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リアクション
3. 防衛ライン
「危険性反応あり、熱源感知。敵兵でございます!」
ドールズの襲撃をキャッチしたのは、哨戒していたアシュラムだった。
クナイ・アヤシ(くない・あやし)が《禁猟区》で警戒していたために、危険をいち早く察知できた。防衛隊に通達。直ぐに防衛前線が敷かれた。
イコンはトロイア基地に全て格納できるわけでもないので、ゲート付近に作られた仮拠点から発進する。野営でドールズの出現地にも近く、スクランブルの際には素早く迎撃位置に向かうことが出来る。
「アシュラム。先陣を切ります」
清泉 北都(いずみ・ほくと)宣言する。
機動性と近接戦闘に優れたシパーヒーの特性を生かし、敵機が攻撃態勢に入る前に懐へと飛び込む。遠距離砲火が始まっては不利だが、敵の密集している今なら近接が有利となる。
ハンドガンで牽制射撃。敵の回避行動を誘い、レイピアで隙を突く。胸部の継ぎ目に刃を突き立て、直ぐに離脱する。
「内部破壊は余り効果がないようです」
クナイが報告する。電子系統をダメにしたはずだが。
〈局部破壊は意味が無い。機体を大破させろ〉
司令室より通信。マシューが指示を下す。
「面倒だねぇ」
愚痴を言う北都だが、操縦の手は止めない。有効打がなくとも撹乱には徹する事はできる。
〈まずは敵戦力を減らせ。その後客員の作戦行動に移る〉
「じゃ、一気に撃墜数稼ぐわよ!早苗!」
「はいぃ、頑張りますぅ!」
葛葉 杏(くずのは・あん)の指示で橘 早苗(たちばな・さなえ)がコームラントを攻撃位置に動かす。
「ドールズだかなんだか知らないけど、これでも喰らいなさい!」
「前にいる人退避して下さいぃ!」
チャフをばら撒いてアシュラムは退避。
敵密集域に向け、杏はバズーカとミサイルポッドを打ち込む。《行動予測》で敵回避行動による照準修正により、大きなダメージを与える。
ドールズが散開し始める。機体同士の空間を開け、銃撃を開始される。
基本攻撃は遠距離攻撃、ライフル弾とレーザーバルカンがばら撒かれる。
「後方支援開始!」
武崎 幸祐(たけざき・ゆきひろ)が飛空巡洋戦艦グナイゼナウより後方部隊に指示する。
「武器完成システム、オールグリーン。敵機補足――」
ローデリヒ・エーヴェルブルグ(ろーでりひ・えーう゛ぇるぶるぐ)、迎撃システムをオン。コーヒーを啜る。
遠距離砲撃による後方支援砲撃開始。
「補給を必要とする機体は速やかに申し出て下さい! アシュラム、機体残存燃料が低いです。戻って下さい」
ヒルデガルド・ブリュンヒルデ(ひるでがるど・ぶりゅんひるで)が哨戒で消耗している機体に支持する。
〈分かりました。一旦戻ります〉
「セオリー通りの手堅い布石。所詮、機械は機械か……」
〈確かに、戦闘パターンは前と変わらない。学習能力は低いのか〉
戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)も賛同。ドールズの動きが一定に思える。龍神丸で応戦。デスサイズを振るう。機体制御と回避行動をリース・バーロット(りーす・ばーろっと)がサポートする。
「装甲はそこまでないけど、大破させるの手間だね」
グラディウスのアサルトライフルとガトリングを掃射する小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)。《絶対命中》使用。
「機動と強度はそこまでないようですが、……耐久性が非常に高いようです」
ドールズの撃破時間と敵機損傷から解析してベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が言う。ドールズはかなり耐久に特化した機体なのだろうと分析する。
しかも、一部損傷や欠損でも戦い続ける。ドールズを靄として四散させるには大破するしかない。
「しぶとい敵なら、バスターライフルです!」
マーナガルムをリモコン操作する志方 綾乃(しかた・あやの)が支持を出す。マーナガルム内にいるパートナー達に。
「わかったよ。砲撃姿勢完了。機体重心安定」
ラグナ・レギンレイヴ(らぐな・れぎんれいぶ)が機体制御する。
「敵機照準。誤差修正完了ですわ!」
火器制御のリオ・レギンレイヴ(りお・れぎんれいぶ)が敵を適正射程に捉える。
〈味方機、射線より退避して下さい!〉
マール・レギンレイヴ(まーる・れぎんれいぶ)の警告で、射線の味方機が避けていく。
「バスターライフル発射!」
タイミングを見計らい、綾乃が命じ、リオはトリガーを引いた。弾道は一直線し、ドールズを貫いていった。
「オーッホッホッホ! いいザマですわ! ドーナッツ」
「ドールズですよお姉さま」
リオの間違いをマールが訂正。
「ひゃー、すっごい。私ももっと撃墜しなきゃ」
目立ちたがりの美羽が張り切り始める。ミサイルポッド発射し爆炎を散らす。
「強力なビーム攻撃は有効みたいだな。じゃ、こいつはドウだ?」
