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■突入、製造地区解放戦線
 シェルターが開かれ、各地域を解放するべく工場内へ進む契約者……否、イコプラプレイヤーたち。工場の区画は大きく分かれて四つあり、まずは分担して各区画を解放することとなった。
 というのも、犯人を捕まえようと息巻いて真っ先に中央制御室へ向かった契約者から『何らかの仕掛けによって扉が開かない』という連絡が来たからだ。扉をぶっ飛ばすわけにもいかず、先に周囲の各地域解放を先にせざるを得ない……という状況だった。


 四つある区画のうち、イコプラの武装類を生産している“製造地区B”へ向かっていたのは御凪 真人(みなぎ・まこと)セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)の二人。セルファが持ってきた二機のイコプラ……ブルースロート型を改造したパラスアテナ・セカンドとジェファルコン型を改造したアストレアを駆りながら製造地区Bへとその足を急がせる。
「犯人がイコプラの武装供給としてこの地区を占領しているとしたら、解放すれば敵側の武装供給を止めれるうえ、もし規格が合えばこちらでも利用することができるはずです」
 そう踏んで製造地区Bを目指す真人ではあるが、セルファが持ってきた二機のイコプラの出所については聞かなかった。……聞かなくてもわかる、というのが事実なのだろうが。

『ちょっと借りるわよ(はぁと) ――セルファ』
 ……その頃、名も無き 白き詩篇(なもなき・しろきしへん)はセルファの残した書置きを見て頭を抱えていた。イコンのモデリングのために作ったイコプラを勝手に持っていかれたのでため息を出すしかなかった。
「なぁにが『ちょっと借りるわよ』じゃ……壊したらただじゃおかぬぞ。元が戦闘用イコプラじゃから、早々に壊されることもないとは思うがの」
 丹精込めて製作したイコプラがちゃんと戻ってくることを、白き詩篇は祈るほかなかった……。

「……くしゅんっ! 誰か噂してるのかしら。……ちゃんと書置きして借りてきたから大丈夫よね、きっと」
 白き詩篇の現状を露知らず、セルファはくしゃみをしながらも真人と共に製造地区Bへと到着する。――機械が動いているところを見ると、武装供給が行われているのはほぼ確実だろう。
「さぁ、いきましょう」
「接近戦は任せて。射撃援護、よろしく!」
 二人は互いに頷き合うと、さっそく攻撃を開始する。パラスアテナ・セカンドは装備しているミサイルポッドを、敵襲に気付いて集まり始めたブルースロート型の敵イコプラたちに向けて、面攻撃をするかのようにして撃ち出していく。
 そして、その弾幕と敵の大型ビームキャノン弾幕を縫うようにしてアストレアが敵機へ駆ける。アサルトライフルによる先制射撃を繰り出しながら、その距離を素早く切り詰める。
「――右側の敵から倒していってください! そのイコプラを基準にして連携攻撃を仕掛けてくるみたいです!」
「私たちの連携を甘く見ないで!」
 『オーバークロック』で思考を加速させ、各敵機の危険度を瞬時に判断する真人。すぐにセルファへ指示を出しながら、大型ビームキャノンとアサルトライフルで援護をしていく。
 セルファのアストレアも受けた指示に合わせて動きを止めることなく、ビームサーベルとアサルトライフルで確実に敵機を撃墜する。機動力を生かした高速戦闘が得意なので、こういった電撃的な戦略は相性的にも合うのだろう。
 ……だが、やはり二人だけでは二〇〇もの大多数を相手するのはかなりきつい状況である。無傷、というわけにはいきそうにもなかった。

