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リアクション
『A223地区ニ 侵入者 侵入者
テロリストノ強制排除ヲ オコナイマス』
江戸城天守に響くアナウンス。
「地下二階。ここにサーバールームがあるんですね」
柚と三月、刀真と月夜、武尊と又吉そして高円寺は江戸城の地下二階に辿り着いていた。
「でも一番重要な場所なのになんでこんなに警備が手薄なんだ?」
「警備ロボット、全然見ませんね」
「ねえ刀真、さっき変な音聞こえたのなんだったのかな?
ビーッビーッていうの」
「さぁ? そんな音聞こえたか?」
「きゃああああああああああああ」「やばいにゃーー!!!」
絶叫の主はコンクリートモモだ。
後ろに大量の対テロリスト用警備ロボットを引き連れ、こちらへ向かってくる。
「まずい! いったん分かれるぞ!」
高円寺の声に全員が四方に走り出す。
「うわああこっちくんなああ」
「しょうがないでしょー!!」
出遅れた武尊と又吉を巻き込みながらモモとギルティは上階へ上るの階段の先へ消えて行った。
一方の刀真は光条兵器を手にし、真っ向から迎え撃つ構えだ。
三台のロボットの間合いを一瞬ではかると下段に構え、重心になっているキャタピラ部分から胴体から切り離す。
よろけた最後の一台を踏み台に使うと高く飛び上がり、そのまま振り上げた剣を監視ロボットごと下に振り下ろした。
「月夜! 停止スイッチを!!」
刀真はパートナーに指示するが、月夜が走り出した先には壁のような数の警備ロボットが現れていた。
「何これ、こんなの反則!」
「月夜!!」
刀真は月夜の元に駆け寄ると、彼女の手を引いて走り出す。
「刀真ぁ!!」
「ロボットは引き受ける! 後は任せたぞ!」
高円寺達の了解の声を受け取ると、走った刀真は開けた空間まで辿り着くと足をとめる。
剣を構えようとした時だ。
月夜が後ろから抱きついてきた。
「つ、月夜!?」
「(あの時逃げなかったら功名が手に入ったかもしれないのに、私を護ってくれたんだね)
……刀真、ここは私をギュッて抱き返すところ」
刀真は絡められた腕を優しく叩いて、目を細める。
「後でな」
「ん」
二人は追いついてきた敵に向き直る。
「ねぇ刀真」
「なんだ?」
「見ててね、今度は私が刀真を護るからね!」
*
『我々大江戸将軍ランドハ サーバールームヘノ侵入ヲミトメマセン
戻リナサイ サーバールームヘノ侵入ヲミトメマセン 戻リナサイ! 戻リナサイ!!』
動く手足を持たないホストコンピュータには内部にネズミが侵入する事が相当な恐怖なのだろう。
警告アナウンスは、音が大きくなり内容も切実なものになってゆく。
「聞いていられないな」
高円寺はサーバールームへ入ると、これ以上音が聞こえぬように扉を閉めた。
「流石にデカいサーバールームだね」
奥へ進む中、高円寺は巨大なマシンの一つから煙が上がっているのを見つける。
「これのお陰で地下一階の警備が手薄だったんだな」
「あ。海君あそこ!」
柚の指さす最深部にあるものは……
「ああ、きっとあれが停止スイッチのあるコンソールだ!」
「早くボタンを押しましょう!」
「行こう柚!」
三月が走って奥へ向かおうとした時だった。
「扉が……(さっき海くんが閉めたはずなのに)」
違和感に気づいた時、外からアナウンスの音が飛び込んできた。
『大江戸将軍ランド ハ 停止ヲ認メナイ! 異分子ハ強制排除シマス!!』
「三月ちゃん危ない!!」
彼の後ろに警備ロボットが一台迫っていたのだ。
「きゃあああ」
警備ロボットの手からビームが放たれる。
断末魔を上げ命をパートナーを失う瞬間を想像し、悲鳴を上げた柚だったが、
しかし耳に入ってきたのは三月の意外な言葉だった。
「ぱ、パラさん!?」
「え?」
目を開くと、三月は先ほど居た場所から遠く離れたところで尻もちをついている。
三月の居た場所に、警備ロボットのビームに胸の部分を打ち抜かれた吉刃羅が立っていた。
吉刃羅が三月を庇い、彼をロボットの攻撃から遠ざけたのだ。
吉刃羅は特殊警棒を抜いてきたロボットの攻撃を刀で受けているが、持っている刀は竹光な為、
警棒の重さに耐えきれず刃の部分にはピシピシと亀裂が走ってきていた。
「皆の話を聞いて柚姫達を助ける為に追ってきたノダ」
「話しってまさか……」
「取り壊しの話を聞イタ。大江戸将軍ランドは無くナル。余と、余の民達は処分にナル予定だと聞イタ。
あの者は正直で良い男(おのこ)だったナ」
「ならなんで此処に……」
「不思議か高円寺。だがこの吉刃羅にも理解出来ぬノダ。
話しを聞いたアト、何時の間にかここに辿り着いてイタ。
ただ分かるノハ……」
吉刃羅のコンピュータの中で、記録されていたある場面が再生される。
『あたしが姫でも、姫で無くても。
町娘でも火消しでも悪党でも
ロボットでも人間でもなんでもいいじゃない!
パラさんが……吉刃羅自信が正しいって信じたものを信じて!!』
「セレン姫、余が信じるのは余の民……そしてお前達人間ダ。
大江戸将軍ランドが無くなろうとも、人間はこの場所をきっと良い方向へ導いてくれるダロウ」
「吉刃羅さん!」
「行くノダ柚姫、高円寺!!」
「……はい!!」
高円寺は柚の手を取り走り出す。吉刃羅はそれを見ると、警備ロボットに向き直った。
『大江戸将軍ランドハ オ前ヲ認メナイ!!!』
「ここは余の国、江戸、好きにはさせんゾ!!」
ヒビの入った刃は遂に悲鳴を上げて割れる。
遮るものが無くなった特殊警棒は吉刃羅の頭が減り込む程に振り下ろされた。
「吉刃羅!」
三月の声が響く。
それと同時に柚と高円寺が一緒に停止スイッチを押しこむ。
「去らばダ、美しき姫達……人間達よ!!」
吉刃羅は、刃の無くなった刀の柄を警備ロボットの腹に打ち込んだ。
サーバールームの中、二台のロボットが壊れ、横倒しになっている。
言葉を失った人間達はそれを見つめている。
停止機能が正常に機能した事を告げる音が鳴り響き、やがて機晶石の力を失って消えた。
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