクィラのパートナー仲間であるハーフフェアリーのパオラ・ロッタ(ぱおら・ろった)に言った。
 「そうしましょ。パスタは自分で好きなように茹でることにすればいいわよ。私はアルデンテが好きだし。何種類かゆで加減の違う皿を作っておけばいいんじゃない?」
 パオラはうなずき、生パスタの生地を作り始める。
 「じゃあ、私も始めましょうか。リゾットはやっぱり出来たてがいいでしょうから、スープに先に取り掛かりましょう」
 桃花はソパ・デ・アホ……にんにくのスープに先に取り掛かることにした。かまどに鍋をかけ、オリーブオイルをたらし、にんにく、パン……と順に炒めて行く。にんにくの良い匂いがあたりに漂った。
 「スープとリゾットは、桃花に任せておけば大丈夫よね」
 「ですよねー」
 水で冷やした瓜を切り分け始めた郁乃と、火術でかまどの火加減を管理している蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)は、顔を見合わせて微笑みあう。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

《13班》

 水渡 雫(みなと・しずく)は、「良くわかる野外炊さん」と表紙に書かれたテキストを片手に、眼鏡と鼻の頭にススをつけ、かまどの前にしゃがみ込んでいた。
 「えーと、はじめチョロチョロ中パッパ。初め弱火、沸騰したら強火……」
 「お嬢さーん、魚、魚!」
 呪文のようにブツブツと、飯ごうで米を炊く時の火加減を口の中で繰り返している雫の頭ごしに、シャンバラ人ディー・ミナト(でぃー・みなと)がフライパンの中のノボリゴイの切り身をひっくり返す。
 「はっ、忘れていました」
 雫はふるふると頭を左右に振る。
 「あーもう、こっちはオレが見るから! お嬢さんは飯炊きに集中してなよ」
 「そ、そうします」
 雫はうなずいて、飯ごうを見つめながらまた口の中ではじめチョロチョロ……を繰り返し始めた。
 やがて、飯ごうが吹きこぼれ始める。
 「わっ、ふ、吹きました! ど、どうしたらいいのでしたっけ!? 沸騰したら強火、って沸騰してるんですよねコレ!?」
 「火の前で怪しい踊りを踊って、無事に炊き上がるのを祈るんじゃなかったかなぁ」
 夏野 夢見(なつの・ゆめみ)のパートナーのアリス夏野 司(なつの・つかさ)と副菜に使うミツアシウツボの芽の下ごしらえをしていたローランド・セーレーン(ろーらんど・せーれーん)が、大真面目な顔でさらりと言った。
 「はいっ!」
 素直に……と言うよりもういっぱいいっぱいになってしまって何も考えられない雫は、火かき棒を持ったままかまどの前で妙な踊りを踊り始める。
 「ちょっと、幾ら何でもそれはないんじゃない?」
 あくを抜いた山菜のスジを取っていた司が噴き出す。
 「ローランド! 出鱈目教えるなよ!」
 ディーが怒鳴った。
 「……いや、冗談冗談」
 ローランドは慌てて手を振る。
 「吹いたら火を弱めるんだよ。で、ぐつぐつ言わなくなったら火から下ろして蒸らす。……で、いいよね?」
 ディーをちらりと見る。ディーはむっとした表情でうなずいた。
 「こんなことなら、事前に練習しておいた方が良かったかも……」
 雫は涙目になりながら、火かき棒で火をつついて火力を弱めた。
 「司は、夢見さんの望む様な立派なメイドを目指してるんだから、悪い冗談はやめてよね!」
 司が頬を膨らませてローランドを睨んだ。
 「ご飯が黒焦げになる前に止めるつもりでは居たんだけどね。……ところで、これ、味付けはどうするの」
 ローランドは話題の転換を図った。
 「火を通しちゃったから、サラダって言うよりおひたし的な味付けがいいんじゃないかと思うんだけど。沙 鈴(しゃ・りん)さんたちが取ってきてくれたベイゴマの葉を千切りにしてアクセントにして」
 ミツアシウツボの芽の根元の固い部分を取り終わった司が答える。
 「うん、薄味は我輩も望むところだ」
 ローランドはうなずいて、今度はベイゴマの葉を千切りにし始める。