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『電撃・ドラゴン刑事(デカ)』 ~ C級映画がやってきた! ~

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『電撃・ドラゴン刑事(デカ)』 ~ C級映画がやってきた! ~

リアクション


〜 episode1 準備編 〜

 
「うわぁ……、これはだめでしょう。もっと本格的にテコ入れしないと」
 撮影日当日、午前。
 九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)は、冒頭前に挿入するCMを二本取り終えた時点で、早くも危機感を覚えていた。
 今まで見てきた映画の中でも最高の(C級)映画を作りたいと意気込んでいた彼女は、三反田監督からもらった台本に目を通して頭を抱える。
 なんの脈絡もメリハリもない脚本。今考えられたような演出。さっき用意したばかりの機材類、そしていまひとつ緊張感と使命感に欠ける遊び気分の参加者たち。
 楽しんで撮影するのは悪くないことだ、とジェライザは思う。協力し合える仲のよさも必要だろう。だが、それと馴れ合いながら勝手気まま好き放題やるのとは違う。
 予算のないC級映画の撮影だけあって、機材類も払い下げの古いものばかりだし、撮影のためのスタッフも足りていない。
「監督……、悪いですが、これ仕切らせてもらっていいですよね?」
 ジェライザは三反田監督に聞く。監督には監督なりの撮影ポリシーもあるだろうし、曲がりなりにも長いキャリアがあるのも知っている。だが、それでも口を挟まずにはいられなかった。
「いいよ。ただし、お色気シーンだけは絶対に譲らん」
 意外とあっさりオッケーして、撮影を丸投げしてくる監督。好きなことには心血を注ぎ込むが、それ以外はなるべくやりたくない。楽して儲けたいタイプの人物らしかった。いずれにしろ、それはこの場合都合がいい。
「いや……むしろ、お色気シーンは監督にだけ任せます」
 ジェライザは苦笑しつつも、早速準備をテキパキと整え始める。もちろん、予算がほとんどないのを知っているから、経費はアテにしていない。
【デジタルビデオカメラ】を持ち出し、今はPOV形式の映画が流行っており全編ビデオカメラで録画すれば低予算かつ臨場感のある演出が可能な事を説明しながら、自前の機材を用意してきた。
 スタッフを集めて手順や段取りを進めていくジェライザ。これ以降、エロ以外の全てのシーンは彼女のカメラが収めていくことになる。放映される映像は、その時のものだ。留意して視聴していただきたい。
一方、匿名 某(とくな・なにがし)も自前のカメラを手にやってきた。一つ提案してくる。
「NG集とメイキングを作りたいんだが、どうだろう?」
「NG集? いいけど、作ったことないぞ?」
 監督はむしろ胸を張って答える。
「どんなシーンでもほぼOKだからな。私の撮影に撮り直しはないので有名だ。だが……お色気シーンにはうるさいぞ」
「もちろん、そちらには口出ししないさ」
 こちらもあっさりと許可をもらって、某は準備を始める。メイキングは行く場所は特に定めず、撮影待ちしてる役者のところへ赴いてインタビューしたり、スタッフ方面に回って準備してる様子などを邪魔にならない距離から撮影するようだった。
 今回のストーリーで、時折映画シーン以外の光景が描かれることがあるが、それを映しているのは某だと考えてもらって間違いない。例え彼の姿がその場面に登場していなくても、だ。ちなみに、現在のこの光景も彼が撮影したものを後日編集したものである。
「ところで海、アクションの練習はしてきたんだろうな?」
 某は高円寺 海(こうえんじ・かい)の姿を見つけ、早速話を聞きに行く。
「主役級を張るんだから、最低限見れる演技は見せてもらわないとな」
「……」
 瞑想している最中の海は答えなかった。どうやら、ああ見えてかなり緊張しているらしい。また後にしよう……。
 さらには……。
「いっぱい持ってきたよ」
 皆が希望するセットとか衣裳や特殊効果を用意してくれるのは朝野 未沙(あさの・みさ)だ。特に、爆発シーンや弾幕など火を使う特殊効果の手伝いは、未沙のパートナーのグレン・ヴォルテール(ぐれん・う゛ぉるてーる)が力を入れてくれる。
 ド派手な物を作ってド派手に壊した方が盛り上がる、と未沙は必要なものをいくらでも用意してくれるらしい。道具も衣裳や大道具だけじゃなく小道具まで揃えてくれる徹底振りだ。
 未沙もグレンも、この後の映画シーンで登場することは決してない。だが、こういう裏方がしっかりと支えてくれていたからこそ、皆が好きなシーンを撮ることが出来たのだ。シーンが動くたびに、そこに未沙たちの見えない息吹を感じてもらえれば、視聴もさらに楽しくなるだろう。
 もう一人。
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)も爆発演出を担当してくれる。
 爆発は芸術だ。
 特撮によくある派手な爆発を演出するため、彼女は機晶爆弾を持ち込んできていた。【破壊工作】【機晶技術】のスキルを使用して手加減なしかつ破壊的に爆発させるつもりのため、見栄えのいい映像が撮れることだろう。こちらも期待し注目しておきたい。
 スポンサーまでやってくる。
 10万Gという大金を投じてこの番組にCM枠を確保したのは、クロウディア・アン・ゥリアン(くろうでぃあ・あんぅりあん)の 『陽光商会』だった。もう赤文字フォントを使ってまで目立たせておく。
 『陽光商会』は冒険者向け超強力ボディソープ【バニシュメル】のCM放映の提案を持ち込んできていた。すでに専属の男優とサー パーシヴァル(さー・ぱーしう゛ぁる)の力作の台本まで用意してある用意のよさだ。
 クロウディアは撮影したCMのVTRを持ち込んで映画会社へ交渉しに来たのだが、話し合いも何も……異論があろうはずがない。0.5秒で即決したプロデューサーが菓子折りまで持って平身低頭でやってきた。そのお菓子でもつまみながら出来栄えを見ることにしよう。
「なんだこれ……、普段より環境いいじゃないか……」
 てきぱきと撮影の準備が整っていくのを三反田監督はただ監督椅子に座って見ているだけだった。ぶっちゃけ出番がなくて居心地悪そうだ。
 演技指導や演出のプロデュースはジェライザが引き受けてくれるようだ。
「鈍足ゾンビなんて誰も怖がらないよ、走って追いかけてください。今は走るのはもちろん武器を使うゾンビまでいる時代だから」
 などと、走るゾンビに追いかけられ捕まるシーンまですでに演じ始めていた。
 モブやゾンビ役は、暇をもてあましたパラ実生がやってくれる。モヒカンのソンビだが、気にしてはいけない。ギャラは種もみだそうだ。彼らの熱演に期待しよう……。

 かくして、大勢の参加者の協力の中、この映画は始まるのだ……。