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少年探偵と蒼空の密室 A編

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少年探偵と蒼空の密室 A編

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ANOTHER 魔術師の告白

 V:百合園女学院推理研究会のマジカルホームズ霧島春美のパートナー、アニマルワトソンことジャッカローブ獣人のディオネア・マスキプラだよ。
 いつもは春美と一緒にいるボクだけど、婚礼の儀の大混乱で春美たちとはぐれちゃったんだ。
 困ったよね。
 春美は、ルパンやシャルちゃんといるのかな。ボクは、春美のパートナー仲間のピクシコラ・ドロセラ、ピクピクとなぜかメロン・ブラック博士を追いかけたんだ。
 ボクは、ピクピクについていっただけなんだけど、自分も奇術や魔術が得意なピクピクは、塔の隠し部屋を見つけちゃった。
 壁の中にある本ばかりの部屋。
 そして、そこには、本当に、博士がいたんだよ!
 白のタキシードを着た、不思議な暗い目をした人なんだ。
「ここはあなたの書斎ね。メロン・ブラック。いいえ。アレイスター・クロウリー。ワタシは、マジシャンとして、あなたに興味があるの」
 ピクピクと違って、ボクは博士にはあんまり興味はないなあ。だいたい、アレイスター・クロウリーって誰さ。
「ワタシの占いでは、切り裂き魔事件の犯人はあなたよ。マジシャンのワタシにとって、あなたはヒーローの一人だった。会いたかったわ。こんな形ではなくね」
 ピクピクは、こんな人が好きなんだあ。ボクとは、全然、趣味が違うね。
「占いは信じる人間にだけ価値があります。世の中のすべての事柄と同じく。
 切り裂き魔事件。
 医師のロズリン・ドンストン・スティーヴンスンは、黒魔術に傾倒していた。彼は魔術の実験として事件を起こしたことをにおわせた。
 洋服職人のディビット・コーエンは、精神を蝕まれていた。切り裂き魔であることも、彼の病んだ脳髄がみせた幻想の一つだ。
 首相の父である政治家のランドルフ・チャーチルは、自らが首魁をつとめる組織フリーメイスンの力を誇示するために、事件に黒幕として関わったかのように振舞った。
 妻に殺された木綿商人のジェイムズ・メイブリクは、切り裂き魔としての日記を創作した。
 世間の誰も、自分には疑いをかけずに、事件は伝説になった。今度の事件は、ノーマンたちが余計なちょっかいをだしたせいか、自分にかまってくれる捜査官がいてくれて、うれしいです。
 英国いや世界最大の魔術師がそこにいたというのに、なぜ、誰も、自分をあのミステリーと結びつけて考えなかったのでしょうか。自分の罪への罰は、孤独、なのですか」
 博士は、自分が切り裂き魔事件の犯人だと告白してるのかな。しかも、十九世紀のと今回のの両方の。
「あなたは、ノーマンに頼まれて、伝説の犯罪をパラミタで再演したの?」
「自分は普通にするだけですが、それが事件となり、やがて時がすぎると伝説になってしまう」
「アレイスター・クロウリー。あなた、ナルシストね」
 ピクピクと博士は、ボクにはよくわからない話をしてる。早く博士を捕まえないと逃げられちゃわないかな。
「何者であろうと、私は貴様を殺す」
 突然、誰かが部屋に飛び込んできて、レーザーブレードで博士に斬りかかったよ。
「邪魔をするな」
「彼を殺せば、謎は謎のままよ」
「そんなもの、私が知るか」
 博士を守ろうとするピクピクと、斬ろうとする女の子、セミロングの銀の髪、右頬に刺青、あ。前に別の冒険であったことのある鬼崎朔さんだ、がもみあってる。
 博士は二人を残し、どこかへ行こうとしてる。
「ダメだよ。逃げちゃ。うわっ」
 博士をとめようとしたボクは、吹っ飛ばされた。
 イテテ。本棚で頭をぶったよ。痛いなあ。
「ディオ。大丈夫?」
 ピクピクが頭をなでてくれた。
「うん。たんこぶはできてないよ。でも、博士がいっちゃったよ」
 博士を追って、部屋をでかけた朔さんが、立ち止まってボクらを見る。刺すような鋭い視線だ。
「ピクシコラ・ドロセラ。ディオネア・マスキプラ。力なき正義にどんな意味があるというのだ」
 それは、えっと、食べ物に例えるとおいしくないかもしれないね。
「答えられぬのなら、私の前に立つな」
 怒鳴られちゃった。
 朔さんがいった後、ボクとピクピクは春美を探しにいったんだ。