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伝説キノコストーリー

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伝説キノコストーリー

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終章 キノコパーティ開催

 ともあれ――無事にマルコ一行は地下からの脱出に成功した。
 それを迎えたのが裸の仮面美男子だったのは不本意であるが。
「はーはっはっはっ! 無事でなによりだ、諸君! さあ、生還の喜びを祝って私の美しい体を見るが良い!」
 ばさっとマントを翻して裸体をさらす変熊にげんなりといったマルコたち。
 しかも――
「むっ、誰かと思えば貴様らはこそこそと動き回っていた怪しき三人組! さては……キノコを奪ってきたのだな!」
 変熊は麗華たちを指差すと、突如飛び上がった。
「必殺、武器の聖化!」
 武器、と言っていいのかどうか定かではない、主に下半身であろう部分がまばゆく光る。しかも、どこぞからか取り出した薔薇が舞い散る中で、彼は登場時にも使用していた岩の上に着地した。
 その間に、マントの下から現れた――どこに隠れていた?――ペットの猫たちが、麗華へと飛び掛る。
「さあ、敵が俺様の美しさに見惚れているうちに、ネコちゃんたちとキノコを奪い返――」
「なーにをしてんのよ、アンタはっ!」
 が、猫が麗華へと飛び掛るより早く、セルファ・オルドリンの拳が変熊をぶん殴った。
「ぬあああぁぁ、い、痛いではないかっ!」
「キノコだったらもうとっくに持ってるってのよ! 不本意だけど、あのムカつくお嬢様も一緒に脱出してきたの!」
「とっくに……?」
 そう言って、自分の股間を見下ろす変熊。
 そんな彼に、白銀 昶が衝撃的な一言を呟いた。
「まあ、確かにキノコかもしれねぇが……ソレは煮ても焼いても喰えないぞ。てか、ショボイな」
「ショボ……!」
 どうやら、変熊にとって本日一番のダメージは、彼の一言だったようだ。
 落ち込む変熊であったが、どうやらキノコを奪おうとしている輩がいること自体は間違っていないようであった。
「だぁ〜ひゃっはっは!」
 唐突に、上空から舞い降りてきたワイバーンに乗った人影から、不気味な声が降り注いだ。深緑のウェーブかかった髪を靡かせて、下卑た笑い声をあげるのはゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)である。
「俺様のためにごくろうちゃん。テメーらの採ってきたキノコをさっさとよこせ! じゃないと、ワイバーンちゃんが火ぃ吹いちゃうよ〜
 うむ、なんとも美しき典型的な悪であろうか。
「ゲドーさん、まずはあの裸の野郎から燃やしちゃいましょうよ!」
 で、その後ろで声を返すのはいかにも付き従う下っ端といった口調のジェンド・レイノート(じぇんど・れいのーと)だった。
「げひゃひゃっ。疲れて出てくるところを狙うなんて、俺様、なんて頭が頭が良いんだろうなぁ! いっそみんな燃やしちまうかっ!」
「幸せなんて嫌いだー! ボクとゲドーさん以外消えちまえー」
 二人の叫びに、マルコは呆然と呟いた。
「あれか。情緒不安定じゃろか」
「うん、あながち間違ってないとは思うよ」
 北都が賛同するうちに、ゲドーの高笑いはどんどん大きくなる。
「げひゃひゃひゃひゃひゃ……げほげほっ」
 ――むせた。
「さーて、冗談はこれぐらいにして、テメーらの幸せなんて俺様はみとめねぇよっ! やっちまえワイバーンちゃん!」
 ゲドーの声を合図に、ワイバーンは本当に冗談ですまないほどの威力を誇るであろう火炎を生み出そうと、息を吸い込んだ。それが炎となってマルコたちへと襲い掛かる――その前に。
「あ」
 静麻の拳銃が、ワイバーンの足を撃ち抜いた。
 突然の痛みが全身を走り、ワイバーンは暴れだす。
「ぬあ、ぬあぁっ。あ、暴れんなあぁぁ!」
「ゲ、ゲドーさん、ここは引くしかないですよっ!」
「ぐぬぬぬ、くそおおぉ、おぼとけよ〜!」
 どこぞの悪党が言うような台詞を口にして、ゲドーは立ち去っていった。ワイバーンのひょこひょことした飛び方は、実に不安定であったが。
「し、静麻さん……すごいな」
「ま、予想できてたことだったしな」
 拳銃の煙を吹いて、静麻は何てこともないかのように微笑した。