光龍のソニックブラスターを発動する朝霧 垂(あさぎり・しづり)。絶対命中使用。ドールズへのダメージソースの違いを図る。
「ヒット確認。敵損傷データを基地へと送ります」
同攻撃を数回試したデータを夜霧 朔(よぎり・さく)が基地のライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)へと送る。
「どうだ?」と垂に聞かれ、ライゼが応える。
「ダメージ自体はあまりないけど、ブラスターの当たったドールズは動きが鈍くなってるよ!」
しかし、破砕するには至らない。過去のデータからも部分的な切断も有効じゃない。センサーの集中する頭部を破壊しても動き続けたこともあった。
「音に弱いのか、衝撃に弱いのか?」
どちらにしろなかなに興味深い結果であると、クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)は思った。敵の弱点が分からない今、この実証データは貴重だ。
しかし、まだわからないこともある。ドールズの目的だ。都市を襲うことから、侵略が目的とも思えるし、軍の殲滅だけが目的とも思える。
「ボス、次弾の充填できたよ」
ウンヴェッタのガトリング装填を火器管制担当のエイミー・サンダース(えいみー・さんだーす)が教える。
「よし、前方部隊の援護を再開する。エイミー、陽動射撃で敵機を追い込め」
敵にガトリングを避けられるよう、わざと狙いを外して撃つ。回避行動を誘う。
「きたきた、いくですよーぅ」
陽動にかかったドールズに近づき、天貴 彩華(あまむち・あやか)は嬉々として{ICN0003849#イロドリJt}にビームサーベルを振るわせる。
「彩華、見方の射撃中に突っ込まないの」
姉の無茶な動きを天貴 彩羽(あまむち・あやは)が叱る。
「だいじょうぶ。回避は得意ですぅ」
彩華は反論。と、基地司令室に居るスベシア・エリシクス(すべしあ・えりしくす)から通信が入る。
「何か分かった?」
〈基地にある過去の戦闘データから、ドールズのデータが幾つか出ててきたでござる。そっちに送るでござる〉
量子通信で、瞬時にドールズの行動データが送られてきた。彩羽がそれを確認する。
「やっぱり、銃火器攻撃が多いか。けど、近接攻撃するタイプもいるようね」
防衛初期にはそのタイプが多かったらしい。しかし、ドールズは空軍機編成に対応すべく、今のように銃火器での攻撃を主体としたのだろうと予想がつく。
「もっとも、今回はフィーニクスの性能を見たかったけど……」
「あ、一機逃したですぅ」
ドールズのエンジンブースターを切断し、降下させるが、それでは破壊には至らない。
グレイヴストーンのシュラウド・フェイスレス(しゅらうど・ふぇいすれす)より映像通信が入る。画面に“任せろ”と文字が出る。
「先には行かせません!」
アッシュ・トゥー・アッシュ(あっしゅ・とぅーあっしゅ)はアサルトライフルの照準を合わせて、降りてきたドールズに攻撃を仕掛ける。効果が薄いとはわかっているが、装甲を削る位の事は出来る。
“いまだ!”
画面表示を確認して、グレイヴストーンの影に身を隠していた緋柱 透乃(ひばしら・とうの)、緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)が飛び出す。生身故に、地上に落ちてきた敵を狙う。
「まずは動きを止めます」
陽子は呪鎖【氷葬】の魔力弾を《魔弾の射手》。敵着地地点に着弾させ、脚部を凍結させる。
「陽子ちゃんナイスだよ!」
《行動予測》、銃撃を躱し、透乃は跳躍する。《チャージブレイク》で力を高め、《金剛力》と《自動車殴り》で敵の装甲の弱った部分を叩く。
しかし、生身でドールズに近接すると攻撃を受ける危険性が高くなる。グレイヴストーンがそれを身を呈してカバーする。ドールズの所持武器を抱え込み、透乃への攻撃を防いだ。
透乃は烈火の戦気と修羅の闘気で装甲を殴り、腹部を《一刀両断》、粉砕した。
粉砕されたドールズが消える前に、クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)は《サイコメトリー》をする。外装から過去の戦いの記憶が読み取れた。
(しかし、相手がわからない。視界が黒く覆われている)
島津 ヴァルナ(しまづ・う゛ぁるな)は《封印呪縛》、三田 麗子(みた・れいこ)は《降霊》を試みた。ドールズを取り巻く靄が霊的存在、もしくはフラワシの一種と予想してのことだ。
しかし、どちらも失敗した。
「これは私たちの力量不足でしょうか?」
「おそらく霊的な存在じゃなかったのですわ。でもならこれはなぜでしょう……」
〈数も減ってきた。捕獲作戦に移るぞ!〉
頃合いを見たマシューが命令を下す。
かくして、今後の展開を左右する作戦が開始された。
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