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再建、デスティニーランド!

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再建、デスティニーランド!

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第十二章

「さすがにちょっと腹減ったな」
 アトラクションデートに夢中で、食事を取っていなかったことにベルクはやっと気付いた。
「マスター、朝買ったマジカルワッフルがありますが」
「お、それ食おうぜ」
「こ、これは!?」
 二人で同時に口にするが、一定時間空を飛ぶ魔法がかけられていたワッフルを食べたフレンディスの身体が、浮き上がってしまう。
「フレイ!」
 咄嗟にベルクがその手を掴んで地面に引き戻した。
 かかっている魔法は微弱なため、効果を意識して食べれば自分の意思で飛び上がれるワッフルだったが、それを忘れて食べてしまったため、効果が一気に出てしまったのだ。
「すみません、マスター」
「いや、大丈夫か?」
「はい。……あの」
「あ? ……わ、悪ぃ」
 ベルクは慌てて握ったままだった手を離した。
「マスター、本日は有意義な任務を頂き感謝します。その……よければ次は任務以外でご一緒したいですね」
「……! ああ、そうだな」
 ベルクは、フレンディスのその言葉だけで、デスティニーランドでの一日が非常に有意義だったと感じた。

「んじゃあ、最後に土産でも買って行くかー。俺も嫁さんの分買いたいしな」
 ラルクの言葉にソフィアもうなずく。
「わぁ、是非買いに行きましょう!」
 ラルクとソフィアは連れ立って土産店を廻り始める。

 様々なカップルや家族連れの姿。それらをもう一度見渡すと、歩はゲートへと向かった。
「ですてぃにー」
 そう呟いて、ゲート脇の記念スタンプを手帳にぽんと押すと、振り返らず帰路につくのだった。

「ごめんなさい、遅くなっちゃったわ」
「雅羅、お疲れ! 楽しめた?」
「雅羅ちゃん一日お疲れ様ですっ!」
 カラミティコースターから開放され、待ち合わせ場所の観覧車乗り場にやってきた雅羅に杜守 三月(ともり・みつき)杜守 柚(ともり・ゆず)が声をかける。
「乗り物乗りっぱなしだったけど、観覧車大丈夫ですか?」
「もちろん。二人との約束だしね」
 三人は観覧車に乗り込む。ゆっくりと回る観覧車の向こうで、今にも沈みそうな大きな夕日が輝いていた。
「この観覧車、夕日が綺麗だし、町が見渡せて景色もいいんですよ」
「上につくのが楽しみね。夕日、沈みきらないといいけど」
 柚の言葉に、雅羅が外を見る。
「ところで雅羅ちゃんってジェットコースターは好きなんですか? 流石に何度も乗るってなると、大変ですよね。大丈夫ですか?」
「ありがとう。でも、途中でレールが壊れたり、温泉が湧いたりで動かせなくなったから、そんなには乗ってないの。鳥の糞が降ってきたりしたから着替えが大変だったけどね」
 雅羅のやれやれといった雰囲気に、柚と三月も苦笑いをこぼした。
「本当に綺麗ね!」
 天辺近くで、雅羅が声を上げた。
「柚、カメラ貸して。三人で写真撮ろうよ」
「そうですね!」
 柚が三月にカメラを渡すと、三月はタイマーをセットする。
「わわっ!」
 写真に写るため三人が片側に寄ったことによりバランスが崩れ、少し傾いてしまい、思わず笑ってしまう。
 カシャッ。
 シャッターが下りる音がする。少し経つと夕日はすっかり沈んでしまった。
「ギリギリだったね。良かった」
 三月がほっとしたように笑う。
「今度は一日かけてアトラクション回りたいですね。一緒にメリーゴーランドに乗りませんか? 一人だと恥ずかしくて。三月ちゃんは乗ってくれないんですよ」
「メリーゴーランドは流石に無理。恥ずかし過ぎて……」
 二人の様子に雅羅が笑いをこぼす。
「二人とも、今日はありがとう。お陰で楽しい思い出ができたわ」
 地面に戻ると、揃って観覧車を降りる。
 閉園まであと少し。最後まで楽しんでいこうと三人でゆっくりとランド内を回り始めるのだった。

