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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 2

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 2

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第12章 アイデア術を考えてみようStory9

「ラスコット先生、実戦形式を行いたいのですがよろしいですか?」
 レイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)は許可をもらおうと教師に頼む。
「何が術を考えたわけじゃなくって、魔道具を使って試すってこと?」
「いえ、それを所有する者が狙われないように、私たちが引き付けるんです」
「それだと怪我しないって保障はないよ。そのために使い魔が守るわけだし」
「もし、傷を負ってしまったら…。それは実際の現場へ向かう前の、よい薬になります。そこで何も出来ないまま、見ているのは嫌なんです…」
 リオたちが傷つくかもしれないのに、黙ってみているだけなのは耐えられないと言い放つ。
「何かあると少女校長がうるさいんだよ。これは授業だし、ちょっとなー…」
 魔法学校以外の生徒も預かっているようなものだし、即答するのは難しいようだ。
「お願い!誰かが傷ついちゃったら、ボクが責任もって治すからっ」
「実戦に近い感じ…ってのはどう?」
「本当の実戦じゃなくってそれらしいものってこと?」
「うん、そうなるね」
「はい、ありがとうございます」
 やはりどちらの先生に頼んでも、本当の戦いというような形式の許可は難しいのだろう。
 まったく許可されないよりかはマシかもしれない、とレイナが頷いた。
「ロザのクローリスの効力はどんなのものだ?」
「花の香りで気分を落ちつかせてくれますよ」
「ん〜、ロザの使い魔が花の香りでリラックスさせるのか…使い魔にスペルブックの祈りを乗せた香りを出してもらったら、祈りの効果が上がるかな?相手の精神に直接作用するのならいける気がするけど…試してみたら?」
「それなら、術を発動させやすくなりそうね」
「宝石の仲間の精神を癒す効果と各章と併用して、魔を祓う効果を底上げできないかしら?要するに章の詠唱で消費されるはず精神を、ホーリーソウルの力で癒し続けることで、常に最大の力で魔を祓うってことね」
 由乃羽の方は彼とは異なる術を提案してみる。
「あの、ホーリーソウルの効力で癒す…という点は合っていますが。魔性に憑かれた者の精神ダメージを回復するんですよ」
 見学しようと場内を歩いてる東 朱鷺(あずま・とき)が通りがかり由乃羽に教える。
「わたしが考えたものは無理…ってことなのね。エアロソウルなら、SPを回復することが出来ますが…」
「ぁーっ!適用させるならそっちだったのね」
「スペルブックって本のみのこと?それとも章のことかな。それによって違うんだけど…」
 試せるパターンは1つのみなのだから、どっちなの?と刀真に聞く。
「スペルブック単体でだな」
「うん、刀真が考えてくれた術にしよう!」
 今から人手を集めるのは無理だろうと判断し、あまり考えている時間もないから、彼の提案にしようと月夜が決める。



