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――石村邸、地下。

 石村邸に存在する広い地下空間。そこは大きなフロアになっており、広い牢屋が存在していた。
 牢屋に入っているのは、捕縛した侵入者達。過去に屋敷を探索した者達も、ここに収容されていた。
 いつ来るかわからぬ助け、いつ解放されるかわからない状況。鬱屈とした空気に包まれている――と、思いきや……

「ふー……何かここ落ちつきますわー……」
 完全にこの空間でアシェルタ・ビアジーニ(あしぇるた・びあじーに)がリラックスしきっていた。その様は捕縛されている者のそれではなく、自室でくつろいでいるようにしか見えない。
「確かにこの空間はいい……何がいいって働かなくていい、ということがな」
 月読之 尊(つくよみの・みこと)の言う通り、ここでは三食きちんと与えられ、何をするかと言うと大人しくしていればいいだけだ。
「ここでなら存分に無職のプロでいられるという事か……まさにユートピアだ」
 『働いたら試合終了』と書かれた尊が感動したように言う。働かなくてもこの人何か終わってる。てかユートピアて。
「……何も考えなくていい……考えるのも面倒になってきた……」
 双葉 朝霞(ふたば・あさか)は相変わらず鬱屈としていたが、それなりにここに馴染んでいるようであった。

「いや……あたしにはあんたらが何を言っているのか全く理解できないんだが……」
 ウルフィオナ・ガルム(うるふぃおな・がるむ)がこめかみを押さえ困ったように言う。
「こ、怖いよ姐さ〜ん……」
「ちょっとこいつら何とかしてよフィオ!」
 ガルム アルハ(がるむ・あるは)リコリス・リリィ・スカーレット(りこりす・りりぃすかーれっと)がウルフィオナに半べそになりつつ縋りつく。
 ウルフィオナ達の目の前にいるのは、土下座する数名の根暗モーフ。わざわざ牢屋に入ってきてウルフィオナに何故土下座をしているのかと言うと、
「踏んでください」
「罵ってください」

という漢らしい頼みであった。
「いやいや! 正気かてめぇら!?」
「勿論ですとも!」
「正気で踏んでくれっておかしいだろ!?」
「この見張り番は暇でしょうがないんですよ! 娯楽が欲しいんですよ!」
 胸を張って応える根暗モーフに、ウルフィオナが言葉を詰まらす。
「ご、娯楽で踏んでほしいって頭おかしいんじゃない!? 正直キモいのよ!」
「ありがとうございます!」
「褒めてないわよ!」
 リコリスの罵倒も嬉しそうに根暗モーフは受け止める。
「な、なんでこいつはあたいをじっと見てるのさ〜!?」
 ガルムがじっと自分を見ている根暗モーフの視線を避ける様に、ウルフィオナの背に隠れる。
「ああ安心していただきたい。拙僧は紳士故手出しは一切せぬ。心はいつもYesロリコンNoタッチ。代わりに目で愛でる事を許していただきたい……ふふふ、拙僧をパパ、若しくはお兄ちゃんと呼んでもいいのですぞ?」
「呼ぶかぁッ!」
「はぐぉッ!?」
 我慢できずウルフィオナが蹴り飛ばす。
「ああ! 踏まれるのは私の役目だというのに!」
「もう我慢できん! てめぇもだ!」
「ありがとうございますッ!」
 蹴られた根暗モーフが、満面の笑みで吹っ飛ばされた。

「ふぇぇ〜……怖いよ〜……」
「落ちつけ、俺がついてる」
 怯えるアニス・パラス(あにす・ぱらす)を宥めつつ、佐野 和輝(さの・かずき)は先程からじっとこちらを見ている根暗モーフ達を威嚇するように睨み付ける。
「何だよお前ら、何見てるんだ。言っておくがアニスに何かしてみろ、ただじゃおかないからな」
 だが根暗モーフ達はこちらをただ見ている。その様子に和輝は違和感を持つ。視線はアニスではなく、和輝に向けられていた。
「……何だよ?」
 睨み付けながら和輝が言うと、
「……アリ、だな」
根暗モーフの一人がポツリと呟いた。
 ちなみに、現在和輝は潜入任務の為変装をしている。見た目はと言うと、衣装を用意した者の暗躍により中性的な男の娘。後は言わなくてもわかるな。
「ああ、アリだ」
「うん、俺十分いけるわ」
「いやまて、一体お前ら何の話してるんだ?」
 和輝が恐る恐る問いかける。
「え? そりゃナニの話を」
「おい待て! 俺は男だぞ!?」
「「「「それが何か問題でも?」」」」
 よく訓練された根暗モーフ達であった。
「何言ってんだお前ら! さっきから変な目で見ていると思ったらそう言う事かよ!」
「ああ、安心してもらいたい。今頭の中では幸せな家庭を築いている所だ
「そんな目で俺を見るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 和輝が絶望的な声で叫んだ。
 ちなみにその隣では、
「寄るな見るなペドリスト。生きる価値もないゴミが何故生きている。存在するだけで虫唾が走る」
「ありがとうございます!」
「あらあら、罵倒されてお礼を言うなんてほんっとうに救いようがない豚ねぇ……あらやだ、久秀としたことが失敗失敗。こんなのと一緒にしちゃ豚に失礼よねぇ〜? ねぇ、こんな風に言われてもまだ興奮しちゃうのぉ〜?」
「御褒美であります!」
禁書 『ダンタリオンの書』(きしょ・だんたりおんのしょ)松永 久秀(まつなが・ひさひで)が何やら楽しそうにやっていた。
 そんな中、一人の根暗モーフが前かがみになりながら牢屋から離れ、屋敷への出入り口へと向かった。
「どうした?」
「……ちょ、ちょっとトイレへ」
 その顔は興奮しきっており、『漏れる寸前』というよりは『イく寸前』という表現が似合う。
「いや待てお前、何しに行く」
「そりゃもちろんナニ……ってあれ?」
「どうした?」
「いや、戸が開かないんだけど……っかしーなー……」
 力を込めて戸を押し開けようとするが、びくともしない。それもそのはず、今地上は瓦礫の山となっているのだから。

――彼らの存在をアゾートとなななが思い出し、救助されるのはこれから数日後のことである。

担当マスターより

▼担当マスター

高久 高久

▼マスターコメント

ここまでお付き合い頂きありがとうございました。今回担当しました高久高久です。
この度はご参加頂き誠にありがとうございます。毎度お待たせして本当に申し訳ありませんでした。

さて、今回ホラー要素ゼロのホラー、というシナリオとなりました。
そしてタイトルらしい要素もゼロ。タイトル詐欺とは言わないでください。
色々細かい話は後程マスターページで語らせていただきます。

毎回アクションを読ませていただき、楽しく読ませていただいてます。
毎回勉強させられる事も多く、自らの未熟さを痛感させられています。
今回も毎度の如く反省点が多々あります。これを踏まえて、もっと皆様に楽しんで頂けるよう頑張りたいと思います。

それではまた次の機会、皆様と御一緒できる事を楽しみにしております。

▼マスター個別コメント