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追ってっ!ロビン・フッド

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 第2章 - 『ロビン・フッドは誰?』
 1
「雅羅さん。いよいよ、夜になりました」
 泪が金庫に続く個室の前で警護に就く雅羅の元を尋ねる。
「そうね」
「本当に現れますかね」
「現れないに越したことはないと思うわ」
 台無しなことを言うけど。雅羅が苦笑する。
「義賊を頼る人たちは」
 そこで一旦、躊躇した素振りを見せて。
 それから、
「本当にそうするしかなかったのかしら。頼らなくてもなんとかできたんじゃないかしら」
 ゆっくりと続けた。
「義賊にしたってそう。どうして施しなんてするのかしら。人の為? それとも、やっぱり自分の為なのかしら。自分の満足の為……」
「両方だと思いますよ。誰かが幸せになって、自分も幸せになるなら」
 泪が言う。
「やっぱり捕まえなくちゃダメね」
 ロビン・フッド、と。雅羅が小さく呟いた。


 2
 二匹の影が、塀の上を行く。
 元は三匹だったことに誰も気づきはしない。
 大時計の針は止まらない。
 試しににゃあ、と一鳴きしてみても、誰も振りむいてはくれなかった。


 3 
 プリム・フラアリー(ぷりむ・ふらありー)が、館内をこっそりと歩く。
 外はあんなに騒がしかったのに、中はと言えば妙に静まりかえっていた。 
「……それから、どうするの。……えっと、エルファバ」
 <エルファバ>そう呼ばれた少女が、黒い長髪を掻き上げながら振り向いた。
「絵画は隠し部屋にあるみたいなんだ。部屋は分からないんだけど……まずはロビン・フッドと合流したいんだ」
「…………さっき、うらてに、誰かいた……かも」
「裏手? とりあえず行ってみよっか」
 ブラックコートとベルフラマントで姿を消している<エルファバ>が彗星のアンクレットによって駆けるよりも早く廊下を行く。
 瞬間瞬間が通り過ぎて行く中で、ふいにピアノの音が聞こえた。
 <エルファバ>が足を止める。
「聞いた事あるな」
 ピアノの音は、中庭に面した回廊から聞こえてくる。
 興味が無いわけではなかったが、それがあからさまな罠に思えて、再び廊下を進むことにする。
「後ろめたい何かがあるんじゃなきゃ、額縁だって頼んで貸して貰えばいいのにね」
「……それじゃ、かいとうじゃない」
「ん? そっか。怪盗は怪盗だから、盗まないといけないのか。でも、それにしたって、じゃん?」
「……きっと、そういうことになってる」
「ロビン・フッド、は『義賊』で『大怪盗』っていう『設定』になってる、って?」
 悪くないんじゃない、<エルファバ>が言う。