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リアクション
一方話は戻って火消しを集めようと喧嘩(の振り?)をしていた真達だが……。
左之助の読み通り、火消しはまんまと往来へ集まってきていた。
そして「デカい山をやる前におじけついてたから喝いれてやってんだ」という左之助の出鱈目を信じて詰め所へ帰ってくのを、
皆でこっそり付けて行ったのだ。
「パ組……ここですね」
「あ、あの!」
前に出たのはリースだ。
「私この格好ですから、お手伝いさんの振りをすれば中に上手く入れると思うんです!
関係者の方を見つけたら成るべくその……穏便に!
で、でももし無理だったら空飛ぶ箒に皆を乗せて飛んで逃げますから、時間稼ぎしてくれますか?」
「一人で大丈夫?」
「自信は……その……
でも私に出来る限り……頑張ります!」
彼女の勇気ある提案に同意した真らは、向かいの長屋を覗く振りをしながらそこで待つことにした。
数分後。
詰め所から響く、女性の悲鳴に真達は体を堅くする。
武器になりそうなものを手に詰所の前へ戻ると、中からリースの声が聞こえてきた。
「ち、違うんです! 違うんですッ! 私、家政婦さんなんです!!
ちょっと探し物してただけでその、えーと、ご、ごめんなさいぃぃぃぃ!!」
悲鳴と共に箒に乗ったリースが後ろに二人の男性を乗せてこちらへ飛んでくる。
明らかに定員オーバーでいつもの半分もスピードは出ていない上、後ろの二人は疲労からよろけていて、
バランスを崩した箒は詰め所から往来へ飛び出すとすぐに地面に不時着してしまった。
それを追って詰め所から出て来た火消し衆との間にすかさず割って入るフレンディスとベルク。
「リースさん、マーガレットさん、二人を連れて逃げて下さい!」
「てめぇら! そいつを庇うノカ!
あの娘は妙なヤツだゾ!」
「ソウダソウダ! そこを退ケ!」
口々に言うロボットを前に、堪忍袋の緒が切れた左之助が声を荒げた。
「こんな嬢ちゃん一人に寄ってたかって突っかかるてめぇらの方がよっぽど妙じゃねぇか!」
「何ダト!? てめぇ江戸の安全を守るパ組の親分に立て付くノカ!? どういう事か分かってるんだろうナ!!」
「いいぜ、その喧嘩買ってやろうじゃねぇの」
「兄さん待って!!」
叫んだのは真だった。
臨戦態勢のまま止まっている彼らの間に入ると、真は手に持っていた寸鉄を地面に投げ捨てた。
「おい真!」
「いいんだ兄さん、いいんだ」
真は左之助をなだめるように首を振って見せると、息を吐いてゆっくり話し始める。
「聞いてくれ。
この人達は俺の大切な友人なんだ。彼らには帰る家も家族もある。それはここじゃない。
なのにそれが何かの間違えでここで奉公させられていると聞いて、彼女は彼らを家族の元へ返そうと助けにきたんだよ。誤解なんだ」
「パラさんと見つけた怪しいヤツらだと思ってたが、素直な奴らだから同心に引き渡さずにうちで預かってたたんダヨ!
お嬢ちゃんも悪かったナ!!ちゃっちゃと帰りナ!!」
「え?……あ、うん。ありがとう」
余りの物分かりのよさに少々面食らっていると、要領得たり。と加夜がパンと手を叩いてロボット達の注目を集めた。
「それとあとお願いがあるんです。いいかしら?」
加夜の目配せに、真は我に返って再び話しをする。
「他の友人も別の場所に閉じ込められてるんだ」
「何ダッテ!? そいつはいけネェヤ!」
「それを仕組んだのはとある大悪党で、彼らを集めて閉じ込め自分の好きなように江戸を操ろうとしている。
君達の町の中心に、知らない事が知らないうちに起きているんだ。
もしそんな勝手を許さないという想いがあるなら……協力してくれないか!?」
真の説得は、火消しロボット衆を仲間にするのに十分なものだった。
彼を囲んでワイワイ騒ぎ出したロボット達を見ながら、加夜は
「(スキルを使うまでも無かったわね)」
と、優しくほほ笑んだ。
*
それから暫くして、火消しの詰め所で――。
「おまたせしました!」
と戻ってきたのはフレンディスとベルクの二人だ。
先ほど二人の関係者を助けたものの、他の人間を助けるまで警備ロボットの居るゲートを通ったりする事は出来ない。
フレンディスとベルク、そしてリースとマーガレットは関係者の二人に真と左之助の着物の羽織を渡し着せて、
茶屋に連れて行きそこで他の人間の安全が確保できるまで待機して貰う事にしたのだ。
「二人はリースさん達にお任せしたので大丈夫でしょう。それでこちらの手筈は?」
フレンディスは言いながら加夜の横に立ち、彼女に習って手書きの地図に目を落とした。
地図は真がロボット達から得た情報で描いたもので、多少大雑把だがわかりやすい。
「関係者の方が捕えられている江戸城の牢獄の位置が分かりました。
天守(閣)を前にしたアクションショーの為の広場があって……、そこの舞台装置の中に大きな牢獄があるみたいなんです」
「ショーの為の……盲点でしたね」
「ええ。でも警備ロボの目を盗んで江戸城に侵入するのは難しそうですね」
困った顔で考え込む二人の前に奥の部屋から戻ってきた真がやってくる。
「それが、そうでもないみたいなんだ」
ニの形をした彼の唇からは、白い歯が覗いていた。
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