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リアクション
第三章
「休憩時間も終わり後半戦へと突入します。実況解説は引き続き私、リカイン・フェルマータ」
「熱い男、ヴィゼント・ショートホーン」
「キャンディス・ブルーバーグの三人でお送りするネ」
「現在西シャンバラチーム五点、東シャンバラチーム二点の三点差。元々人数が少ない東シャンバラチームにとってはかなり不利だろう。だが、まだ三十分残っている。気合を入れて頑張ってくれよ! ボンバー!」
「それでは、東シャンバラチームの攻勢から開始します。試合開始!」
リカインの言葉の後、試合開始のアラームが鳴り響く。
「よし、頑張っていこうか」
「うむ。うまくいけば良いのだが……」
「心配しなくても、大丈夫よ」
「あちらさんはこっちと違って攻撃メンバー揃い。きっといけるやろ」
「五人のチームワークさえ合わせれば大丈夫! それにみんなの助けもあるし!」
「そういうことだ。それじゃ行くよ!」
陽一が滑り出したのに応じてほかの四人も動く。
「来るか……!」
前には重量級騎馬。騎馬の先頭に立つのはカリバーン。
「よっと!」
陽一が素早くフリーレへパスを渡す。
「行かせるか!」
カリバーンが『鳳凰の拳』で足止めをしようとする。
「させないさ」
だが、その前に現れたのは『疾風迅雷』で高速移動してきた毒島。そのまま騎馬の周囲を『火遁の術』で燃やす。つかさず煙幕をはる。
「助かる!」
その隙にフリーレは前へ。
「むっ……!
「そこじゃな!」
『ディテクトエビル』で空を飛んでいたミアが『天のいかづち』を重量級騎馬……の周囲へ落とす。
「襲撃か……!」
煙幕で視界不良のカリバーン。攻撃に備え構える。
「さて、脆くなった氷がその重量を支えていられるかな?」
「……! まずい、急いで脱出するのだ!」
「そういうことか!」
すぐさま、その場から脱出したカリバーン達。炎で溶け、いかづちでひび割れた氷は今にも崩れそうだった。
「落とせはしなかったか」
「じゃが、上出来じゃろうな」
「ゴール! 東シャンバラチーム、素早い動きで開始早々点数を取りました! これで5対3です!」
二人が戻った時には陽一達がゴールを決めていた。
「二人とも助かったよ。おかげで先制点を入れられた」
「まぁ、わらわ達が出来るのはこのぐらいじゃからな」
陽一が出した作戦は、速攻戦法。元々人数チーム、さらにたった五人の攻撃メンバーで点を取る方法。それは、素早いパス回しによる素早い攻め。相手の守備が動く前に通り抜け点を取る方法だった。
「この調子で残りの点も取り返すとしよう」
「東チームもやるわね。人数少ないのに良い動きしてるじゃない」
パックを持ち、東チームの守備の様子を伺うセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)とセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の二人。
「でも、ここで追いつかれるわけにもいかないわ。一気に差を広げてあげましょう」
セレアナが『女王の加護』と『歴戦の防御術』を発動し、二人の防御力を上げる。
「ありがと。それじゃ、行きましょ!」
セレンフィリティが、前へ出る。セレアナは援護するためその後ろへ。
「ほらほら、守らないと入れちゃうわよ!」
セレンフィリティが前で相手を翻弄する。
「調子乗るんじゃねぇぜ!」
「俺様達がガッツリ止めてやんよぉ!」
「そうこなくちゃ!」
迫り来るモヒカン達を確認して、パックを後ろのセレアナへ一時パス。その間に迫り来るモヒカン達を回避。
「おらおらぁ!」
モヒカン達がセレアナへ向け突撃。セレンフィリティへパスをした後、下がって回避。その間にセレンフィリティは前へ。
「西シャンバラチーム、見事なコンビプレーを見せていますね」
「お互いの役割をしっかりとこなしているな。タイミングもばっちり。息があっていないと出来ない芸当だ」
「東シャンバラチームの守備メンバーが翻弄されてるネ」
「ちっ、やるじゃねぇか……!」
「さて、そろそろ行っちゃおうかしら?」
「させぬ!」
上空にいたミアが『天のいかづち』をセレンフィリティへ向けて放つ。
「おっと! 今のは危なかったわね」
気づいたセレンフィリティは、とっさに身をよじり回避した。
「今のを避けるとはさすがじゃな」
「その程度じゃまだまだね!」
「うむ……。皆で止めるのじゃ」
「任せろぉ!」
「ヒャッハー! 汚物はブロックだぁ!」
「ふふん……、そろそろかしらね。行くわよ!」
セレンフィリティが突撃する。
「真正面とは良い度胸じゃねぇか! ちょっと痛い目見てもらうぜぇ!」
「よっと!」
タックルを見舞うモヒカン。だが、軽々とかわすセレンフィリティ。
「打たせませんよ!」
その先には、クロセルが『サイコキネシス』で複数のスティックを操り立っていた。
「確かに。打てないわね。でも、それで良いのよ」
そこでセレンフィリティが横へ向けてパックを打ち出す。その先にいたのは下がってみんなのマークから外れていたセレアナ。
「セレン、上出来よ」
ノーマークのままゴールへ滑るセレアナ。
「そうか。そなたは囮じゃったか!?」
「正解よ。でも気づくのが少し遅かったわね」
「リラードを!」
フリーでゴール前まで躍り出たセレアナ。
「セレアナ選手がリラードを要求ネ。ティーさん頼むネ」
「リラードさん、また出番ですよ」
「い、痛いのはもう嫌リラ……!」
逃げようとしていたリラードを捕まえるティー。
「どこに行くんです? 逃げられませんよ……、ふふ」
「リ、リラ……」
そのまま投擲フォーム。
