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年忘れ恋活祭2022 ~絆~

リアクション公開中!

年忘れ恋活祭2022 ~絆~
年忘れ恋活祭2022 ~絆~ 年忘れ恋活祭2022 ~絆~

リアクション

「久しぶりだな、流水。今年も祭りを楽しもうか」
「ぴきゅっぴぃ(今年も見守るわたげうさぎなのだ)」
 一緒に来た仲間と別れ、後藤 又兵衛(ごとう・またべえ)は頭上に天禰 ピカ(あまね・ぴか)を載せて恋人の黒衣 流水(くろい・なるみ)に会っていた。
「一年が過ぎるのは早いわね。今日もよろしく」
 流水は再会を喜んだ。当然又兵衛も同じ気持ちだが、表情では分からない。
「…………よろしく、パパ」
 後藤 愛(ごとう・まな)は初めて会う父親に緊張気味に挨拶。
「そっちが話していた愛か」
 小さな声に又兵衛は愛に気付いた。数日前に祭りに行く打ち合わせをしていた時に流水から愛の事を打ち明けられたのだ。それまで知らなかったので大いに驚いたという。今も驚いている。聞くと見るとは大違い。
「……そうだよ、後藤愛」
 こくりと又兵衛にうなずき自己紹介。
「……愛、会えて嬉しいよ」
 又兵衛は屈んで愛と視線を合わせ、優しく微笑んだかと思ったら抱っこして高い高いをした。
「……パパ」
 又兵衛の行為に驚くもこの時代のパパに受け入れられたと分かって嬉しくなった。
 又兵衛に高い高いされている愛は又兵衛の頭上にいるピカと目が合う。
「ぴきゅぴきゅ〜(愛ちゃん、よろしくなのだ)」
 愛は明確にピカが何を言っているのか分からないが、ピカの声の調子から親しみを表している事がほぼ分かってにこにこ笑いかけた。
 再会と初顔合わせもそこそこに又兵衛と流水が初めてデートをした場所である遊園地に向かった。
 
 遊園地に到着するなり家族揃って仲良く食事をしたらアトラクションを楽しむ。
「パパ、一緒にあれに乗ろう」
 愛は又兵衛の手を引っ張って様々なアトラクションに連れ回した。元の時代では又兵衛は遠い所に行っていて手紙での交流しかしておらず顔も見た事がなかったから余計に今日という日が楽しくて堪らない様子。
「愛、これ食べてみないか」
 又兵衛もまた愛に優しくする。
「ぴきゅぴきゅう(今日は楽しいのだ)」
 頭上のピカは微笑ましい父娘の様子を楽しみながら隠し持っていた干し人参を囓っていた。青空が夕空になるまでたっぷりと遊び回った。

 町の入り口。

「……二人だけになったのだ。今年も一緒にお祭りを楽しむのだ」
 天禰 薫(あまね・かおる)は隣にいる熊楠 孝高(くまぐす・よしたか)に言った。又兵衛とピカは流水とデート中。
「……」
 恋人同士である事を自覚して貰おうと薫を誘ったもののいつもと変わらぬ様子に心の中で大きなため息と疲れが。まだ祭りは始まったばかりだというのに祭り最後の気分だ。
「孝高、どうしたのだ?」
 薫は疲れた顔をする孝高を見上げた。
「いや、何でも無い……行くか」
 孝高は表情を平静に戻し、いつもの調子で答え薫と一緒に祭りを楽しみ始めた。薫が超鈍感である事はもう分かっていた事だろうと自分に言い聞かせるが、恋人同士という自覚が無いのはやっぱり寂しかったり。とりあえず夕方まで賑やかに過ごす事にした。

 中央広場。
 祭りが開始してから時間が経ち、お客もかなり多くなっていた。

「これが記念のベルなんだね」
 桐生 理知(きりゅう・りち)は金のベルをくまなく眺め回しながら祭りに誘った辻永 翔(つじなが・しょう)に言った。
「確か同時に鳴らしたら共鳴するとか。やってみるか」
 翔は係員の説明を思い出していた。
 二人は早速、ベルを鳴らした。
「ほわぁ、綺麗な音だね」
「そうだな」
 響く不思議で素敵な音に理知と翔は感動した。
 その後、理知と翔は長い待ち時間も恋人の時間とした末クレープを買って食べたり『にゃあカフェ』で一休みをしたり特別製の空飛ぶ箒に乗ったり恋人割引で買い物をしたりして夜まで楽しんだ。

 大勢のお客に溢れどこもかしこも人混みばかりの中央広場。

「フリッカさん、見て歩く前に記念品のベルを貰いに行きましょう」
「ベル? カップルに配っているベルだよね。貰えるかな?」
 フィリップ・ベレッタ(ふぃりっぷ・べれった)フレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛ぃ)に記念品の金銀ベルを貰いに誘った。フレデリカは少しだけ心配をしていた。二人でいる事に慣れたとは言えまだまだ恋人としては初々しいフレデリカとフィリップ。
「貰えますよ。僕達……その、恋人なんですから」
 フィリップは顔を少し赤くしながら心配するフレデリカを励ました。
「……フィル君」
 フィリップの口から出た恋人に顔を赤くするフレデリカ。
 金銀ベルを無事に入手した二人は共鳴させ、音を楽しんだ。フレデリカは金のベルを一生の宝物とした。
 早速、祭りを歩き回るのだが、
「……改めて見ると人が多いね」
 人に溢れる通りにフレデリカは少し眉を寄せた。
「そうですね。フリッカさんはどこに行きたいですか?」
 今日はエスコートしようとフィリップは頑張る。
「フィル君と一緒ならどこでもいいわ」
 フレデリカは即答。場所などどうでも良い。最愛の人が隣にいれば。
「……そうですか。それじゃ、まずクレープ屋と猫カフェに行きませんか? 新商品やカップルケーキがあるそうですから」
 フレデリカの答えに嬉しくなるも目的地は設定しなければならないので自分なりのコースを作る。
「素敵ね」
 フレデリカはフィリップと一緒に食べる姿を想像して心がいっぱいになる。
「行きましょうか。その……いいですか? 人混みではぐれないように」
 出発する前にフィリップははぐれないように手を繋ごうとする前にフレデリカに聞く。いきなり繋いでフレデリカの気分を害してはいけないと思ったから。
「……いいよ」
 フレデリカの答えは決まっている。フィリップはしっかりとフレデリカの手を握り、クレープ屋『天使の羽』に向かった。長い待ち時間も二人なら苦にもならなかった。そこで『天使の羽』オリジナルベルを貰いフレデリカはますます嬉しくなり、『にゃあカフェ』で仲良くカップルケーキを食べて素敵な思い出を作り、夜まで存分に楽しんだ。