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桜封比翼・ツバサとジュナ 第三話~これが私の絆~

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桜封比翼・ツバサとジュナ 第三話~これが私の絆~

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■防衛網を突破せよ
 ――“桜の精”。空賊団の団長から初めて発されたその単語は、ツタの化け物の呼称として認識され、今に至る。
 魔吸桜が封印されている祠の周辺までやってきた翼と樹菜を始めとした契約者一行は、展開されている桜の精軍団に改めて驚きを隠せずにいた。
「これは……すごい量ですね。一個中隊並み、という報告はあながち嘘じゃなさそうです」
 御凪 真人(みなぎ・まこと)が敵の量に思わず感心を上げてしまう。が、すぐに翼たちのほうへと視線を向けると、意思の強い瞳を見せていく。
「これだけの数が相手となると、消耗や立ち止まりは避けられないでしょう。けどここは俺たちに任せてください。翼さんと樹菜さんがあの祠へ向かうための道を、俺たちが切り開きます」
「ここは私たちだけで十分よ、翼たちは安心して先を急いでちょうだい」
 そう言葉にすると、真人はパートナーであるセルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)、そして他の数組の契約者たちと共に一歩前に出る。……真人たちの目的は、翼と樹菜たちをカルベラがいるであろう封印の祠までの道を切り開き、桜の精軍団が構成する防衛網を抑え込むこと。とはいえ、翼たちも祠へ向かうためには少なくとも戦わなければならず、激戦は避けられそうになかった。
 しかし真人の言うように、この後のことも考えて消耗を抑えながら戦っていくほかない。翼たちはを意を決すると、その眼差しを桜の精の群れへしっかりと向けていく。
「――いきますっ!!」
 真人のその一声を合図に、作戦が開始される。作戦の第一段階――それは単純に、防衛網を切り崩し、一気に祠まで突っ切ること。
 それを実現させるためにも、真人はすぐさま《召喚獣:サンダーバード》と《召喚獣:フェニックス》を呼び出し、防衛網の一角に向けて攻撃を放たせる。二匹の巨鳥が放つ轟く雷鳴と燃え盛る豪炎が同時に防衛網の壁を穿ち、突破口を作り出すと契約者たちは急ぎその穴を目指す!
「不滅兵団で道を維持します! その隙を縫って、先に進んでください!」
 即時復活する特性を持った桜の精によって、突破口が徐々に埋められようとしている。真人はそこへ素早く《召喚獣:不滅兵団》を呼び出して桜の精たちを抑え込み、翼たちを先に行かせた。と……すれ違う際、真人とセルファが翼と樹菜へ激励を送る。
「パラミタで色々な絆を結んできたからこそ、今の俺がいます。その絆を壊されないためにも――そちらはお願いします!」
「翼、奪われたなら取り返せばいいだけよ! あなたたちならきっとできる、私たちのことは心配しないで!」
 二人の言葉に翼と樹菜はしっかりと頷いて返事しながら、真人たちのいる場所から離れていき……すぐ次の桜の精の群れへ突入していく。それを見送った真人とセルファは、周囲を囲んでいる桜の精たちと対峙する。
「今回ばかりは手加減無しといきましょう。バハムートにセルファ、敵を蹴散らしますよ」
「ちょっと、私をバハムートと同じように言わないでよ!? 私、普通の女の子なのに――ったく、頼ってくれるのは嬉しいけどもっと言い方あるんじゃないの?」
 真人の言葉にやれやれ、と思いながらもセルファは武器を構え、『バーストダッシュ』『ゴッドスピード』で動きに加速をつける。それを確認した真人は《召喚獣:バハムート》を呼び出し、サンダーバード・フェニックス・バハムートの揃い踏みを見せつけると――遠慮のない圧倒的な大火力を放たせ、真人自身も『天の炎』を使って周囲を一斉攻撃する!
 だが、魔吸桜の影響によって通常より威力は落ちているのは否めないようで、大火力で焼いても桜の精の大部分はいまだにその活動を止めてはいない……が、それはセルファにとってはカモ同然の相手。得意の高速機動で戦場を駆け、『ソードプレイ』で振るう武器から放たれる『朱の飛沫』『爆炎波』で桜の精を完全に焼き払い、真人の取りこぼしを確実に倒していく。そこにあったのは、炎の嵐とも呼べる神速の炎風――!
「はいも残さず焼き払ってしまえば、いくら即時再生するとはいえ時間はかかるはず……! セルファ、気を抜かないでくださいよ!」
「もちろん! たぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
 大火力による追撃阻止を行いながら、真人とセルファは翼たちの作戦の成功を心の中で祈りつつ、桜の精を次々焼き払うのであった。

