校長室
年忘れ恋活祭
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■午後〜ショッピング・ショッピング 昼を少し回り、祭りの活気は徐々に色多くなってきた。この祭りが始まったいわれでもある『鐘の伝説』を自らの告白の後押しにしようと、男女・女女・男男(!?)のカップルたちが少しずつ祭りにやってきているようだ。 「人……たくさんいますね……」 商店街や中央広場を見て回っていたのは非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)とそのパートナーたちであるユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)、イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)、アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)の四人。どうやら近遠たちはただ純粋に祭りを楽しみにきているタイプのようだ。 「当たり前ですわ。このお祭りは恋人たちを応援する、結構有名なお祭りですのよ。このお祭りのために遠方から来る人もいるとかいないとか……」 祭りへ誘った一人であるユーリカは空京付近の出身のためか、この年忘れ恋活祭のことをある程度知っているらしい。近遠たちの先頭に立っては、あれやこれやと観光ガイドをしている。 「この変わった形の鈴は、何でございましょうか?」 ユーリカと同様、恋活祭へ誘った一人であるアルティア。だが彼女はこの祭りの事はあまり知らないようだ。 「そのベルはお祭りの参加証であり、参加賞みたいなものですわ。祭りのいわれとも言える、あの時計塔の鐘をモチーフにしたものですの。観光の記念にするもいいですし、ああやって――」 中央広場にそびえる時計塔を指差し、ガイドよろしく説明をするユーリカ。そして差す指を降ろしていくと……そこには、なにやらカップルに軽めの襲撃をかけている男の姿があった。それを見て、イグナは助けに行こうとする。 「む、襲われているではないか! すぐに助けねば!」 だがそれを、ユーリカは軽く制した。 「いかなくてもいいですわよ。あれも祭りの一環で、『一人身の者はカップルからベルを盗ることができる』という暗黙のルールがありますの。一人身で祭りへきた方のストレス発散みたいなもの……ですわね」 「そ、そうなのか……なら、もし貴公らが襲われそうになったら我がしっかりと守ろう。あと、貴公らが迷子にならぬようしっかり見なければな」 祭りの妙な暗黙ルールを了解したイグナは、保護者としての心構えでもってそんなことを言っていた。 「……時計塔には見晴らし台もあるみたいですね〜、町の裏手にある展望台から見える夜景もすごいらしいですし、見に行きましょうか?」 引っ張られる形で強制連行されて祭りに来た近遠も祭りの空気に感化されてか、観光ブックを見ながらそう言葉にする。 「……まだ昼を少し過ぎたばかりですわよ? それに……その、どちらの場所も――特に夜間の展望台は、他の目的の方の邪魔になってしまいますわ」 「……?」 「ほ、ほら! 早く行きますわよ!」 なぜかユーリカは恥ずかしそうにしながら、一行は中央広場へと観光の目を移すようだ。そんなこんなで近遠一行は休憩所の前を通り過ぎていく――。 ……その休憩所の中では、樹月 刀真(きづき・とうま)とそのパートナー、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)、玉藻 前(たまもの・まえ)、封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)の四人が中央広場で買ってきた屋台グルメをずらりとテーブルに並べて食べようとしているところだった。周りの観光客や一人身の者からは羨望のまなざしが注がれている。 というのも、中央広場からここへ来るまでの間、刀真の右腕を月夜が、左腕を白花が抱きついて移動していたものだからハーレムとして見られているようだ。 事実、今も箸が足りないからと白花が率先して刀真にご飯を食べさせようとしているところである。 「刀真さん、あーんして下さい」 「――うん、美味い。はい、お返しあーん」 傍から見れば実に仲睦まじいものである。遅れを取るまいと、月夜も刀真とあーんでの食べさせあいを行う。刀真は白花と月夜で交互に食べさせっているので結構忙しそうだ。その様子を、玉藻はどこか余裕そうにしつつ大人しくしていた。 (あれは完全にハーレムだな……羨ましい) (見せつけてくれちゃって……ベル奪いたいが、返り討ち確定しそうだしなぁ……) そんな独り者たちの羨望のまなざしが刀真たちに注がれているのだが……気づいていないようだった。 さて一方、商店街の洋装店では二組のカップルが色々と品定めをしているようだった。 「健闘くん、こちらのほうはどうですか?」 色々と服を見て回っている健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)と天鐘 咲夜(あまがね・さきや)のカップル。どうやら、天鐘は赤いボレロシャツを選んだようでそれを勇刃に見せているようである。 「お、この服なかなか似合うんじゃないか? この服の赤さ……情熱となって俺の心を溶かしてくれた!」 和気藹々と話しながら、どうやら天鐘の選んだ服を買うことにしたらしい。二人仲良くレジのほうへ向かっていった。 その近くではセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)とセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の女性同士カップルがそれぞれ互いに合う服の選定中だった。