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【冬季ろくりんピック】雪山モンスター狩り対決

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【冬季ろくりんピック】雪山モンスター狩り対決

リアクション





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 『我』の翼は1つで十分だ――そう言わんばかりに健在の片翼で羽ばたき、一度空中へ離脱しようとする雪火龍だが、その命綱もあっさり撃たれた。
「せっかくあたし達と同じように地に脚をつけてるんだから、逃げることはないわよ」
 駆け付けたセレンフィリティの射撃だった。
 睡眠薬を仕込んだ銃弾は貫通せず、噴水のように散る血飛沫を見て、ドラゴンはその新手の方向に火球を放とうとするのだが、今度は脚に鋭い痛みが襲った。
「セレンをやりたいのならば、まずは私からお願いしたいわ。彼女に先に死なれたら私は生きていけないもの」
 セレアナのライトニングランスで斬られ、バチッと電流が脚から走るのだが、これしきはドラゴンにはむず痒いものだ。
 ならば、望み通り貴様から――そう斬られた脚を平然と振り上げ、踏みつけようとするのだが、
 バシュ――ッ!
 再び翼に銃弾が埋め込まれ、情けなく首を振って痛みを露わにするのだ。
「嬉しいこと言ってくれちゃってまあッ! 雪山なのに熱い熱い……っ!」
 ドラゴンといえど、群れる契約者を1人1人相手にしていてはキリがない。
 今までとは段違いの咆哮を腹の底から捻りだすと、空気が臆病になるほど揺れ、大地が震え出した。
 その強烈な一撃に、思わず近くにいたセレアナが膝をつくと、ドラゴンの切れかけた尾が最後の力を振り絞った。
「セレアナッ!」

*

 ザシュッ――!
 振り回した尾が宙を舞っていた。
 もはや痛みも感じぬ代わりに、身体の大事な一部を失った喪失感だけがハッキリとし、それを作り出した者を見た。
「こっちも間に合ったみたいだ」
 忍が振るった大剣は目にも止まらぬほど――雲耀の速さ――一で、加えて一瞬にして気配なく間合いに入っていた。
「自慢の尾がなくなり、さて……どうする? もはや翼は使い物にならないとなれば、大地で火を噴くだけか? それとも、赤子のように喚いて、じたばたと暴れるのか?」
 ドラゴンは咆哮をあげると――これは突撃猪かと思うほどに――突進を繰り返した。
「よっと……」
 忍が、そして他の仲間達が、そんなドラゴンとすれ違いざまに切り結んでゆくのだが、一向に止まる気配がなく――。
 次第に辺りは、大木が何重にも横たわる疑似アスレチックと化していった。

*

 その愚直なまでの行動は、狭い雪山エリアを広くし始め、横の動きだけでドラゴンをいなし続けた契約者達に縦の動きも加え始めると、次第に苦しくなってきた。
「ドラゴンちゃん、私より目立ち始めてるねー、ダメだよ!」
 ひょいひょいと横たわる木々を登り、その一番高い所にたった美羽が、二丁拳銃を構えた。
「赤ちゃんはそろそろ……おねむの時間でちゅよー!」
 フルオート連射でのその二丁が、突進してくるドラゴンに休みなく銃痕を生む。
 睡眠薬を塗りたくったその一発一発がドラゴンの体内に埋め込まれ、続けざまの一発一発がいつしか埋め込まれた銃弾にあたり、中で炸裂しては奥へ奥へと埋め込まれていく。
 グオオオオオオオオオオオオオオ――ッ!
 咆哮と地響きを起こし、全てを宙に吹き飛ばしていくドラゴンの突進を、美羽はあえて不安定な木の上で舞い避け、自分よりも先に降下する木に静かに着地する。
 突き刺さるような木のタワーのてっぺんに立つ美羽は、さながらやんちゃな舞姫だった。
「まぁだ、おねむにならないかな!? もう一回いっくよー!」
 弾倉を変えての二度目の射撃で、ついにドラゴンは突進を止め、天を仰いだまま全ての銃弾を受けた。
 やったのか――。
 否、大きく開かれた口に、天から降り注ぐように赤い光が集束していた。

*

「信長、いつまで食べてるんだ!?」
「ふぐ……んぐんぐ……何、戦の前に腹ごしらえと言ったのは忍じゃろうに……。仕方あるまい」
 信長は手持無沙汰の自前のニャンルーに肉を持っていろと渡すと、懐から機晶爆弾を取り出した。
「餞別じゃ、受け取れ」
 まだ中身の爆弾を取り出さぬまま、信長はそれをドラゴンに向けて放り投げた。
 収束したドラゴンの火球が今、放たれる――。
「この一撃を以て滅するッ!」
 信長の煉獄斬とドラゴンの火球を双方向から浴びた機晶爆弾が、盛大に花火のように散った。

*

「出番だよー、コハクっ!」
 焼け爛れ、動きが止まったドラゴンを見て美羽が叫ぶと、全員の視線がコハクへと移った。
「僕にはこれしか出来ることはないけど……。もうこれで終わりにしよう……ッ!」
 コハクが結界玉をドラゴンの元に放り投げると、その玉はドラゴンの足元で炸裂し、魔方陣を生み出すと、回転するそのスクエアから何重もの文字の鎖がドラゴンに巻き付いた。
「やった……!」
 完全に成功である。
 コハクに続いて仲間達も歓声をあげる。
 が、光を失ったはずのドラゴンの瞳が再び見開かれ、その磔を引き摺ったまま、飛べないはずの身体で滑空して見せた。
 腹で雪面を抉りながら、鎖に引き摺られながら、滑空をして見せたのである。

