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■中央制御室の激闘
 工場内の四区画が解放されたことにより、中央制御室の出入り口のロックが解除された。すぐさま、犯人確保チームは中央制御室へと乗り込んでいく。
「――こんなに早く到着するとは思ってなかったよ」
 ……中央制御室にて、設計図を製図しながらそう漏らしたのは、今回のイコプラ工場をイコプラを使って占拠した犯人……派遣社員・モータルだった。
「モータルさん! 今なら間に合うわ、おとなしく投降して!」
 まずは事を穏便に済ませるべく、イーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)が先だってモータルへ説得を試みる。
「悪いがそれはできない。僕はこの工場を使って、究極で最高な最強のマイ戦闘用イコプラを開発する! そのためにAIを積ませたイコプラ軍団を使い、工場を占拠したんだ!」
 モータルから発せられる、工場占拠の理由を聞かされ……その独善的な考えに、契約者たちはすぐにやめさせようとイコプラを構えていく。
「だからって、こういう形で実現させようとするなんてイコプラたちにもよくないわ!」
「……もうすぐ、もうすぐ設計図が完成する。その邪魔をさせるつもりはないよ。これ以上邪魔をされても困るし、力ずくでも出ていってもらう!」
 どうやら、説得や話を聞くつもりはないらしい。モータルはコントローラーを操作すると、ヴァラヌス型のイコプラ軍団と自身の愛機らしき機体・コームラント型改を戦場へと出していった。……実力でもって排除するつもりなのだろう。
 そうはさせまいと、契約者たちもそれぞれ動き始める。リーシャは難しい顔をしながらも、ジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)へ大きめのイコプラを手渡す。
「……ジヴァ、この1/32サイズ・フィーニクス型を貸すわ。これは技術検証用のモックアップだから、実機とほぼ同じことができるの。戦闘用にチューンを施してあるから、普段と同じように操縦すれば問題ないはずよ。……はい、これプロポと説明書」
 手渡されたイコプラを見て、ジヴァはなんだかしかめっ面だ。
「あんたって劣等種は、またこんな無駄遣いを……え、ちょ、これ戦闘変形自在可能でレーザーライフル完備!? 完全に無線兵器か何かじゃないの……」
 ……隠れイコプラオタクであるリーシャだからこそのこだわりなのだろうか。ともあれ、イコプラバトルには無頓着なリーシャに代わり、ジヴァが操作していくこととなった。
(とはいっても、思った以上にヴァラヌス型が多い……被害を抑えるためにも、少し数を減らしてから仕掛けるべきね……)
 モータルは襲撃を予見していたのか、ヴァラヌス型のイコプラ軍団を二編隊……合計四〇〇機にて迎え撃っている。ジヴァは操作に慣れるためにも、すぐには仕掛けずにヴァラヌス型の対処へ回ることにしたのであった。

 ――中央制御室の戦いが始まった。数多くのヴァラヌス型を前に、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)夏侯 淵(かこう・えん)は毅然とした態度でスフィーダ型をそれぞれ五機ずつ、両手手動操作と音声操作、さらには夏侯淵が自身のとルカルカのスフィーダ型を一機ずつ『式神の術』で式神化し、軍勢に立ち向かおうとしていた。
「外部干渉を防ぐために『迷彩塗装』の塗料に乱反射材を混入、『強化装甲』で防御力強化、さらには『先端テクノロジー』と『機晶技術』でイコプラの情報処理能力を高度化、多彩な動きに対応した操作の簡易化……全部俺の改造によるものだ。――行け、“黒の盾”! お前の力を見せてやれ!」
「“黒の剣”、起動。敵を討ち犯人を捕らえて!」
 それぞれのリーダー機(式神化したもの)の呼称と命令を発すると共に、モータルに向かって行動を開始。しかしそれをすんなりと通すほどモータルもバカではないらしく、多数のヴァラヌス型で応戦していく。
 各スフィーダに搭載されたレーザーバルカン、ヴリトラ砲、イコンソードを巧みに操り、ヴァラヌス型に攻撃を開始していくものの、すぐにはモータル確保には赴けそうになかった――。


「アレーティアよ、これだけのイコプラが相手となると実に愉しく、燃えてくると思わぬかの?」
「そうじゃのう。――まずは前哨戦、犯人までの道を切り開こうぞ!」
 猛勇のイコプラマスター・グロリアーナのイコプラ、HMSレゾリューションとグリフィズ・エクトゥス。
 イコプラショップの店長・アレーティアのイコプラ、ブルースロート・フェイクと羅刹王。
 さらにアレーティアのサポートとしてアニマ・ヴァイスハイト(あにま・う゛ぁいすはいと)が操るイコプラ小隊が控えていた。