「まぁどうせなら最後に乙な事でもしていくかねぇ」
 ノアはブリザードの出力を抑え、雪を降らせ始める。
 アトラクションや建物のライトアップを反射し、きらきらと光る綺麗な雪が降り、周囲は歓声に包まれた。
 それを見届けたノアは、空を見上げ興奮している源内を引きずりながら、一足早くランドを出るのだった。

 観覧車に乗った歌菜と羽純は雪を見つめていた。
「綺麗だねー!」
「また来てもいいな」
「本当に!? やったー!」
 喜ぶ歌菜の耳には、羽純がポツリと呟いた「お化け屋敷は気に入った」という言葉は聞こえていなかった。

「これは……綺麗ですね」
 観覧車から外を眺めていた恋も思わず声をもらす。
「遊園地というのは、アトラクションだけではなく、全体を楽しむものなのですわ」
「はい。また、来たいです」
「そうですわね」
 二人はじっと外を見つめ、きらきらと反射する雪を楽しんだ。

「結局一日観覧車でランド内の様子を見て終わりだったな」
「なかなか楽しい一日だったよ」
 今日何周目かの観覧車の中で、ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)黒崎 天音(くろさき・あまね)は、ノアの雪を見上げる人々を見つめていた。
 弁当を提げた楽しそうな家族連れ、初デートなのかもじもじと手を繋ぐ恋人同士、賑やかな友達グループ。
 今日一日だけで本当にたくさんの人々の笑顔を見た。
「経営が厳しいとは言っても、ちゃんと手を入れればこれだけの人たちが笑顔になるんだ」
「今日が特別だっただけだろう」
 天音の言葉にブルーズが水を差す。
「デスティニーランドはもともとツァンダ地方を回る小さな移動遊園地だった」
「天音?」
 突然歌うように語り始めた天音に、ブルーズは訝しげな目を向けた。
「地球とパラミタが繋がり、空京が出来た後、地球の巨大遊園地の話を聞いて感銘を受けたヴォルトが金策に駆け回り、現在の巨大テーマパークへと発展させた」
「ああ」
「けれど、時代の流れでパラミタでの娯楽も多様化。客足の遠のいたデスティニーランドの経営状態は芳しくなく、閉鎖は時間の問題、か」
「それもまた、移り変わりだろう。残念だが、な」
「でもね、ブルーズ」
「……?」
「この短期間で、ここまで人が集まったんだ。キャストも、ゲストも」
「うむ」
「向き合うきっかけが無かっただけなんだよ。だから置いていかれた」
 微笑ながら続ける天音の言葉の意味を、ブルーズは考える。
「これだけの底力はあるんだ。そこにヴォルトはきっかけを得た。だから」
 そこまで言うと天音はいったん言葉を切り、再び観覧車から下を見下ろす。たくさんの笑顔がそこに広がっていた。
「だから、もう大丈夫だよ。デスティニーランドはさ」 
 
 ゆっくりと観覧車が止まると、閉園を知らせる音楽が流れ始める。
 興奮気味に今日の思い出を語りながら帰るゲストたちを見送ると、キャストたちも一人、また一人と帰り始める。
 誰もいなくなったキャストたちの控え室には、しっかりと翌日の営業の準備が整えられていた。

 静まり返ったゲートには未憂が飾ったゲストの写真がたくさん並んでいた。
 それをひとつひとつ手でなぞりながらヴォルトが呟く。
「今日からまた、デスティニーランドの遊園地史を作るんだ」

 月の光を反射して、一日稼動したアトラクションたちが輝いていた。

担当マスターより

▼担当マスター

歌留多

▼マスターコメント

こんにちは。花井です。この度は「再建、デスティニーランド!」代筆にて担当させていただきました。
様々なアトラクションやステージ、料理の詰まったデスティニーランドを楽しんでいただけましたら幸いです。
なお、数名の方には称号を付けさせていただきました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。