*

「もう、団長ったら、せっかく舞台を用意したのに、台無しじゃないっ!」
 ぷんぷんすかすかと怒りの蒸気をあげながら、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は焼いた肉を口に運んでいた。
 団長とは言わずもがな金 鋭峰(じん・るいふぉん)であり、彼となんとか一緒に狩りを、と考えていたのだが連れてくることはできず、狩りの手土産次第だと言われた。
「それってもう遅いじゃん! 唯斗もハイナを呼べなかったし!」
 ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)を助っ人に呼ぼうと試みた紫月 唯斗(しづき・ゆいと)だったが、こちらも空振り。
「祭りというのは二種類ありんす。出て楽しむ祭りと、見て楽しむ祭りじゃ。今回は後者であろう? わっちは皆が躍る姿を酒の肴としたいのじゃ……だとさ。まあ、俺が誘いに行ったときには既に出来上がっていたからな……」
 あのまま食い下がっていればきっと説教付きの絡み酒が始まったに違いない。
 それはそれで嬉しいのか――?
 いいや、面倒に違いないと唯斗は頭を振り、エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が焼いてくれた肉にかぶり付いた。
「ま、言われた通り手土産持参で、今度こそーって約束取り付けるしかないか……っ!」
 ぺろりと手についた油を唇で吸い、ルカルカは立ち上がって先に戦いに出た仲間達の方角を見た。
 どうやらアンカー勝負にまでもつれ込んだらしいとすぐに理解した唯斗も立ち上がり、互いに頷いて駆けた。

*

「痛々しい姿だな……」
「うわぁ……」
 姿を現し、腹を打ち付けながら必死に滑空してくる雪火龍を見てエクスが言うと、紫月 睡蓮(しづき・すいれん)もそれを見て絶句した。
「前衛のルカと唯斗をサポートして参ろう。まずはドラゴンを地に落とし、1つずつ俺達を捉える感覚を潰すのだ」
「すぐに楽にしてやろう……」
「そちらに合わせる」
「よかろう……参るッ!」
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)がサンダーバードを召喚し、エクスが天のいかづちを呼ぶ。
 組み合わさった雷電がドラゴンの身体を地に墜落させると、睡蓮と一緒に夏侯 淵(かこう・えん)も弓を絞った。
「ごめんなさい、ドラゴンさんを倒して勝ちたいんです」
「弓は重い刀を振るう味方の兵を助ける。しっかりと引き絞って狙いを定めい」
「はい……っ」
「よし、矢を放て……ッ!」
 淵の合図と同時に睡蓮も弓を放ち、その2本の矢が地に堕ちた龍の片目に刺さった。

*

「ダリルが良い所におとしてくれたわ。行くわよっ」
「ああ、行こう」
 ドラゴンが苦し紛れに乱発する火球の間隔を身体に覚え込ませながら2人は接近し、その合間合間に攻撃を仕掛ける。
「これ以上動けないようにしてあげる!」
 ルカルカは加速し、龍の脚に剣を突き刺し、引き金を引いた。
 レーザーキャノンを発射できる剣により、その脚が打ち抜かれ、龍は堪らず片膝をつくように身体を倒した。
 グオオオオオオオッ――!
「甘いなッ!」
 これ以上近づかれては堪らないと、苦しみ交じりの咆哮で停滞を呼び込もうとするが、風術で震える空気を操った唯斗が平然と懐に潜り込み、二刀のうちの一刀を腹に突き刺し横に小さく裂くと、その避けた肉にもう一刀を今度は縦に突き入れ、全体重をかけて真下に裂いた。

*

「もう暴れるのはよせ。妾とて、苦しむ姿を見たくはない」
 エクスが援護に再び天のいかづちを放ち、
「撃ちます……っ」
「よし、続こうッ!」
 睡蓮と淵の弓矢がもう片方の眼を潰して見せた。
「残りは嗅覚と聴覚か。それなら、どちらも対応できるものがある」
 ダリルが毒虫の群れを呼ぶと、それはドラゴンの鼻頭に集る様に飛び、火球に自ら飛び込んで焼け焦げて見せた。

*

「フィナーレよ。合わせて!」
「承知した」
 光も失い、聴覚も嗅覚も毒虫にやられているドラゴンにもはやなすすべなどなく、ルカルカと唯斗の腹部への合わせ突きとその衝撃に、仰向けに天を仰ぎ倒れた。
 2人の去り際に2つ放たれた結界玉がドラゴンを包み込むように捕縛すると、先と同じようにそれを強引に千切ってまで動く生命力はなく、大きく鼻を鳴らして観念した。
「そう言えばこのドラゴン、何所へ行こうとしてたのかしらね」
「身体を傷付けてまで結界を破り、ここまで辿り着いたか……。さて、龍同士で助けでも聞こえたのか……わかりはしないが……」
 別の方角から響く咆哮が、どうしてか同じように思えたのだった。

 大型龍確保――300点。