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リアクション
第3章 アイデア術を考えてみようStory2
効力や術名を決め、新しくメンバーとして加わった美羽やベアトリーチェにもラルクが簡単に説明した。
さっそく詠唱を始めようと、章使いの者たちはスペルブックを開いた。
「裁きの章の力を先に、クローリスに与えるか」
「了解です、ラルク」
「テスタメントにお任せください!」
「念のため、効力の度合いを同じくらいにしておくか。あぁそうだ。哀切の章は、その後のほうがいいだろ?」
「ローリスに聞いてみますわ。2つの章の力を、同時に受けるとどうなるんですの?」
「適応する必要があるから、吸収するための処理が大変よ。それだけ術の発動が遅くなってしまうと考えてくれていいわ」
「別々に吸収させたほうがよいということですわ」
エリシアはラルクの方に視線を向け、発動スピードが遅くならないように手順を伝える。
「あぁ、分かった」
「クローリスさん、お願い…手伝って?」
「承知いたしました」
ノーンの頼みに使い魔は静かに頷いた。
「それじゃあ、始めるぞ」
裁きの章の詠唱を始めると、クローリスは両腕を広げて足元から蔓を出現させ、紫色の雨を吸収する。
「さぁ、魔性共よ。おねんねの時間ですぜ?」
ラルクよりも積極的ではないが、授業に遅れないように学ため、ガイもクローリスに術の力を与える。
「(次は哀切の章だな)」
テスタメントと美羽、ベアトリーチェに目配せをして合図し唱える。
魔の者を祓う光の波が、使い魔が生み出した蔓に染み込むように吸い込まれていく。
4人の術者により章の力を得た蔓は、白い花のつぼみをつける。
ふわりと花が開いたかと思いきや、一枚一枚の花びらとして散り、花吹雪のように美しく宙を舞う。
花びらたちは逃げる魔性を追い、白き雨を降らせる。
それは酸の雨を降らす黒雲の役割を行っているのだが…。
本来、対象を追うことが出来ない術が、クローリスの花の力で術者に命じられるがまま、花嵐の如くどこまでも追っている。
物に憑く力が弱まりそうになった魔性は、器としている家電製品から離れる。
「(1度で成功するか不安でしたが、やりましたね!)」
術が上手くいき、ガイはひそやかにガッツポーズをする。
「とてもキレイですぅ…」
白い花嵐をフィーア・レーヴェンツァーン(ふぃーあ・れーう゛ぇんつぁーん)がうっとりと眺める。
「使い魔に指示すると追いかけてくれる術か」
効力がミックスされると、こんなことも可能なのかと燕馬が呟く。
「俺の章になかった文章が記されているぞ!?」
ホーリー・エクソシズムの術が成功し、満足していたが…ラルクがスペルブックの章を見ると、新たな文章が現れている。
それは彼らの術に合わせて記されているようだ。
「クローリス、もうよいですわよ」
器から離れて不可視の存在を、エリシアとノーンは見たり察知する力をもたないため、術をとめる。
「ご苦労様ですわ」
「他に命令はないのね。じゃあこれで失礼させてもらうわ」
そう言うと花の魔性は姿を消し、去っていった。
「ありがとう、クローリスさん」
ノーンがそう言うと、彼女は軽くお辞儀をして消え去る。
「へぇ…。こういうふうにチームを組んで扱うと、勝手に記されたり消えたりするのか」
彼女たちが消え去った後、スペルブックの章に現れていた文字もすぐさま消えてしまった。
「魔性さん、大丈夫? 痛くない?」
もう姿が見えなくなってしまったが、傷を負ったりしていないか気になり、話しかける。
「ニンゲン的に言えば、掠り傷程度だヨッ」
ラルクや美羽たちが威力を調節して、ぎりぎりまで弱めたおかげで、ほぼ無傷のようだ。
「わたしたちの攻撃に付き合ってくれてありがとーね」
ノーンは魔性にお礼を言い、ぺこりと頭を下げる。
「(皆の使い方を纏めてそれぞれのシステム化を図れば、簡単な操作で手早く術を行使できるようになるか?いや…感情コントロールがどうのとかいってたから無理か…)」
唯斗は術者が魔道具を扱うところを眺め、いろいろとネタを思いつくものの、デジタル的なことは受け付けそうにない…。
少し休憩しようと美羽とベアトリーチェは、コーンスープを飲む。
「ふぅ…寒い時は温かい飲み物がほしくなるわね」
「作ってきてよかったですね、美羽さん」
「一応、持ってきておいたけどエリシアたちも飲む」
「気が利きますわね、いただきますわ。ノーン、こぼさないように気をつけるんですのよ」
ノーンの分ももらい手渡す。
「うん、おねーちゃん」
「おやつの用意はしてないですかぁ?」
エリシアたちが温かいスープを飲んでいる姿を見たフィーアが、フィーアも何かほしいですぅと燕馬に言う。
「家で作ってきたカップケーキがあるけど」
「わ〜い、いただきますですぅ」
受け取ったカップケーキをさっそく食べてみるが…。
「……正直言うですけど、フツーですぅ」
期待していた美味しさと違い、きゅっと眉を潜める。
「当たり前だろ。俺の【調理】技能は所詮、シロートに毛が生えた程度だ」
「キレイな使い魔ですかぁ。うらやましいですぅ」
クローリスたちの姿を思い出しつつ、ビンの蓋をあけてパラミタンCを飲む。
「俺は宝石や章を装備する事ができる。だが魔道具を扱う『器』の技能が足りないんだよなぁ…」
「フィーアは『器』の技能は足りてるですからぁ、ペンダントとスペルブックを装備できるですぅ。でも宝石や章に対応するスキルを扱えないですぅ」
彼女はしゅーんとしょんぼりし、俯いてしまった。
「……二人で協力して術を使う、という訳にはいかないですからぁ、まだまだ実践はお預けですぅ」
「もどかしいなぁ……足して2で割りたいよ」
いっそ融合でも出来たら、どんなによいだろうか…と、ため息をついた。
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