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シャンバラの宅配ピザ事情

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シャンバラの宅配ピザ事情

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A Hard Day’s Noon

とある日の昼の荒野にて。
 キマク周辺の荒野に、落とし穴のようにぽっかりと地面に穴があいている場所があった。
 その穴を取り囲むように、モヒカン頭の見るからに不良そうな男達が手に釘バットや、マシンガンなどの武器を持って穴の中にいる人物が外に出て来るのをじっと待っていた。
「……うぅ、あのモヒカン消毒野郎ども、自分達がこの穴から出て来るのを待っているのであります。多勢に無勢なのであります」
 穴の中から、カーブミラーのように木の枝で持ち手を長くさせた鏡を使い外の様子を窺っていた葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は絶望的な表情で呟いた。
 ぐぅー。きゅるきゅるきゅるーと言う、自分のお腹が鳴る音に吹雪の顔は赤くなる。
 パートナーのハラヘリ具合をコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)は半眼で見つめていた。
「ところで、今無性にピザが食べたくなったのであります!! ということで、早速ピザ屋に電話するのであります!」
「……何処に向かって喋っているのよ。その視線の先土壁じゃない。しかも何故増援じゃなくてピザなの……と言うか、こんな状態で来れるわけないじゃない!」
 吹雪が平然と、何処からか手に入れていたシャンバラ・ピザキマク店のチラシを見ながら腕時計型携帯電話を使いピザの注文をしている姿を見てコルセアは突っ込みを入れる。
「……注文が出来たのであります。そして、質問に答えるであります。それは、人間の生理現象なのでありますから仕方ないのであります」
「なにさらっと名台詞っぽい言葉を使ってるのよ!!」
 吹雪の言葉にコルセアはさらに突っ込みを入れる。
「我々の注文の品を届けに来る配達人は大変だろうな」
 吹雪の言葉に、鋼鉄 二十二号(くろがね・にじゅうにごう)はご愁傷様と言いたげにぼそりと呟く。
「そこのポンコツも何共感してるの!」
 悲鳴に近い絶叫をコルセアは叫ぶと、疲れたかのように肩で息を整える。
「そんなに絶叫したら、体力が持たないであります。……あ、ジュースを頼むのを忘れていたであります」
 のんびりと吹雪はコルセアの突っ込みを流すと、リダイヤルでジュースの追加注文を頼むのだった。

 一方、吹雪の注文を受けた店内では――
ふふふーんと、鼻歌を歌いながら女子更衣室から出て来たのは、バイトの制服とアッシュホワイトの結い上げロングのウィッグ、碧色のカラーコンタクトを付けて変装したルカルカ・ルー(るかるか・るー)だ。更衣室と店内を繋ぐ廊下を歩き、店内へ入るドアを開けると、レジカウンターで店長とシャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)が何か相談しているのを見つけた。
「店長、シャウラ、おはようございます。……どうしたの? 二人で相談なんかして」
「ああ、おはよう……って、ルー君か。変装しているから誰だか判らなかったよ」
 店長は、変装したルカルカの姿を見た後でルカルカの制服に付いている名前を確認した。
「ところでなんで変装なんかしているんだい? 今日はこの後コスプレのイベントでもあったかな……」
「いえ、店長。ルカルカは国軍大尉なのでパラ実のモヒカン達に顔を覚えられている可能性があります。なので、変装をしてD級四天王のルゥとして仕事に励もうかと思っているのです」
 あまりにも真顔で言ってくるルカルカに、店長も少しだけ納得しかけた。
「普通さ、敵に顔を覚えられているのって少佐から上の方だよね。大尉ってその他大勢のモブじゃないか。ルー君が変装しなくても別に大丈夫だと思うよ」
「ルカルカの隊では、何度もモヒカン達と戦闘を行っているので顔を覚えられているのです」
 そう言う事にしたいと、ルカルカの表情が語っているのに気がついたシャウラは、店長の袖を軽く引くと、店長の顔を見て軽く頷いたのだった。
「……それで、二人で何の相談をしていたの?」
 これ以上言っても店長には理解できなさそうだ。と思ったルカルカは、話題を切り替えた。
「相談と言うわけでもないのだけど、今入ったお客様の注文が荒野だったんだよね。GPSで大体の場所は特定できたのだけど、店のバイクじゃ探すのに時間がかかるから瀬山君に行ってもらおうかって話をしていた所だったんだ。けどねー……」
 うーん。と店長が唸り、言葉を一旦切った。
「けど?」
 ルカルカは店長の言葉の続きを促す。
「瀬山君、今さっき宅配に出たばかりだから帰ってくるのを待ってられないんだ。誰か高速艇を所有している人をエピゼシー君に聞いていた所なんだよ」
「なら、ルカルカのS・インテグラルナイトで行ってきます」
「おおっ行ってくれるかい。ありがとう。じゃあ早速エピゼシー君、お客様の場所の地図をルー君に渡してくれないか」
「ルゥです」
ルカルカは店長の言葉に頷くと、店長の言葉のイントネーションに訂正を入れたのだった。