「さあさあ、皆さん、お好きな席についてください〜」
 街ですでに食事の準備を整えていたノア・セイブレム(のあ・せいぶれむ)に促されて、冒険者たちは各々の席に腰をおろした。目の前に並べられるのは、ヴァイシャリー料理から日本料理まで、さまざまなキノコを使った美食の数々だ。
 しかも、街をあげての食事会ということで、食事会の場所になっているのは街の大広間。広間に構える店から椅子やテーブルを借りてきて、盛大なパーティとなっていた。
「ほい、太陽のキノコねー」
 マルコたちが見つけた太陽のキノコ以外にも、別の巣のサンドワームの居住区には太陽のキノコがあったようで……戦部 小次郎はキノコ卸業者さながらに料理人たちにキノコを手渡してゆく。
 料理人たちの料理も順調なようで。
「キノコのソテーあがりましたー!」
「はいはーい、持って行きまーす!」
 ベアトリーチェ・アイブリンガーが調理した薄めの味付けで仕上がったソテーを、スタッフに扮した小鳥遊 美羽が運んでいった。そんなベアトリーチェたちの近くでは、同様にキノコを使って、ぐつぐつと鳴っている鍋を葉月 可憐がかき混ぜている。
「美味しそうだねー、可憐」
「……アリス、味見しますか?」
 得意なのが料理というだけあって、アリスがこくこくと頷いてそれをぱくっと食べると、濃密なキノコの味が広がった。だしも利いて、すばらしい味付けである。幸せそうなアリスの顔を見るに、その味の深さは想像できようというものであった。
 そのうち、どんどん並べられてゆく料理。冒険者たちは疲れた体を癒すようにそれを食べ進めた。 
「太陽を背負い、怪傑! 味・帝・王。見参!」
 なにやら獅子のフードとマントをたなびかせて、黄金の箸を持ったヴァルが現れる。
「一流とは、作ってくれた人、そして食材に対する感謝の気持ちを以て、美味しく食べることなんだよ」
 どこぞの美食家のように料理を食べながら、彼は子供たちへ一流のマナーを諭していた。
 そんな彼らをほほえましく見やりながら、終夏は留守番をしていたペットのヒポグリフに料理を分けてあげる。
「はい、ヒポ。半分こだね」
「そんな目で見ても、オッサンの分はやらねぇよ?」
 ヒポグリフから料理を隠すオッサンにくすくすと笑う終夏。
 ふと、彼女は木の根元でひっそりと食事を進める青年に気づいて近寄っていった。
「音井さん」
「え?」
 名を呼びかけられて振り向いた彼に、そっと終夏は新しく運ばれてきたキノコのソテーを手渡した。
「どうぞ」
「あ、どうも……」
 音井 博季は、なぜ彼女がこれを手渡してくれたのかよくわかっていなかった。だが、それで良い。終夏はそう思う。彼がサンドワームのために人知れず戦ってくれたことは、自分が知っている。それだけで、良かった。
 博季たちの見つめる先で、冒険者たちは食事を楽しんでいた。
「ヤバいっす! 太陽キノコマジ旨いっす! これを越えるなんて……宇宙、そう、宇宙っスよ」
「美味いであります! マルコさんの腕前は、今にパラミタ中を渡るであります!」
「子幸! ちゃんと噛んで食え!」
 シグノーに子幸……食べ方を注意する莫邪も然り。
 尻尾をパタパタさせて、わんこの兄弟のように北都と昶はもぐもぐとキノコの丸焼きを食べる。
「香りがすごいねぇ……」
「うまうま」
 そんな彼らの横で、オルベールとノーンは肩を並べていた。
「オルベールちゃん、このキノコ本当に良い香りだねー!」
「ほんと……すっごく上品な香り。あれかしら……香水とかにも利用できる……?」
 そして――
「はい」
「あなた……」
「最後には笑顔であればいい。そう言いましたよね? 麗華さん」
 さわやかな笑顔を浮かべて、政敏は端のほうにいた麗華に料理を手渡した。
 きっと、自分のせいで地下に閉じ込められたとでも思って、後ろめたかったのだろう。気高く、高飛車なお嬢様を振舞ってはいるが、精細な心も持ち合わせているに違いない。政敏は、彼女と一緒に腰を下ろした。
 そんな彼女と政敏に、ノアがそっと近づいてきた。
「マルコさんの料理、どうですか?」
「……ええ……美味しいですわ」
「良かった」
 ノアの笑顔を見て、料理を食べて、麗華は幸せな心になれた気がした。
 こうして誰かと料理を食べる――ただそれだけで、誰かと仲良くなれることは、きっとある。
「ネームレスたん、ノーンたん、ハァハァ」
「……うざ」
「変な人ー」
 とはいえ、あの変態従者が仲良くなろうとしている対象と目的はいかがなものか、だが。
 そんな従者にネームレスが嫌そうな顔をしている横で、エッツェルはニート、辿楼院 刹那と一緒にキノコ料理を食べていた。
「サンプルは手に入らなかったですが……美味しいですね。まあ、こういうのもたまにはいいでしょう」
「…………おけ」
「たまには……じゃな」
 いずれにしても、皆が仲良く食事会を囲むことができたのはうれしいことであった。
 とはいえ、それにサンドワームが加わるのはいかがなものか疑問であるのだが――
「あれ、意外とイケる」
「貴様、イケないと思って獲ってきたのか……」
 ――アキラ・セイルーンが美味そうに食べている様子からするに、どうやら美味でもあるらしい。ルシェイメアは呆れた顔をしていたが、自分も口にしてみると予想外の美味しさに目を見開いたほどだ。
 料理はきっと、皆を幸せな気持ちにしてくれる。
「マルコさーん、おかわりー!」
「わ、わかっとる! ちーと待ってくれんかっ! こ、こんな忙しいの初めてじゃ」
 マルコの料理が素敵なきっかけになることを祈って、いまはただ、みんなで食事を楽しもう。
 彼が自分の店を持ち、みんなを招待するその時は、また、別の話だ。