 ――奮戦する真人たちを背に、翼たちは先を急ぐ。
 『変身!』でいつもの戦闘フォームになっているシリウスが先導をする形で進む。『熱狂』によるツタへの対策を施しながら、翼と樹菜や共に行動する仲間たちへ『空飛ぶ魔法↑↑』を使って空中からの移動を試みているのだが……どうやら、『空飛ぶ魔法↑↑』自体の効力も減衰しているのか、それほど高くは飛べなさそうだ。
「厄介だな……」
 これでは考えていた三次元機動による優位性の獲得は難しいと感じ取るシリウス。真っ直ぐ一気に進むなら問題なさそうだが、それを実現するためには一直線の道と邪魔立てのない状態が必須になるだろう。
 リーブラもシリウスと共に先導を行い、『パスファインダー』を使って不整地な地面も難なく移動できるよう配慮。迫ってくる桜の精を迎撃していく。リーブラと分担し、背中をかばい合うような形で翼と樹菜の護衛に回るサビクも、ペット形態にした各アヴァターラギフトと一緒に敵の迎撃に当たっている。どうやら無生物であるギフトは魔吸桜の影響を受けていないようで、元気よく戦場を駆けまわっては桜の精へ一撃を加えていく。
「なんだか、全然前に進めてない気がするんだけど」
 サビクがそういうのも無理はない。儀式の邪魔をする者を排除しようと、桜の精による防衛網が厚くなってきており、翼たちの進行速度が目に見えて遅くなっている。このままでは物量に押される可能性が出てくる……そう翼が思った時だった。
「……ここは私たちが食い止めるであります。すぐに追いつきますので」
 そう言って、翼たちの道を切り開こうとしているのは葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)。その後ろにはコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)の姿も見受けられる。そして吹雪の手には……《自爆弾》が!
「え、それはこの前吹雪さんが使った自爆用の……!?」
 樹菜がその存在に気付いたのか、吹雪に問いただそうとする。しかし、吹雪は大丈夫だと言わんばかりの雰囲気で桜の精たちと対峙していく。
「皆さん、今回は誘爆させないので安心してくださいであります。この前のはあくまでも事故ですし」
「それでも安心できないって。まず誘爆させないようにしまったほうが……」
 コルセアのツッコミも空しく、吹雪は上空からミサイルと爆弾を投下して一斉掃射し出した鋼鉄 二十二号(くろがね・にじゅうにごう)の攻撃に合わせ、桜の精たちに一気にカチコミを入れるようにして大立ち回りを繰り広げようとする!
「こっちでありますよー! ……あれ、なんか楽しくなってきた。これはやっぱ自分がやるしかないか!!」
 敵の意識を自身へ向けさせようとあれこれやっている内に、なんだか楽しくなってきたらしい。吹雪はコルセアのツッコミを受け入れて一度はしまったはずの《自爆弾》に手を伸ばそうとしている。
「……ああ!? ちょっと、誰かあれをとめてー!」
 《イレイザーキャノン》で吹雪たちの援護射撃をしていたコルセアであったが、吹雪がやらかそうとしている暴挙を発見するとすぐにそう叫ぶ。と――そこへ、『クライオクラズム』の強力な闇黒の凍気が『死の風』と共に広範囲に広がり、桜の精を一斉に攻撃していく。その発生源にはアルフェリカ・エテールネ(あるふぇりか・えてーるね)がおり、吹雪たちの援護に加わったようだった。
「即時再生するのならば、ぎりぎり弱らせれば突破もしやすいだろう。――和深!」
「おう!……てりゃあああああ!」
 さらに瀬乃 和深(せの・かずみ)がアルフェリカの攻撃で弱まっている桜の精を次々撃ち倒し、押しのけて道を切り開いていくと、すぐに翼たちを促して先へ行かせる。翼たちがその場を離れた直後、即時再生によって桜の精が復活、切り開いた道をすぐに閉ざしていった。
「ほぉ、今回は翼たちのそばでかっこいい所は見せないのか?」
「……さすがに今回ばかりはそんなことを言ってる状況じゃないからな。――そこのあんた! 自爆は一旦置いといてこっちの手伝いをしてくれ!」
「――了解であります!」
 翼たちを見送った今、自分たちのやるべきことは周囲に群がる桜の精たちの対処。吹雪も《自爆弾》に伸ばそうとした手を止めると、和深と共に桜の精たちを相手に大立ち回りを見せ始める。その姿は、今までの中で一番かっこよかったと思わせるほどのもの……だったのだが、いかんせんアルフェリカの派手な魔法のほうが目立っており、和深は悔しさのあまりにジト目でアルフェリカを見やる。
「……どうかしたか?」
 だが本人は目立っていることにはまったく気づいていない様子であった。……和深はその後、悔しさをバネに相当数の桜の精を撃ち抜いていった……らしい。