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魔剣スレイブオブフォーリンラブ

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魔剣スレイブオブフォーリンラブ

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「……“魔剣に魅入られし銀狼”フェンリル・ランドールからの言伝によると、我ら魔剣所有者――キャトル=ノブレス・オブリージュたちの約束の地は、この地から北にある空洞を司りし者たちの住まう場所にあるそうだ」

 目深いフードと白い面をつけ、怪しげな雰囲気を漂わせるメンテナンス・オーバーホール(めんてなんす・おーばーほーる)は、その契約者である鳳 美鈴(ふぉん・めいりん)と共に、空京の街を超然と歩いていた。

「この前、暇だから行った遺跡探索で余っていたから貰った変てこな剣のせいで、町中がおかしな事になっているから、
剣を持っている人は空京市内にあるミス・スウェンソンのドーナツ屋、通称『ミスド』に集合という連絡が、フェンリルさんからの留守電に吹き込まれていたようですね」

「……もう少し雰囲気に合わせてくれないか、美鈴」
「はあ……主がようやくやる気を出したかと思ったら、ネットで中二病チックな単語を調べていたと知った時の私の気持ちを考えてくださいよ」

 美鈴は心底呆れた表情で愚痴を吐いていた。

「ッ……解せぬ! “魔剣に魅入られし銀狼”フェンリル・ランドールからの言伝によれば、魔剣所有者――キャトル=ノブレス・オブリージュの前ではどんな女性だろうと恋に落ちるという話でなかったのか?!」
「元々の主のマイナス面と相殺されてイーブンになったって事じゃないですか? 今日はあんまり見ていてイラつかないですもの」
「そ、そんなはずがあるか! さては貴様、美鈴の姿を真似た襲撃者だな!」

 大声をあげて喚きたてるオーバーホールを見て、やれやれといった感じで美鈴が口を開く。

「……新しいフォルダ13(ボソッ)」
「な、なな何故貴様がそのフォルダ名をし、知っている?!」
「フフ、初めて発見した時は、主にそういう趣味があったのかと驚きましたよ。まさか
背の高い女性に無理やり×××されるのが好きだったなんて……」
「お、おまえが本物の美鈴である事はよく分かった! だからそれ以上言うのはやめてくれ」
「次からはもう少し分かりづらいフォルダ名にしてくださいよ? 別にこっちも好きで見ている訳じゃないのですからね」

 地面に膝をつき、がっくりと肩を落とすオーバーホール――その背後から、彼にこっそり近づく者がいた。

「好き好き大好きー!」
「うぉっ?! なんだ貴様は! いや、もしや……この者こそがラグナロク――神々の黄昏において、我らを導くとされる死者の国より蘇りし伝説の魔女なのか……?」

 オーバーホールの腕に突然抱きついてきたのは、魔法少女の恰好をしたアニス・パラス(あにす・ぱらす)であった。

「おい、そこの面を被った不審者! 俺のアニスに手を出したらただすまないぞ!」

 そのすぐ直後、アニスのパートナーである佐野 和輝(さの・かずき)が、両手に持った曙光銃エルドリッジでオーバーホールの白い面をスナイプで狙い撃とうとする。

「不審者とは失敬な! この面は我が、巨蛇ヨルムンガルドに挑んだ時に……」
「ああもう! 早く逃げないとやられちゃうでしょう!」

 オーバーホールは、女王の加護を発動した美鈴によって間一髪のところで弾丸から逃れる。

「ああ〜アニスの運命の人がいっちゃったぁ……」
「いい加減に正気になれ、アニス」

 オーバーホールたちが去った後、彼を追っていこうとするアニスを、和輝は必死で引き止める。

「俺の事が分からないのか?」
「……邪魔、どいてよ!」

 アニスは無愛想な表情で和輝をプイっと見ると、臨戦態勢に入る。

「やめろ、アニス! 精神感応をしていないのに攻撃を出したらっ!」

 しかし、和輝の静止を振り切り、アニスの攻撃は止まらない。彼女のスキル『歴戦の魔術』が暴走し、辺りにいる一般人にまで襲いかかろうとする。

「……クソッ!」

 和輝は本来、二丁拳銃を操る中〜遠距離戦を得意とするスタイルだ。しかし、彼は銃を捨て、形振り構わずアニスの懐へと飛び込んだ。策がないという訳ではない。むしろ、長年付き添ってきたパートナーであるアニスの行動は手に取るように分かる――

(けど、アニスがもし他の人間を傷つけてしまって、その後正気に戻ったとしても、優しい彼女はその事で自分を責めてしまうだろうがっ!)

 和輝は自らがアニスの攻撃の標的となるために、わざと彼女に抱きついた。

「ぐぁああアアアッ!!!」

 アニスの歴戦の魔術を正面からモロに食らった和輝は、激痛で叫び声をあげてしまう。

「か、和輝……?」

 しかし、不幸中の幸いか、パートナーの声を聞いたアニスの正気が戻ってくる。

「ッ……もう、大丈夫なのか? アニス……」
「え……あ?! わ、私の方は大丈夫だけど、それより和輝の方がどうしたのよ? 凄い重傷じゃないの!」

 アニスの心配をよそに、和輝はにやにやと笑みを浮かべる。

「こんなのかすり傷だから気にすんな。それより、アニスが一番好きな男は誰なんだよ?」
「ええっ?! こんな時に何聞いてくるの……も、もうそんなの和輝に決まってるじゃない。にゃは〜っ、は、恥ずかしいこと言わせないでよ!」
「いてててっ! 俺は怪我人なんだぞっ、叩く奴があるかっ!!」

 アニスと和輝はそのまま痴話喧嘩を続け、すっかり仲を取戻しとさ――