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再建、デスティニーランド!

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再建、デスティニーランド!

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第一章
 
 三二一からのデスティニーランドSOSの知らせを受けまず動いたのは御神楽 陽太(みかぐら・ようた)だった。
「鉄道事業に益する面があるかもしれません……あと困っている方を見過ごし難いですし、協力してみます」
 日頃は、ほぼ常時、妻である環菜と行動を共にしている陽太だったが、今回はデスティニーランドの窮状に面して、手を貸すことにしたのだ。
 デスティニーランドの経営は窮地に陥っており、再建に時間をかけている余裕はない。そう考えた陽太は花形であるステージ周りに力を入れることにした。
 設備投資で舞台装置、装飾を豪華かつ華美に整え、同時に根回しでステージの公演プログラムや他の目玉的施設、アトラクション、イベントを関知して宣伝広告で大々的に広告を打った。
 ヴォルト・デスティニーと経営に関する打ち合わせを重ね、資産家で運用可能な資金を援助した。
 資金活用が効率よくできるよう財産管理での助言も忘れない。
 これらをもとに、ヴォルトはデスティニーランド再建に向けて動き始めた。
 
 そんなヴォルトのもとに、経営コンサルタントを名乗るキャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)が現れた。
「オープンからおよそ20年は遊園地の箔付けとしてはこれ以上のものはないネ。だけど、信憑性を疑わせてはいけないヨ」
「どういう、ことですか?」
「わかってないネー。だから、お客サンいなくなるんだヨ」
「はあ……」
「イイ? テーマパークみたいな大きな施設にはネ、由緒正しさっていうものが必要なんだヨ。ミーみたいに、マスコットとしての実績と知名度があれば別だけどネ」
「つまり、デスティニーランドの歴史をまとめるべきだと?」
「だめネ、ヴォルト。全然ダメ。大事なのは老舗としての看板を守ることヨ」
 キャンディスの言葉にヴォルトは困惑する。
「では、どうすれば……」
「そのためにミーがきたネ。ミーに任せておけば、設立から順に遊園地史をまとめてあげるヨ」
「そ、それは助かります」
 ヴォルトの言葉にキャンディスはにやりと笑った。
「五千年前の地球との接続を知ってるユール・ガーヴチが地球との交流が再開すると予言。貧窮してるゆる族達が出稼準備を始める。すぐに「ゆるヶ縁歌舞練場」が開設、ゆる族が芸を磨く。訓練した芸を発表する場所「ゆるヶ縁演芸場」が後のデスティニーランドである。って、どこかに書いておけばOKネ」
「え……?」
「じゃあ、ミーは帰るヨ。コンサルト料はここに振り込んでおいてネ」
 ひらひらと手を振るとキャンディスは去っていった。
「遊園地史、か……。確かに一度整理してみる必要はあるのかもしれないな……」
 ヴォルトの呟きだけが、ぽつんと部屋の中に響いた。

 夜明け前のまだ薄暗い空の下、静まり返るデスティニーランド。
 厳しい経営状況のため極限まで減らされたキャストがため息交じりに出勤してくるのはいつも日が高く上った開園ギリギリの時間だ。

「じゃあ、コースター系を回るには奥から先に押さえたほうが効率は良いってことですね」
「ああ。入口付近は入場してくるゲストがまず目にするからね、どうしてもすぐ混雑するんだよ」
 まだ誰もいないはずのランド内に、突然声が響いた。
 ランドの地図を片手に周囲を確認する五月葉 終夏(さつきば・おりが)と、デスティニーランドの生みの親であるヴォルト。
 事務所のある城を模した建物から出てきた二人は、ゆっくりとメインゲートへと向かう。
「あ。デスティニーさん、そういえば今ランドは夜間のライトアップはしてるんですか?」
「残念ながらここ2、3年はやっていなかったんだがね。今日は張り切って準備してみたよ」
「それは良かった。ゲストも喜びますね」
 疲れた顔で笑うヴォルトに、終夏は柔らかな笑みを浮かべた。
「やほー、面白そうやから手伝いにきてみたで!」
 ゲートの正面でぶんぶんと手を振りながら奏輝 優奈(かなて・ゆうな)が飛び跳ねる。
 その隣でウィア・エリルライト(うぃあ・えりるらいと)がぺこりと頭を下げた。
「待たせてごめんね。デスティニーさんとの確認事項が思ったより多くて」
 申し訳なさそうに謝る終夏の横でヴォルトが慌ててメインゲートの鍵を開けると、優奈たちを中へ誘導し再びゲートを閉じた。
「三二一たちはぎりぎりまでチラシをばら撒いてくるそうだ。だから先に来たぜ」
「なんだかんだで三鬼くんも引きずられていきましたからね」
 白砂 司(しらすな・つかさ)サクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)の言葉に皆が笑いながら頷いた。
「皆さん、今日はこんな寂れたランドのために、本当にありがとう」
 そんな楽しそうな様子を見て、深々と頭を下げたヴォルト。
「今日はとにかくお客様に楽しんでもらえるように、おもてなし頑張りますね」
「われわれは、きょうはデスティニーランドのキャストだからな」
 ヴォルトを励ますように、関谷 未憂(せきや・みゆう)が明るく声をかける。
 張り切るリン・リーファ(りん・りーふぁ)の傍でプリム・フラアリー(ぷりむ・ふらありー)がこくんと頷いた。
 頼もしい運営スタッフたちの言葉に、ヴォルトは顔を上げる。
 折しも空が夜明けを迎え、一筋の光がメインゲートを照らし出す。
 久しぶりに感じる高揚感に、ヴォルトは思わず目元を拭った。