「しっかりお仕事してきなさーい!」
ティーがリラードを投げる。
「リラーーーーー!!」
綺麗な放物線を描いてセレアナの元へ。
「来たわね」
そして、叩く、まだ叩く、更に叩く。パック合わせその数9個。
「よし! 間に合った!」
優奈達を振り切ったセレンフィリティがセレアナの元へ到着。
「ちょうど良いところに来たわ。さぁ、止められるかしら……!」
シュートフォームに入る二人。
「それを打たせるわけには行かないのでね……」
そんなセレアナ達の近くに現れた毒島。『蒼き水晶の杖』を二人に向けて構える。
「あらあら、面白そうなことしていますね?」
「……っ!」
危険を察知した毒島。とっさに前へ避けると今まで身体のあった場所にスティックが振られていた。
「避けられてしまいましたか……、残念です」
そして、毒島の後ろにいたのは藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)。
「でも、次ははずしませんよ?」
「そうなる前に……!」
毒島はすぐさま自分の周囲に煙幕を張り『疾風迅雷』で離脱。
「……残念ですね。やり損ねてしまいました……」
目標を見失った優梨子は次の獲物を求め姿を消した。
「させませんよ!」
「ボク達が止める!」
構えるセレンフィリティとセレアナの前に出るレキと『サイコキネシス』で複数のスティックを操るクロセル。
「獲物、見つけました。さぁ、三秒という短い時間。あなたが立っていられればあなたの勝ち。あなたが倒れていれば私の勝ちです……!」
「えっ……!?」
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
突然、クロセルを突き飛ばしたモヒカン。
「なんですか!?」
「邪魔するんですか? でも、やれるなら構いません」
「ぐはっ!」
「な、なに!?」
「なんと……」
刹那。一瞬で倒されるモヒカン。それを見てセレンフィリティ達の妨害も忘れ、驚くレキとクロセル。倒れるモヒカンの後ろには優梨子の姿があった。
「今のうちににげろぉ……」
「……申し訳ない。ここは退きます」
すぐさま一時離脱するクロセル。
「でも、今逃げたらゴールが……」
「お相手は違いましたが、私の勝ちですね……。っと、おどきなさい。次のお方がやれないじゃありませんか!」
モヒカンをすっ飛ばしリンク外へ。そのまま逃げることに躊躇していたレキへと向かう。
「させぬ!」
それを見ていた、ミアが『天のいかづちで』動きを封じる。
「……邪魔、するのですか?」
「当たり前じゃ。レキよ。こやつはわらわが止めておる。あやつらを止めよ!」
「わ、分かった!」
レキがセレンフィリティ達のほうを向くとすでに二人はシュート寸前。
「せーのっ!」
「はあぁっ!!」
セレアナが『ライトニングランス』、『シーリングランス』でリラード達をゴールへ打ち出す。セレンフィリティもそれに混ざりシュートを放つ。
「間に合わなかった……、でも!」
レキはそのまま『サイコキネシス』を使い、一部のリラード達の威力を弱める。それでも止まることなく、北都達の守るゴールへ。
「これ以上点差を離されるわけには……。そうだ……!」
「どうする気だ?」
「とにかく、防げるだけ防いで。僕に良い考えはある……!」
北都は二本のスティックをしっかり構える。
「……! すべて止められはせぬぞ!」
モーベットが飛んできたリラード達を弾いていく。
「……入れられてしまうなら、入れ返せば良い!」
北都はレキの『サイコキネシス』で弱まり少し遅れてきたリラード三つに目標を定める。
「今だ!」
タイミングを合わせ、それを前……陽一達の元へ。
「お願いします!」
北都の言葉が届いたのか陽一達はそれを拾い相手ゴールへ。
「ゴール! 北都選手の機転により、なんと両者三点ずつゴールだ! 点数は8対6! 点差は広がらなかった! ファインプレーだ北都選手!」
「……やられたわね」
「かなり優秀なキーパーね」
アナウンスを聞いたセレンフィリティとセレアナ。
「今度は絶対点差を広げてやるわ!」
「そうね。頑張りましょうセレン」
めげずに意気揚々と自分達のエリアへと戻っていく二人だった。
「……ふぅ」
ミアと対峙していた優梨子は、アナウンスを聞くと背を向けた
「……なんじゃ、来ないのか?」
「……普通なら、行くところですが……、今回のところはここまでにしておきます。ですが、次は確実に……とります」
そのまま自分チームのほうへと戻っていった。
「……なんとも厄介な相手じゃな」
ミアは小さくため息をついた。
「連れてきたよ」
「モヒカンさん、回収完了です」
一方、一瞬でフルボッコにされリンク外に落とされたモヒカン。ジークリンデとティーによって回収されていた。
「ぼろぼろですね……」
「思いっきりやられたみたいだね。三秒以内でよくここまで出来るものだよ」
ぼっこぼこのモヒカンを見て呟くティーとジークリンデ。そこに佳奈子達が医療キットをもってやってくる。
「……これまた派手にやられたわね。エレノア、治療をお願い」
「えぇ」
佳奈子の言葉にエレノアがすぐさま治療を始める。
「うぅ……なんと、素敵なアサシン……。あなたにやられるなら俺様は本望……」
うわごとのように呟くモヒカン。
「……頭ぶつけたみたいね」
「いや、それで決めるのはかなり失礼じゃないかな……?」
佳奈子の判断に苦笑するジークリンデ。
「まぁ、実際頭をぶつけているみたいね。でも、外傷もひどくないし少し休めば大丈夫でしょう」
「それなら良かったです」
ほっと、胸を撫で下ろすティーだった。
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