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桜封比翼・ツバサとジュナ 第三話~これが私の絆~

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桜封比翼・ツバサとジュナ 第三話~これが私の絆~

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■“絆”
 ――魔吸桜にかけられた魔女の呪いを浄化し、仙道院家の因果を無事に断ち切ってから数日が経った。
 今回の騒動において、封印を解かせそうと魔女の呪いによって操られていたカルベラであったが、ダリルがカルベラ救済のために色々と奔走してくれたおかげか、情状酌量の余地があるとしてその罪は軽くなるらしい。しかし、操られていたとはいえカルベラ本人による意思での行動も多かったのも事実であり、当面は教導団にて監視付きの生活を送ることになったようだ。
「わざわざ面会に来てくれるなんて、さすがは私の無二の友人ね、ヒロユキ」
「そんなんじゃないさ、ただの知り合いだよ。……そういえばひとつ聞きたかったんだけど、カルベラが儀式をしていた時に“指定したラインを越えるな”って言ってたけど、あれはなんだったんだ?」
「あー、あれ? 私が言ってたそのラインを越えたら、魔吸桜が種子を飛ばすつもりでいたのよ。魔力で繋がってたからか、呪いの考えが少しだけ共有できた感じかしら」
「なんだそりゃ? ……まぁいいか。それで、教導団から無事に出れたらトレジャーハンター生活に戻るのか?」
「もちろんよ、パラミタ中のお宝が私を待ってるんだもの。それと……あの子たちにももう一度きちんと謝罪しなきゃ」
「そうか。……カルベラがあの祠で探そうとしてたお宝、季節外れだってのに満開らしい。謝罪しにいくならついでに見にいったらどうだ?」
「ふふっ……そうなの。だったら考えておくわ――」


 ――仙道院家の屋敷。葦原島ではかなり大きな屋敷ではあったが、魔吸桜となっていた桜の大樹の根によってボロボロとなってしまっていた。今はその根も無くなっているのだが被害の爪跡は残ったままで、現在は葦原島の有志たちによって修復作業が進んでいる。
「……そうですか、お父様は祠やその周辺にはいなかったのですね」
「そうなるな。ったく、雷同がいるもんだと思って行方を捜してたが……どこにいっちまったんだか」
 仮の住まいの縁側で屋敷の修復作業を眺めている樹菜は、父・雷同の行方を追ってくれていた柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)から、その報告を聞いていた。しかしその結果は芳しくなかったようで、いると思われていた祠やその周辺をあの騒動の最中探してくれたものの、雷同の姿を見つけることはできなかったという。
「……お父様は、生きてらっしゃるのでしょうか?」
「その辺はちょっとわからないけどな。手紙が途中で切れてたけど、あれだけで死んだって証拠にはならないわけだし」
 恭也の言葉に対し確かに、と頷く樹菜。引き続き、雷同の捜索を恭也にお願いすると……その背を見送った後、考えに耽る。
(……不思議と、お父様が死んだとは到底思えない。魔吸桜の種子からはすでに解放されているのだとすれば……きっと、どこかで生きてると、私は信じます……お父様)
 父親は死んではいない。そう思えるようになったのも、樹菜が仙道院家の当主代理としての重みを受け継いだからだろうか。
 ……騒動が終わった後、樹菜と翼の二人はルカルカたちと某たちと共に明倫館総奉行の元を訪れていた。そこで色々と話し合った結果、二人の今後や気持ちなどの整理をつけてきたのだった。
 魔吸桜の封印を守る、という仙道院家の因果から解放された翼と樹菜。しかし二人はその話し合いを経て次にやることを決めていた。これからは二人一緒に、パラミタの“絆”を脅かそうとするモノを封印していこうと――。
 そして仙道院家の現当主である雷同が生死不明のため、樹菜は当主代理として仙道院家を引っ張っていくこととなった。当初は戸惑っていたものの、翼が色々と手伝ってくれているので何とかやっていけているようだ。
「――樹菜、また難しい顔してるよ?」
「あ、翼……ちょっと、お父様の事を考えてました」
 いつの間にいたのだろう、翼が樹菜の顔を覗き込みながら声をかける。それに気づいた樹菜は今考えていたことを素直に話していった。
「雷同さん……だよね。さっき、恭也さんからも話聞いたよ。――私たちも探そう。雷同さんはきっと生きてるはず!」
「ええ、私もそう思います。これから色々と忙しくなるでしょうし、その中で私たちができうることをやっていきましょう」
 ――樹菜はそう言葉にすると、その視線を“今後守護していくモノ”へと向ける。そこにあったのは、季節外れながらも満開に咲く桜の大樹……“散らず桜”の艶やかな姿だった。
 パラミタの“絆”を脅かすモノに立ち向かい、生死不明の樹菜の父親を探し、散らず桜の守護者として生きていく。これからもやるべきことはたくさんある。その道のりは平坦なものではないだろう。
「うん。――私と樹菜の二人なら、きっと大丈夫! 私たちの“絆”で全部解決していこう!」
「そうですね。……じゃあ、今日は皆さんと約束していた『天使の羽』を貸し切っての戦勝会の準備に向かいましょうか」
 おー、と拳を高く空へと向ける翼。――“絆”を分かち合ったこのパートナーとなら、どんな困難にも立ち向かえるほど本当に何でもできそうな気になる。樹菜は笑みを浮かべながら翼の言葉に頷きつつ、ゆったりと返事していく。
 そんな二人の決意を、散らず桜はただ静かに見守っていくのであった。


 ――桜封比翼。散らず桜の名の下、封印業を努める二つの翼。……天翔 翼と仙道院 樹菜、後に二人に与えられる称号となる。

担当マスターより

▼担当マスター

秋みかん

▼マスターコメント

 初めまして、もしくはこんにちは。柑橘類系マスター・秋みかんです。
 今回もたくさんのご参加、本当にありがとうございました。このシリーズはどれも難産が多かったのですが、何とか楽しんでもらえたらいいな、と思っている次第であります。
 桜封比翼の話としてはこれで完結となりますが、時折この二人を中心とした単発物も今後出していきたいな、と考えてます。とはいっても予定は未定ですが……。
 さて、今回も称号が増えたり増えなかったりします、お楽しみに。
 それでは、またお会いできることを願いつつ――。