「レストランやステージのメンバーは最終調整後に現場入りみたいだね。まずは私たちの役割分担かな」
「俺はアトラクションは厳しいからな。ランド内の掃除に徹する」
「司君は、お掃除っていうより仏頂面担当ですね」
「何か言ったか?」
「言いましたー。あ、私は司君と一緒に動きますね」
 司とサクラコがランド内の清掃に名乗りを上げる。
「助かるよ。私はシーニュを使ってランド内の案内をしようかな。」
 空飛ぶ箒シーニュを軽く持ち上げて終夏が案内役を買ってでた。
「あ、私もやりますよ。結構広いですし、終夏さんだけに負担をかけるわけにはいきません」
「あたしもー! まいごをごあんないー!」
「せやな、今日迷子多そうやもんな」
 未憂とリンの言葉に優奈が同意する。
「プリムは、迷子の子供の面倒をちゃんと見てあげてね」
「うん」
「よーし。お客さんに存分にランドを楽しんでもらおうね!」
「ええ。そうだ、デスティニーさん、お客様の写真を撮らせていただくのは大丈夫ですか? 1枚はお客様に差し上げて、許可をいただけたら同じお写真をランドの入口に貼れば、通りかかった方々にも興味を持っていただけると思うんです」
「あー! それいいですね!」
 勢いよくサクラコが同意を示す。
「楽しんでいただいている様子を見れば、確かに入ってみたくなるかもしれません。開園までに掲示板を用意しましょう。是非お願いします」
 嬉しそうなヴォルトの姿に、皆笑顔を見せた。
「私は名物お菓子でも作れんかなって思って考えてきたんやけど、魔法を込めたワッフルってどうやろ?」
「魔法?」
 優奈の言葉に、不思議そうに司が聞き返す。
「せや。ま、基本的には遊びの枠で済ませたいし、短時間で効果はきれるようになっとるんやけどな。疲労回復とか、超高速で動けるとか、魔法でそういう効果を付けとくんや」
「せっかくテーマパークで普段と違う時間を楽しんでもらうんだから、それぐらい特徴があったほうが楽しいね」
「非日常を思いっきり堪能できそうですし、良い思い出ができると思います」
 終夏と未憂がそう言うと、皆も一様に頷いた。
「ほな、ウィアといっぱい作るで!」
「ワッフルの名前、どうしますか?」
 ウィアの言葉に一同はしばし沈黙する。
「ワッフルワッフル?」
「み、未憂さん、なんかどっかで聞いたことあるで、そんな感じのアレ……」
「……やっぱり?」
 マジックワッフル、スペシャルワッフル、ミラクルワッフルなど、様々意見が上がる。
「ビックリワッフル!」
「ドッキリワッフル!」
「ニッコリワッフル!」
「サックリワッフル!」
「ギックリワッフル!」
「トックリワッフル!」
「ヒックリワッフル!」
「なんでやねん! もう完全に音だけやん! ヒックリってなんやねん! 途中酒みたいなのもおったやん!」
 各々が思いつくままに商品名を口にしていくうちに、早朝のためか若干おかしなテンションに突入し、慌てて優奈が止める。
 結局、商品名は優奈が考えたマジカルワッフルで決定し、レアワッフルとしてデスティニーワッフルを用意することになった。
「デスティニーさん、たしかワルプルギスさんがお土産屋さんをやられるんでしたよね?」
 終夏の言葉にヴォルトが頷きながら答えた。
「ワッフルは是非ワルプルギスさんのお店に置きましょう。奏輝さん、よろしいですか?」
「もちろん! な、ウィア?」
「はい」
 二人のワッフルはアゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)の土産物屋の名物商品として急きょ準備することになった。
「それではキャストの皆さん、今日1日どうかよろしくお願いいたします」
「はい!!」
 ヴォルトの言葉に返事をすると、それぞれの担当業務のために走り出す。
 雲一つない快晴。
 夜のうちにヴォルトによって磨かれたアトラクションたちがキラキラと光を反射していた。