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第四章:謎の虎


「スイーパイズマイン、サンダーブラストです!!」

 カッと閃光が走ったかと思うと、次の瞬間に、勝負は決まっていた。

 廊下には黒焦げで転がる虎の工作が三体いる。

「あなた達、怪我はありませんか?」

 満夜が手を差し伸べると、綺人が微笑みその手を取る。

「本当に助かりました、ありがとうございます」

「全く、間一髪すぎますね」

 先程まで三体の工作に追われていた綺人達を救ったのは、満夜の工作であった。

 教室を隈なく探して歩いていた満夜といちる達が、猛ダッシュで走ってきた綺人達三名を救ったのである。

「やはり工作を持っていないと不利だな」

 ミハエルが静かに言う。

「敵は他にも工作を放っているみたいで、僕らだけじゃ近づけない教室があります。一緒に来て頂けませんか?」

「こ、このくまさんは戦わせたりしないですよ〜」
 
いちるが胸に抱いたくまの人形を隠す素振りを見せる。

「安心しろ、いちる。そもそも頭数に入っていない」

 元親がクールに突っ込みを入れる。

「だけど、工作が一体だけじゃあ心許ないぜ?」

 エルセリアの発言に皆が唸る。

「確かに……せめてあと一体あればいいんですが……」

 そこに、影野とエヴァルトが現れる。

「あれ? ひょっとして皆さんもブローカー探しですか?」

 一同の視線が影野の横にいる綿菓子製造機に注がれる。



「やはり工作を引き連れて来ましたか……」

 相変わらず、教室の前で腕組みをしている小次郎が予想通りといった顔で一同を見やる。

「今度は工作もいますし、数の上でもこちらが優位です」

 綺人がそう告げると、サッと満夜と影野がそれぞれの工作を全面に出して身構える。

「それにおまえの仲間も既に一人捕獲済みだ! (まぁ……アイツがちゃんと見張っているかどうかは知らないけど……)」

 あいつとはパートナーのロートラウトであるが、エヴァルトの中では監視そっちのけで彼女がトーナメントを観戦している姿が浮かんでいた。もちろん、その発言はしない。

「仲間……ですか……」
精悍な顔を崩し、困ったような笑顔を見せる小次郎。
 
実は小次郎もエヴァルトたちと同じくブローカーの件を追っていた。
 そのために賭博の教室に潜入し、客兼ボディガードとして情報の収集にあたっていたのだ。

 相手の警戒をかいくぐるために途中までは周囲の調査の妨害行う等、信用を得られるように行動する。という計画を立てていた。
 それは、一番盛り上がる準決勝辺りで情報をリークし、彼らを捕まえようとする人達をアシストして、ブローカーを捕獲するという綿密な作戦であった。

 だが、小次郎と云えどもこの七名と工作二体を相手に立ちまわり、作戦の継続を行うのは至難の業である。

「……」

 沈黙する小次郎は、如何に自分の正体を明かさないまま、同じ目的を持つ彼らの安全をどう守るべきかを考えているのであった。

「いいでしょう……この教室に入って下さい。いずれ彼が来るでしょうから」

 そう言った小次郎が教室の扉を開く。

 影野が覗き込むと、中は暗幕の引かれただけの何の変哲もないありふれた教室であった。

「大丈夫、罠は無いようです」

 影野の言葉に、一同がゾロゾロと教室内へと入っていく。

 最後に入ったいちるが壁際を手でなぞり、教室の電気をつけようとすると、小次郎の声が聞こえる。

「すいません、準決勝の終了まで、ここで大人しくしておいて下さい。動かなければ危害を加える事はないでしょう……」

「え?」

 振り返る一同の前で、ピシャリと閉じられる扉。

 すぐに元親が扉に手をかけるも開かない。

「閉じ込められた?」

「窓を破ったらいいだけじゃないか?」

 手で探っていた電気がやっと見つけたいちるがスイッチが押し、パツと明かりがつく。

「……どうも、簡単な道のりじゃないみたいですね」

 影野が真剣な眼差しで天井を見つめている。

「どういう事だよ?」
 エヴァルトが上を見上げると、まるでコウモリのように天井に重力に逆らって貼りついた虎の工作の大群が一斉に唸り声をあげるのであった。

「うむ、見事なホラーだ……今の我輩達は絶体絶命状態なのであろうな」

 そう感心したような顔でミハエルが静かに頷くのであった。




 同じ頃、図画工作武道大会の準々決勝では、熾烈を極める戦いが続いていた。

 第一試合の拷問くん一号VSビートルは、ルカルカのビートルを拷問くん一号が追い詰めるものの、第一回戦と第二回戦の激闘がたたったためか、著しく耐久力が落ちた状態での挟み込み攻撃に威力が無く、ビートルの逆襲の砲撃の前に敗れ去った。なお、この時点を終えてビートルは未だそのスキルを使用していなかった。

 
また、第二試合の宦官ダムVSキャタピラASANOスペシャルは、体格差で有利な宦官ダムのライトニングランスを巧みにかわしたキャタピラASANOスペシャルが、宦官ダムの胴体への突撃という捨て身の手段により、辛くも勝利を収めていた。


 そして、第三試合:騎凛セイカ人形VSクレイエルは、ともに、人形タイプの戦いであったが、第一回戦で痛めたクレイエルの片腕への集中攻撃をみせた騎凛セイカ人形が、TKO勝利をもぎ取ったのだが、両者のダメージが共に大きく、勝利した騎凛セイカ人形も次戦を欠場する運びとなった。


 この結果、今大会の準決勝は、ビートル、キャタピラASANOスペシャルのみとなった。
 はたしてこの二体のどちらが、カゲローのプロトタイガーとの決勝戦へと駒を進めることとなるのであろうか……。