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天の川よりの巨乳X襲来!?

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天の川よりの巨乳X襲来!?
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【十一 きょぬーシップ・トルーパーズ】

『さぁー、それではミーが結果を発表するネー!』
 迫り来る夕闇の中、水着コンテストの舞台上に上がった笹飾りくんコスプレのキャンディスが、マイクを通して会場に結果発表のコールを響き渡らせる。
 本選は、男子の部はほとんど特定のひとりの独壇場だったが、女子の部は激戦であった。
 もともと出場予定だったエンヘドゥが、マッサージ講座での多忙を理由に棄権したのが、何よりも大きかったのだが、そこへ飛び入りになななやシャウラが参加したものだから、余計に混迷を極めた。
 あまりに票が割れた為、決選投票が行われた挙句、準クイーンが二名選出されるという運びになった程であるから、その戦いの激しさが窺えよう。
 しんと静まり返る会場をじろりと一瞥してから、キャンディスはもったいぶった仕草で手元の用紙に視線を落とし、まずは男子の部から読み上げる。
『優勝は……ラルク・アントゥルースさんに決まったネ。コングラッチュレイショーン』
 キャンディスが読み上げると同時に、舞台の向かって左側で仁王立ちになっていたラルクが、うぉーと両手を天に突き上げ、勝利の咆哮を上げた。
 和深達の妨害をものともせず、大巨乳八連制覇を戦い抜いて見事スーパーマッチョボディを勝ち得たラルクは水着コンテストに於いても、きっちり結果を残した。
 まさに有言実行。
 男子の本懐、ここに極まれり、である。
 そして気になる女子の部、だが――。
『それでは発表するネ。まずは二名の準クイーンからネ』
 再び会場がしんと静まり返り、キャンディスの次の言葉に、全員が聴覚を研ぎ澄ませている。
 矢張りキャンディスは今回も焦らすようにして、ゆっくりと手元の用紙に記されている名前を読み上げる。
『ひとりは〜、水原ゆかりさんネ。そしてもうひとりは、マルティナ・エイスハンマーさんネ』
 その瞬間、場内はちょっとしたどよめきに覆われた。
 だが、準クイーンではまだ、この程度の反応であろう。問題は、次である。
『そしていよいよ発表ネ。2022天の川水着コンテスト女子の部、栄えあるクイーンの座を射止めたのは、ルシェン・グライシスさんネ〜』
 キャンディスの読み上げる声が終わるか終らないかといううちに、場内は盛大な歓声と拍手に包まれた。
 スタッフに促されて、舞台前方に歩を進めた三人のクイーン・準クイーン達は、キングに輝いたラルクと共に賞状とトロフィーが授与される。
 観客席のどこかで、
「うわー、ルシェーン!」
 と叫ぶ声が聞こえたが、今のルシェンはそれどころではなく、心臓バクバク状態で何が何やら分からないといった様子だった。
 何はともあれ、2022天の川水着コンテストは、盛況のうちに幕を閉じた。
 また来年、お会いしましょう――いや、そんな大会がまたあれば、の話だが。

 桃色海域を巡る大巨乳八連制覇には敗北したものの、何とかきょぬー化に成功したセドナ、アルフェリカ、そして月琥の三人を遠巻きに眺めつつ、和深は小さく溜息を漏らした。
 きょぬーそのものは、決して嫌いではない。
 だが、このシチュエーションを素直に喜んで良いのかどうか。そして、あと数時間で再びひんぬーへと戻ってしまう彼女達に、何と声をかければ良いのか。
 中々に難しい問題であった。
 と、そこへ足の一本一本がマッシブに太くなっているイングラハムがやってきて、和深の肩を軽く叩いた。
 ふたりは大巨乳八連制覇で激闘を繰り広げたものの、戦いが終われば強敵と書いて『とも』と読む間柄へと発展していた――ような感じがしないでもないかも知れないと思しき風に見えないこともない。
「良い戦いだった。諸君に敬意を表する」
 この時、イングラハムの目元が劇画チックに鋭くなり、加えて太い眉毛が生えていた――ように、和深の目には映った。
 新たな友情、という点では、永谷とクローラの間にも、奇妙な友情と思しき情が湧いてきている。
 最初のうちは小暮を巡って激しく対立していたふたりだが、小暮への思いに苦しむ永谷と、別の女性に思いを寄せているクローラが互いの心情を知り、似た者同士だということが分かると、急に親近感が込み上げてきたらしいのである。
「成る程……色々、苦労してるんだな……」
「そっちこそ、思いを告げられないというのは大変なものだな」
 小暮はどこかで相変わらず確率計算に勤しんでいるようなのだが、そんな小暮の姿が見えなくなっても、永谷とクローラはそれぞれの心情を吐露し合い、変なところで親睦を深めていた。
 その時、水着コンテスト会場から大歓声が沸き起こってきた。
 丁度、クイーンが発表されたタイミングである。
 あちらはあちらで、祭りの後を迎えようとしているのだろう。
「そういえば、あの大きな星は、いつまでここに突き刺さっているんだろうな?」
 永谷の疑念はしかし、すぐに晴れることとなる。

 ライフセーバーの手伝いを終えて海の家に戻ってきたジェライザ・ローズは、厨房にひょいと顔を出した。
 腹が減ったので、残り物のカレーか焼きそばにありつこうとしたのである。
 ところが。
「ありゃ、ごめんね。もう売り切れちゃった」
 ネージュが空っぽの鍋を抱えて、空洞と化した中身を見せると、ルカルカも、
「こっちも、もう全然残ってないよ」
 と、焼きカスだけが残った鉄板を指差した。
「うぅむ、残念だな……結構な評判だったから、ひと口ぐらいは食べたかったんだけど」
 ジェライザ・ローズが心底困ったような表情を見せると、ルカルカが申し訳無さそうな顔つきで、別の皿に盛りつけられた焼きそばを差し出した。
 これは、ダリルが他の海の家で購入してきた、失敗ものの焼きそばである。
「こんなんで良かったら残ってるけど……どうする?」
 だが、捨てる神あらば拾う神あり。
 それまで一連の会話を黙って聞いていた正子が、不意にその巨体をのっそりと寄せてきて、ルカルカの手から発泡スチロール製の皿を奪い取った。
「残り物があれば、それで十分だ。わしがひと手間加えて、美味に仕上げてやろう」
 ジェライザ・ローズは、ほっと胸を撫で下ろした。
 正子の技量なら、任せて安心である。
「じゃ、お疲れ様〜。ルカ達は、これから夜のお散歩だから、失礼するね」
 鋭峰のお供で、夜の浜辺を散策することになっているルカルカが、ジェライザ・ローズ達の前から砂浜方向へと去っていった。
 入れ替わりに、幾分がっかりした様子の綾乃が、何度も溜息を漏らしながら海の家の座敷に上がってきた。
「どうか、したのかい?」
 ジェライザ・ローズが問いかけると、綾乃は悔しそうな、或いは残念そうな面持ちで何度も首を振った。
 どうやら彼女は、きょぬー化の海水をバケツに汲み上げて、エンヘドゥに頭からぶっかける作戦に成功したらしいのだが、しかし結果がいまいちだったのである。
「どういう訳か……胸のサイズが、ほとんど変わらなかったんです」
「そりゃ、もとがあれだけの大きさだから、ちょっとかぶったぐらいじゃ変わらないかも知れないな」
 ジェライザ・ローズの医学的な分析を受けても、綾乃の表情は矢張り冴えない。
 もっと劇的な変化を期待していた分、落胆も大きいようであった。