 ちなみに――であるが。
「栽培には、まだまだ研究が必要そうだな、こりゃ」
「サンドワームの排泄物っつっても、そこまで取りに行くのはもうこりごりやし……人工的に肥料を作るには、まだ時間がかかるってことやなぁ」
 太陽のキノコを前にして、大久保 泰助とエース・ラグランツはため息をついた。
 どうやら、人工栽培の夢はまだまだ遠そうだ。
「まあまあ、二人とも……気を落とさないでください。どうですか、キノコスープなんてのは。あ、それに土瓶蒸しもありますよ」
「……ん、美味い」
 落ち込む二人にマグカップのスープを手渡して、エオリア・リュケイオンは柔和な微笑を浮かべる。
 もぐもぐと土瓶蒸しのキノコを食べながら、彼らにキノコのスープで一息ついた。それは、二人の口にとても温かく染み入った。

担当マスターより

▼担当マスター

夜光ヤナギ

▼マスターコメント

シナリオにご参加くださった皆さま、お疲れ様でした。夜光ヤナギです。
はちゃめちゃなキノコ狩りツアーいかがでしたか?

三つ巴のような状態になって色々とカオスな冒険でもありましたが、それもまた一つの要素として楽しんでいただければ幸いです。
最終的に太陽のキノコでパーティが出来たことは、自分もとても嬉しい結果でありました。

今すぐに人工栽培……というわけにはいきませんでしたが、いつかは太陽のキノコがいつでも食べられるようになると良いな、と。
そんなことを願いつつ、今後の食料研究を楽しみにしたいと思います。

それでは、またお会いできるときを楽しみにしております。
ご参加ありがとうございました。