「こっちは任せてください。お母さんとグロリアーナさんはあのコームラント型の所へ!」
「あいわかった――薙ぎ払え、羅刹王!!」
 アレーティアのイコプラ小隊による援護攻撃と共に、羅刹王が先陣を切る。突貫したその機体は機神掌や旋風回し蹴りで次々と獅子奮迅の薙ぎ払いっぷりを見せる。かといって防御をおろそかにしているわけでもなく、ヴァラヌス型の攻撃はブルースロート・フェイクが展開するシールドによって防いでいるようだ。
 そして、羅刹王が打ち漏らした敵機はアニマのイコプラ小隊が連携を組んで確実な撃破を目指していく。イーグリット・ナハトとイーグリットアサルト・アークは切込み役による前衛担当、シュバルツ・F・ファントムとコームラント・アーベントは機関砲と大型ビームキャノンによる中〜後衛からの援護射撃を担当し、その連携は見事なものであった。
「蹂躙せよ、レゾリューション!」
 そして何よりも派手な弾幕を見せていたのは、『機晶技術』で操作機能などを組み込んだ多機能携帯電話型端末“cinema”を介して操作しているグロリアーナのレゾリューション。大型ビームキャノンと20ミリレーザーバルカンをヴァラヌス型へ乱射し、その接近を阻害しながら必殺武器の充電を進めている。
 その充電が終わるまで、グリフィズがロングレンジの小型レーザー砲“サーベラス”による精密射撃で援護していく。
「――充電完了! 焼き払えぃっ!!」
 HMS・レゾリューションのエネルギーチャージが完了すると、グロリアーナの操作と共に、必殺の一撃である“ミニマム・ヴリトラ砲”を照射! ヴァラヌス型のひとまとまりを一掃していく! その後の撃ち漏らしも、グリフィズのバルディッシュ型レーザー兵器“イグニス・ファティウス”で討ち取り、反撃の隙を与えない。
 ある程度の露払いを済ませていくと、アレーティアは《ぽいぽいカプセル》を手にし、モータルの元へと走っていったのであった。


 ――ヴァラヌス型の猛攻をなんとか耐え忍ぶアリスと剛利のイコプラ。しかし、運悪くその二機は撃墜されてしまった。
「あら、撃破されちゃった……イコンはやっぱり、実機に限るわね」
「うぅ、くそっ……」
 と、そこへ二人のイコプラの前に立つイコプラたちの姿が。三船 甲斐(みふね・かい)のイコプラ小隊と後藤 山田(ごとう・さんだ)のイコプラ編隊――計九機の軍勢である。
「このPS隊、舐めてもらっちゃ困るよ」
「アリス、後は俺たちに任せな。――俺のイコプラ捌き、魅せてやんよ!」
 玉霞型をベースに改造し、『式神の術』にて式神としてある高機動近接格闘型をリーダーとし、ジェファルコン型ベースの超高機動型、ブルースロート型ベースの射撃支援機と重装甲射撃砲台機――全四機の布陣の山田。
 そしてPS隊と称された戦闘用イコプラ五機を布陣として組む甲斐。そこへさらにイコプラ完全初心者のミシェル・スプリング(みしぇる・すぷりんぐ)がレンタル品のプラヴァー型で後方からの支援を行うべくスタンバイしていた。
「出撃前に色々と練習をして、その楽しさがわかってきたんだ。この戦い――生き抜くっ!」
 ミシェルもだいぶイコプラの世界に染まってきているような気がしないでもない。
 襲いくるヴァラヌス型に対し、甲斐は改造したPS隊のジェファルコン並みの機動力を活かして、攪乱作戦をおこなっていく。攪乱の隙を突いては硬くした装甲を利用しての体当たりを繰り出し、地道にダメージを与えていった。
 そこへミシェル機の援護射撃や、山田の玉霞型のイコン格闘術、超高機動ジェファルコン型のヒット&アウェイ戦法に加え、ブルースロート型二機による援護射撃によってヴァラヌス型の一部を圧倒する。
「ドール! 露払いはボクとサンダーたちでやるから、犯人のほうをお願い!」
 戦略的な動きを見せ、レンタル品のプラヴァー型で十分な露払いを担当している鳴神 裁(なるかみ・さい)ドール・ゴールド(どーる・ごーるど)へそう声をかける。ドールの足元には、戦闘用補助AIを組み込んだイコプラ小隊(ジェファルコン型二機、ブルースロート型二機、プラヴァー重装甲型の計五機)の姿があった。
「わかりましたのですよ〜? イコプラバトル愛好会の一員として、頑張ってきますのですよ〜?」
 栽たちのサポートを受けながら、ドールは愛機たちと共にモータルの所へ向かっていったのだった。


「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部・ドクター・ハデス(どくたー・はです)! 邪魔なイコプラ共よ! 犯人への道を開けるのだ! 我がイコプラ操作テクニックで目に物見せてくれるわ!」
 名乗り口上もそこそこに、エクスカリバーンを模したイコプラでヴァラヌス型へ攻撃を仕掛けようとするハデス。……しかし、その眼前にはラブ・リトル(らぶ・りとる)が操るドラゴハーティオンを模したイコプラが横から飛び出してきた!
