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新キマクの闘技場

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新キマクの闘技場

リアクション

「王よ……おぬしも素直にキマクの穴の指示に従っておれば、苦しまずに済んだものを」
「……かもな。だが、俺様が俺様のやりたい事をできねえ苦しみに比べたら、屁でもないぜ?」
「愚かな。その生命、もはや興が失せた。ここで見事散らすがよかろう」
 闘技場の中心で血煙爪を構える王と、剣を構える六黒を、孤児院の子供達が、観衆が、王の仲間達が、そしてテレビを通じて多くのシャンバラの人々が固唾を飲んで見つめる。
 失血のためか霞む目で六黒を見つめる王。周囲の歓声が聞こえなくなっていき、やがて、ドクンドクンという彼の心臓の音だけになる。
「はぁッ!!」
「ぬおぅッ!!」
 互いに斬りかかる二人の勝負は一瞬だった。
 王の胸に一文字の傷跡が出来、血が吹き出す。
「ぐぉ!!」
 胸を押さえ、片膝をつく王にクルリと振り返る六黒。
「ふふっ……わしが求めた強者との死合い……実に愉快であったわ……」
「六黒……」
 笑みをたたえた口から一筋の血が流れ落ちる、六黒が全身から血を吹き出させて倒れていく。

「勝った……の?」
「勝ったんだ……」
「勝ちましたね」
 それぞれの闘いを終えた正統派の戦士達がポツリと漏らし出し、やがて闘技場の会場を万雷の拍手が支配する。
 裏で試合を中継していた彩蓮、カレン、ジュレールも互いにハイタッチを交わす。
「うおおおぉぉぉーーーッ!!」
 王が天に向かい、拳を突きあげて咆哮する。
「やったぜ、王!」
 王の元に、やって来たコウが勢い良く彼に抱きつく。
「て、てめえ、さっき撃たれたんじゃ!?」
「ああ、コレが守ってくれたんだ」
 コウが胸元から、ひしゃげたシャンバラ独立記念コインを取り出す。
「そうか……シャンバラが……」
「何だ? 王、泣いているのか?」
 コウが悪戯っぽく、潤んだ瞳の王を覗き込む。
「ち、違うぜ!! こ、これは……そう、汗だ!! 目から汗がだな!!」
「はいはい……ま、みんな無事だったようだな」
「そ、そうだ! 孤児院のみんなは……」
 王に肩を貸し立ち上がらせたコウが、見てみなよ、とばかり観客席を指差す。
 そこには、美羽のパートナーの剣の花嫁でヘクススリンガーのベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が少々怪我をした子供達をスキル【命のうねり】を使って優しく介抱していた。
「すみません! 美羽さんがご迷惑をおかけしてしまって……」
「ベアトリーチェ? 私はキマクの穴の戦闘員達と戦ったんだよ、迷惑じゃないよ、ねー、みんな?」
 美羽が笑って子供達に問いかける。
「お、おう……」
「う……うん」
 しかし、先ほどまで踵落としで敵の脳天をぶっ叩き続けた美羽の姿が焼き付いているせいか、子供達の反応は微妙である。美羽に対しては、勉強を教えたり、戦闘のバックアップをしたり、彼女が起こしたトラブルのフォローをしたり……と、とにかく尽くすタイプのベアトリーチェに抱きついて離れない子供までいる。
 その横ではエヴァルトがこっそり、子供達に「君もネクサーマスクにならないかッ?」と勧誘を続けていた。



 仲間達や子供達の無事な姿に苦笑する王。誘拐されていたシー・イーにも手を振る。
「(これで……キマクの穴も懲りただろう……)」
 王がそう思ったその瞬間、闘技場の照明が全て落ちる。
「何だ? 停電か?」
「違う! 王、見ろ!!」
 暗闇の闘技場の中に、立体ホログラフィーで、拍手するシルエットが映し出される。
「王、勝利おめでとう。実に見事な興行であったよ」
 エコーのかかった不気味な声が闘技場に響く。
「てめえ、誰だっ!?」
「諸君がキマクの穴と呼ぶ組織のボスだよ」
 ざわめく観衆達の中、王が叫ぶ。
「何がボスだ!? 正体を見せろ!!」
「折角のお誘いだが、それはまたの機会にしよう。キマクの穴の諸君、今宵はご苦労だった。引き上げだ」
「またの機会だと? まだ、やる気か?」
「諸君らは全てを出し尽くして勝利を収めたのだろうが、我々の手の者はまだ十分にいる。今宵は休み、次なる闘いに備える方が得策であろう?」
 笑い声と共に、シルエットが消え、会場の照明が復旧する。
「ふざけやがって! 来るなら来やがれ!! 何度でも俺様が相手をしてやるぜ!!」
「俺様、達だろう?」
 いつの間にか王の傍へと降りてきた正統派の戦士達が言う。
「……ああッ!!」



 その後、控え室に戻った王達の前に、「わずかな額ですが、有効にご活用いただけたら嬉しいです」とメッセージを記した紙片を添えたお年玉袋が置かれていた。
 それは影野がお正月に用意したけれど年少の知合いがいなくて使い所がなかった「奮発したお年玉」であったが、既に影野の姿はなかった。
 大切な恋人に孤独を感じさせない為に、全試合が終わった直後「今から帰ります!」的なメールを送信した影野はノーンを同乗させた小型飛空挺「アルバトロス」を全力で飛ばして一目散に帰路についていたのであった。
 ふと影野が振り返った闘技場は未だ不思議な熱気に包まれていた。


 今宵の戦いを勝利で終え、孤児院の子供達へのランドセルを守りぬいた王やとその仲間達。
 だが彼らはキマクの穴との更なる闘いの日々を確信するのであった。
 キマクの闘技場の戦士達に、安息の日はまだ遠い……。


(終わり)

担当マスターより

▼担当マスター

深池豪

▼マスターコメント

 こんにちわ! 「燃え尽きた、真っ白に燃え尽きたよ……」という執筆終了直後な気分の深池豪です。
 私にとっては初めて満員御礼となったシナリオで、とにかく熱いバトルを描こうと思い……気付けば自己最高のボリュームとなりました。皆さん、いかがだったでしょうか? 
 さて、今回のお話は、キマクの闘技場を舞台に、謎の組織『キマクの穴』に逆らった王と共に戦う正統派と、キマクの穴の戦士たちのガチンコバトルなお話でした。
 アクションの方も、キマクの穴の反則技の数々及び舞台裏での策略、またこれと戦う正統派サイド、裏方の治療や放送班等々、皆さんのアクションのバラエティの多さには改めて驚きました。
 その中でも、キマクの穴の戦士たちの反則技アクションはそれぞれ個性的なものばかりでしたが、その一部は前後の繋がり等で泣く泣く不採用とさせて頂きました。ごめんなさい!!
 ですが、私個人としては今回もまた皆さんのアクションに助けられて、楽しくリアクションを書くことができたと思います。

 今回の称号は、実際に試合に出たキャラを中心になるたけ多くの方に付けさせて頂きました。付いてないよ、と言う方は、私がいいネーミングが浮かばなかっただけです。すいません……。 
 それでは、またお会いできる時を楽しみにしております。

 ※2月17日 一部修正を加え、リアクションを再提出しました