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死の予言者

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死の予言者

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 1 

 
 冬の日差しが暖かに降り注いでいる。
 往来には行商ののどかな声が響き、それとは対照的にせわしげに歩く人々の姿がある。
 その、師走も近い葦原の町をセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が葦原独特の和の雰囲気をたっぷり堪能しながら歩いていた。彼女達はちょっとした用事があって葦原をおとずれたのだ。
 不意に二人を呼び止める者があった。
「そこの娘さんや。あんたらは葦原の人じゃないね?」
 振り返ると、ボロ布のような衣をまとった老人が立っていた。こののどかな風景にはいかにもそぐわない不気味な雰囲気をかもし出している。
「あなたは?」
 いぶかしげにたずねるセレンに老人が答えた。
「わしは占い師じゃ」
「占い師? おもしろそう! 試しにあたしの事占ってくれる?」
 占い師と聞いて、セレンはテンションが上がる。女子とは占いが好きなものだ。
「はじめからそのつもりで呼び止めたのじゃ。お嬢さん、あんたの顔に死相が出ている」
「死相?」
「そうじゃ。気をつけなされ、8日後じゃ。8日後にお主は炎に焼かれて死ぬじゃろう」
「冗談止してよ。あたしは見ての通りぴんぴんしてるんだから」
 セレンは一笑に付した。
「信じるも信じまいも勝手じゃ。せいぜい気をつけるがよい」
 そういうと、不気味な老人は陽炎のように消えてしまった。
「消えた!」
 二人は驚いて顔を見合わせた。
「なんなの? 今の人は?」
 いぶかしげに首をかしげるセレアナにセレンは答えた。
「さ……さあ。だ……大丈夫よ。どうせインチキなんだから」
 しかし、内心では敏感に察知していた。あの老人がただのインチキではないかもしれない……と。
「セレン」
 心配げに見つめるセレアナ。しかし、
「大丈夫だからって。ホラ、早く行かないと日が暮れちゃうわよ」
 セレンは内心の焦りを押し隠して陽気に振る舞う。
 その時。
「あんたら、もしかして、あの老人に寿命の宣告をされたのか?」
 数名の商人が二人を囲むようにしてたずねた。
「ど……どうして知ってるの?」とセレン。
 すると商人達は「やっぱり……」とお通夜みたいな顔をする。
 その顔が二人をますます不安にさせた。
「あの占い師に何かあるのですか?」
 セレアナがたすねると、人々は気の毒そうに答えた。
「……気をつけた方がいいよ。あの占い師は、人の寿命を的中させるので有名なんだ」
「え?」
 二人の顔から血の気がひいて行く。
「あいつに予言された者は間違いなくその日に死んでるんだ。百発百中だって」
「そんな、まさか」
 唖然茫然愕然とするセレン。
「じょじょ冗談じゃないわよっ! あたしはまだ今年二十歳になったところよ? 人生で一番光り輝く季節に何で死ななきゃならないのよ? ふざけないでよっ!」
 セレンは喚いたり泣いたり怒ったりと妙に忙しかった。
 いくら身なりがアレ(全身図参照)とはいえ、これでも一応はシャンバラ教導団の軍人でもある彼女は数多くの修羅場で命のやりとりをしている。しかし、さすがに自分の死を予告されては動揺もするし泣いたり怒ったりもした。
「落ちついて、セレン。大丈夫よ」
 セレアナがなだめた。
「と、とにかく、あたしの死亡予定日は宿に1日中引きこもるわよ。そうすればなんとかやり過ごせるんだから」