「よーし、普段は小さいから戦いとか参加しづらかったけど、イコプラ戦闘なら思いっきり暴れまくれるわよ! ハデス、協力するからにはちゃーんとこっちの動きに合わせ……ああっ!?」
 ……エクスカリバーンイコプラの攻撃が、ドラゴハーティオンイコプラにヒット。思わぬ攻撃にラブはハデスをキッと睨みつける。
「待て待て、今のは急に出てきたお前が悪い! いいか、こちらの動きに合わせて攻撃するのだ!」
「えー! あんたがサポート、あたしが止めでかっこよく――ってこら! 先に行くなー!!」
 ヴァラヌス型に改めて攻撃を仕掛けようとするハデス。しかし、自分が活躍しようとラブが飛び込み斬りを同じターゲットへ繰り出そうとしていた。そしてその飛びこみ斬りの軌道上には……エクスカリバーンイコプラの姿が……。
「――貴様ぁ、何をする! 敵はあっちだろうが! というか、サポートに回れ!」
「嫌よ! その役目はあんたに……ああっ、攻撃されてる! ちょっとハデス、あんたせめて盾になりなさいよ――って、あたしの後ろに隠れるなバカーー!!」
 ……この後もこんな調子で、どちらも目立とうという意思の元に動くあまり、連携が全く取れていなかった。……そして、この状況を見ていたコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)聖剣勇者 カリバーン(せいけんゆうしゃ・かりばーん)がついに動く。
「――ラブ、流石にこれ以上は見ていられない。操作は私が行おう。ロクに戦ってないのにイコプラがボロボロではないか……」
「ドクター・ハデスよ! そんな無茶な戦い方をするんじゃない! いいか、イコプラ――否! 勇者ロボの戦いとはこのようにやるのだ!」
「共にいこう、カリバーン!」
「行くぞハーティオン! 全力でヴァラヌス型の軍勢を倒し、犯人への道を切り開く!」
 それぞれが操作権を交代すると、その動きはたちまち見違えるほどに連携のとれたものとなっていく。先ほどまでの見るも無残な連携とは大違いだ。
「ぬ……これはすごいな……」
「息ぴったりだねぇ……」
 ハデスとラブもその連携っぷりに思わず見入ってしまう。……ここまでの連携を為せるのも、ハーティオンとカリバーンの関係性によるものなのかもしれない。
「ハーティオン、俺の力を託す! 神剣変形、神剣・カリバーン!」
 カリバーンが特殊コマンドを入力し、エクスカリバーンイコプラを巨大剣モードへと変形させる。そしてそれを、ドラゴハーティオンイコプラががっしりと持ち、天高く掲げた!
「神剣武装! エクス・カリバーーーン!!」
 高らかな声と共に、その構えは勇者パースへと変える。ヴァラヌス型の群れへ闘気を定めていくと、一気に距離を詰めて一刀両断する!
「神・剣・両・断! カリバァァァァァンストラァァァァァァァァァァァッシュ!!!」
 その威力は確かなもので、一振りで数体のヴァラヌス型を葬り去っていく。そこから、イコプラの勇者は絆とも呼べる連携で次々と敵を薙ぎ倒し、犯人へ向かう契約者たちへの道を文字通り切り開いていくのであった。