セレアナ用の服や小物(どうやらこの店、小物も扱ってるらしい)を選ぶセレンフィリティは俄然気合が入っていた。 というのも、セレアナは誕生日を迎えたばかりであり、そのお祝いも込めた物をプレゼントしようと思ったのだ。もちろん、恋人としてのプレゼントの意味合いもある。 セレアナもまた、セレンフィリティに似合いそうなものはないものか……と様々な服や小物を探している。 ――その後、互いにしばらく色々と探した結果、納得のいくプレゼント交換ができたようだ。その後セレンフィリティのリードの元、商店街でウインドウショッピングなどをたっぷり楽しんでいたようだ。 宝飾などを扱うアクセサリーショップにも、色んなカップルの姿が見受けられた。その中で買い物をしているのは木本 和輝(きもと・ともき)と木之本 瑠璃(きのもと・るり)の二人である。二人は以前に合コンで知り合い、カップリングが成立してから初めてのお出かけらしい。その様子はお互い気になっているのか初々しいようにも見えなくはない。 ……そこから少し離れた所に、瑠璃の契約者である相田 なぶら(あいだ・なぶら)がこっそりと隠れていた。どうやら、瑠璃の和輝とのお出かけ様子を見守ろうと後をつけているようだ。親心、というものだろうか。 「ママー、あの人何やってるのー?」 「しっ、見てはいけません!」 ……なぶらを指差す子供を、その親が足早に連れていく。 (……が、我慢だ我慢。 いい雰囲気になるかどうか、きちんと見届けないと!) そんなナブラの決意を尻目に、和輝と瑠璃のほうは買い物が進んでいるようだ。和輝は緊張気味になりながらも、色々と見て回っている。 (どんなのが似合うんだろう、瑠璃さん……) (せっかくのお祭りなのだ、和輝殿へいいプレゼントを贈りたいのだ……) 瑠璃もまた、真剣な表情であれやこれやとプレゼント候補を探している。どうやら、二人とも相手へのプレゼントを買おうとしているようだ。 「色々と、いい物がありそうだね」 「うーん、たくさんありすぎて迷うのだ」 お互い、まだどれにするか悩んでいる模様。会話を弾ませながら、二人は陳列棚へと視線を向ける、と……。 「お……?」 和輝が見つけたもの、それは『カーバンクル』という名のガーネットだった。――ガーネットは実りの象徴とされ、目標へ向かいコツコツと積み上げた成果を実らせ、成功へと導く……と、事前に読んだ恋愛指南書の、ある項目に書かれていたことを思い出す。 (うむ……これなら……) きっと瑠璃も喜んでくれる。そう思い、和輝はカーバンクルを手に取って、瑠璃に悟られぬようレジへ向かう。まだすぐには渡さず、後で渡すつもりのようだ。 購入し終えると、ちょうど瑠璃も支払いを終えて和輝と合流。そのまま、夜まで色々と見て回ることにした。 そして気づかれないように、なぶらもまた後ろをつけていくのであった……。 ――少しして、同じように店を出てきたカップルの姿があった。ルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)とナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)のマキャフリー夫妻である。ナナとルースは腕を組み合いながら、仲睦まじく歩いている。ナナのその手には、先ほどプレゼントとして購入してもらった赤いピアスが入った小さな袋があった。 これから屋台めぐりをして夜まで過ごそうか、といった話をしていると……向こうのほうから別のカップルが歩いてくる。 「えへへ……真一郎さんっ♪」 どうやら別の店から出てきたのだろう、片手に買ってもらったらしい猫のヌイグルミを抱え、もう片手……というよりは身体全体を摺り寄せ、これでもかとばかりに鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)にべったりと甘えているルカルカ・ルー(るかるか・るー)の二人だ。 と、ルカがマキャフリー夫妻に気づいたのだろう。猫のヌイグルミを真一郎に手渡すと、夫妻へ目を合わせて略式敬礼をして笑顔を見せた。 「ん、そちらも愛し合ってるようで何より。けど、愛の深さは負けるつもりはありませんよ」 そう言うと、ルースはナナの肩をぐっと抱き寄せてラブラブアピール。ナナは身を寄せて幸せを共有しているようだ。 「る、ルカたちだって!」 それを見てルカルカも真一郎にベターッと抱きついてラブラブアピール返し。真一郎もルカルカの髪をそっと撫でてそれに応えている。 ――ひとしきりの交流を終えた後、ルースたちはナナの提案で屋台巡りへ、ルカルカたちはカフェで休憩を取ろうと、二組は別々の行動を取ることになった。 カフェに着き、ルカルカと真一郎は席に座る。休憩を兼ねて、プレゼント交換会を行うようだ。 「ルカからは……これっ♪」 ルカルカの真一郎へのプレゼントはアンティークの懐中時計と、手作りのミートパイだ。美味しそうな匂いが、信一郎の鼻を擽る。 「ありがとうございます。では、さっそく……」 プレゼントを受け取り、笑みを見せる真一郎。さっそく、ミートパイを口にしていく。 「……ど、どうかな? 去年のより上達してると思うんだけど」 ドキドキしながら感想を待つルカルカ。すぐに真一郎は笑みをこぼし「美味しいですよ」と答えていった。 その答えに満面の笑みを返すルカルカ。続いて、真一郎がルカルカにプレゼントを渡した。 「俺からは、これを」 「なんだろ……わぁっ!」 袋に入っていたのは、小さなシルバーイヤリングだった。どうやら、先ほど出てきた店でこっそりと買っていたものらしい。それを手に取ったルカルカは、いそいそとイヤリングを耳に付けていく。 「ど、どうかな? 似合う?」 ルカルカの言葉に、真一郎は返事の代わりに頭を撫でて、似合っていることを伝えた。その行為に、ルカルカは幸せそうな笑みを漏らしたという……。