 ――そしてそれは、製造地区Aでも似た状態であった。
「エンド、敵がそちらに向かいました!」
「了解した! あまり無駄な破壊はしないようにしなければ……!」
 現在、こちらではグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)の二人によって大規模な電子戦の様相を見せている。
 グラキエスの操るジェファルコン型を大きく改造したイコプラ・ミニツヴァイが先陣を切り、ロアの操るイーグリットアサルト型を改造したイコプラ・ミニアインスが援護する。これらのイコプラが相手するのは、鋼竜型と焔虎型各一〇〇機。これらを極力破壊せず戦闘不能に持ち込むべく、グラキエスたちがとった作戦は……電子戦だった。
 ミニツヴァイとミニアインスの武装は全て電磁式へ交換しており、敵イコプラを電磁波によって戦闘不能へ追い込むべく作戦を展開する。『迷彩塗装』を施したミニアインスが、敵機の死角から『弾幕援護』『破壊工作』『情報攪乱』によってミニツヴァイを援護していく。
 なお、ミニツヴァイとミニアインスには電磁波を防御する加工が施されているのでその影響は受けることはなく、なおかつ見取り図を《銃型HC弐式》にインプットして位置情報を把握しつつの行動のため、後れを取ることはあまりないようだ。
 ミニアインスの援護によって命中性能を落とした敵イコプラの攻撃を避けつつ、ミニツヴァイが攻めたてる。遠距離からレーザーバルカンで牽制しながら一気に接近、距離を詰めてすぐに二刀流による白兵戦、頃合いを見てグレネードを置き土産にしながら素早く後退――という、イコン搭乗時と同じ戦略で戦っていくものの、やはりこちらも数の利による不利は否めそうになかった。
「このままだとまずいですよ……」
「しかし数は少しずつ減らしてきている。今はこのペースを保つしかないだろう」
 苦戦にわずかの焦りを見せるグラキエスとロア。今は自分たちの作戦を信じるほかなかった……。


 ――各製造地区で奮闘が進んでいるその頃。柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)アルマ・ライラック(あるま・らいらっく)と共にとある一室にやってきていた。
「まったく……桂輔は何をしているのですか? 敵に全く目もくれず、工場の施設ばかりを巡ってばかりじゃないですか」
 ……アルマの言うように、桂輔は工場の各ラインを見学していた。とはいえ、一応警備イコプラを追い払ったりなどはしているのでアルマもあえて目をつぶっていたのだが。
「まぁまぁ、いいじゃないか。こんなチャンス滅多にないから、ここぞという時にしっかり見ておかないと。……お、なんだろこれ」
 アルマが溜息をつくのも無視するほど、桂輔の目は輝いている。普段は見られないイコプラの製造ラインに、その興奮も最高潮に近い。
「……うぉ、これは!? 今度発売される新作イコプラのサンプル! しかもこっちには発表されてない劇場アニメ“機動要塞スフィーダ・恋、憶えてください”のイコプラ展開企画案に限定イコプラの図面!? うわー、うわーー!!」
 目の前にはお宝の山。それに興奮してか、携帯を取り出してそれを写真に収めようとしている。……だが、それをアルマは許さなかった。
「――何を写真に収めようとしているのですか、桂輔?」
 ……桂輔の顔面に向けられる銃口。声色は比較的いつも通りなのだが、顔が完全に笑っていない。深く静かな怒りがそこにはあった。
「え、あー……いや、これはだな……」
「製造ラインとかを見学するのは、一応警備イコプラを倒していたりとかしていましたのであえて見逃していましたが……工場の機密情報を持ち出そうとするのはさすがに見過ごせません」
「しゃ、写真くらいどうってこと――」
「……写真くらい? どうやら反省の色はないみたいですね」
 すかさず、発砲。ただし銃口の先とその着弾点は桂輔の足元だったが。……しかし、桂輔には効果があったようだ。
「ごめんなさいすいませんすぐにデータは消しますですから許してくださいお願いします」
「わかればいいのです。さぁ、すぐに戦線へ向かってください。――どうやら、援軍も到着したみたいですし」


 ……その頃、両製造地区ではありがたい援軍によって不利な状況を徐々に押し返していた。
「待たせたなっ! 量産戦闘イコプラ軍団、頭数が揃ったので即参上!」
 ケヴィンたちの作戦によって生まれた量産型改造戦闘イコプラ軍団。操作に慣れたイコプラバトラーの頭数が揃ったため、すぐさま救援に来てくれたようだ。
「助かります! ――セルファ、そちらのほうは大丈夫ですか!?」
「こっちはだいぶ引きつけた! 後は真人に任せるわ、一気にやっちゃって!」
 機動力を生かし、敵イコプラの攻撃を避けながら大量の敵機たちを一ヶ所に集めてきたセルファのアストレア。それを見た真人はすぐにパラスアテナ・セカンドへ指示を送ると、その一団に向けて全武装を全弾発射していく!
 全弾を賭けた一撃によって、セルファが引きつけた大部分の敵イコプラを撃破していくと、製造地区Bのおおよその敵イコプラを倒すことに成功したようだった。
「すぐに他の地域の援護に向かいましょう。……その前に、補給は必要ですが」
 と、その時通信が入り、製造地区Aも援軍の到着によって大方の敵イコプラの動きを止めることに成功したとの連絡が入る。頃合い的には残りの二地区も解放されているはず……と考える真人。
 すぐにそちらへの援護に向かうため、まずはイコプラへの補給をおこなうことにしたのであった。