「どこにいるか分からないが…。実戦っぽくかかってきてくれ。ただし、こちらは深い手を負わせないと約束する!」
 そこら中に潜んでいるだろう、魔性に向かって刀真が言う。
「いい根性ダ、いいZEッ」
 チェーンソーに憑いた魔性が協力してやろうと、半パワーで襲い掛かる。
 1枚だったはずの刃が変形させられ、いくつもの刃にわかれている。
 ギュィイイィイイッ。
 激しく回転させた刃を、ロザリンドに放つ。
「ロザ…!(もう撮影どころじゃないって!)」
 刀真でも殺気看破で若干だが気配を感じるが、やはり通常の相手とは違い、どうしても反応が遅れてしまう。
 念のため鉄のフラワシだけ降霊させておいた佑也は、ロザリンドを守ろうとフラワシを彼女の盾にする。
「ぐっ、ぁああぁあ!!」
「全然、回転速度フィーバーさせてないんだZE!ホンキの実戦だったラ、にーちゃんやばいYO!」
「これで弱いほうなのか…っ」
 加減してくれたおかげか、血は出ていないものの悔しげに呻く。
「近づけさせないようにするだけで、手一杯ですね…」
 レイナのタービュランスで地面を撃ち、土煙を起こして目晦ましさせたりしてみるが魔性は草むらに避難し、こちらの姿を確認しようとすると、再びロザリンドを狙おうとする。
 刃が飛ぶ方向をずらせようとしても、ほんの僅かずれるだけだ。
 “避けてください!”と声を上げるレイナに、ロザリンドは飛び退き刃をかわす。
 その間に、本使いの4人はスペルブック本体のみの祈りをクローリスに与えた。
「クローリス、皆さんの祈りを乗せた香りを出してください」
「了解よ」
 足元に生み出した蔓を伸ばし、そこに花のつぼみをつけるたかと思うと、ふわりとつぼみが開き…ほんのり甘い香りを漂わせる。
「―…とてもいい匂いね。玉ちゃん、一緒に詠唱しよう!」
「ふむ、それは構わないが…」
 違う章を一緒に詠唱して効果があるのか?と疑問に思いながらも、その言葉を飲み込む。
「悪い事をする全ての人が悪では無いように、悪い事をする全ての魔性が悪じゃ無いと信じて、哀しみに囚われているのなら、私達がそれを切ると、苦しいのなら、辛いのなら私たちが貴方を助ける…」
「(そこにある想いを識り、そこに込められた気持ちを感じ取れれば、月夜が言うように助ける事ができるかもしれないが…罪は罪だ、その魔性が何をするにしても、先ずは裁きを受けるべきであろう?と…まあ、我も随分身勝手なことを言っているか)」
 月夜の考えは甘いと思いつつ、玉藻も自身も自分で身勝手なことを思ってしまっているな…と感じる。
 相応の裁きを与えてからでは、憑かれてしまったそれはどうなるか…ということも、想定しなければならないのだ。
 光の嵐と酸の雨を同時に発生させるが、本体をガードしている部分が硬く、雨の効力が効きはじめたばかりなので、月夜の術が届かない。
「(使い魔に術の効力を与えるのって、適当なタイミングでいいわけ?)」
 2人のやりとりに由乃羽も首を傾げたが、いつ唱えるのかも聞いていないため、彼女たちの後に唱える。
 リオもいつ唱えていいのやらと状況を見ていたが、使ってもいいのね…と、由乃羽を見てようやく唱え始める。
 盾となっている者たちが、必死に引き付けてくれているのだが…。
「刀真さんたち大丈夫でしょうか…」
 相手が手加減してくれているとはいえ、回転式の刃物なのだから無理をしなけばよいがと朱鷺が呟く。
 章の効力で魔性の動きが遅くなった時、哀切の章を使っていた月夜の精神力がつき、地面にぺたんと膝をついた。
「―…ふぅ、疲れちゃった」
「うーむ。裁きの章は、発動させた場所から動かせないのが難点だ」
 玉藻たちのほうは、すばしっこい相手に当てるために、何度も唱えないといけない。
 スペルブックの祈りを乗せた香りでも、効力が上がらないようだ。
「ン、もう役目は終わったナッ。じゃあナッ」
「そうみたいだな」
 結局、効力を増すことは出来なかったか、と刀真は軽く息をついた。
「解らない所があるんだけれど、教えてもらえないかな。練習の手を止めてごめんね」
 真道具の扱い方を教えてもらおうとエースがロザリンドに花を1輪渡す。 
「今終わったところですから大丈夫ですよ。使い魔を呼び出すためには、聖杯を掲げて祈りを捧げるんです」
「言葉は何でもいいのかな?」
「いえ…例えば、お菓子くださいなどと言っても呼び出せません」
「(ぁ……クマラならお菓子一緒に食べようとか言いそうだな)」
 気持ちばかり先走り、祈りの途中で言ってしまいそうだな、とエースは心の中で呟いた。
「同じ種類でも、姿や性格などは違うんです」
「美しいクローリスもいれば、可愛らしい少女の姿だったりするということかな?」
「えぇそうです。で、特に自己紹介は必要ないみたいです。術者についての情報は血の情報で全て分かりますよ」
「全て理解してくれている…ということだね」
「こちらの思考が読めてしまうようですから、悪さをしようとする者などには力を貸さずに消えてしまったり、呼び出しに応じないこともありますね」
「大抵の人なら扱いやすい感じだね。って、クマラ…他の人の使い魔に餌づけするのはやめてくれ…」
 クマラのほうをちらりと見ると、クローリスにチョコをあげようとしている。
「餌づけじゃ無いモン。仲良くしてねっていうお手伝いだよ。友達づくりだヨ。エースだって花配ってるじゃん?」
「それとこれとは別だから」
「申し訳ないんだけど、お気持ちだけ受け取っておくわ」
 彼女はかぶりを振って断る。
 どうやら仲間のロザリンドがよいと言うまでは受け取ることはないようだ。
「えー…美味しいのに」
 菓子袋に戻すのも悲しいから、自分で食べてしまった。
「クローリスご労様です、ありがとうございました」
「じゃあね」
 ロザリンドに微笑みかけるとクローリスはスッと消え去る。