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【ですわ!】パラミタ内海に浮かぶ霧の古城

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【ですわ!】パラミタ内海に浮かぶ霧の古城
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序章 戦いの幕開け

 パラミタ内海を紫色の霧≪バイオレットミスト≫が視界を覆い隠す。そこへ突如現れた、アーベントイビスの黒幕であるコルニクスの潜む島。
 生徒達はその島の白い砂浜に上陸していた。
「ここから先は魔法少女以外は活動できません」
 魔法少女アウストラリスに変身したアイリ・ファンブロウ(あいり・ふぁんぶろう)が手を伸ばすと、掌が振れた空間がシャボン玉の表面のように虹色に歪む。
 鬱蒼と木々が茂るその不気味な森には、魔法少女以外の活動を制限する≪シャドウレイヤー≫が張り巡らされている。
「皆さん、こちらサインして準備をお願いします」
 アウストラリスが≪魔法少女仮契約書≫を取り出し、共に戦う生徒達に配り始めた。
 藤林 エリス(ふじばやし・えりす)は自身のパートナー達に契約書を回すと、魔砲ステッキを握りしめた。
「よ〜し、愛と正義と平等の名の下に! 人民の敵は粛清よ!」
 エリスは革命的魔法少女レッドスター☆えりりんとして、闘志をたぎらせる。
「二人とも準備はできた?」
「私は大丈夫よ」
 振り返ると、アスカ・ランチェスター(あすか・らんちぇすたー)が露出度の高いセクシーな黒いドレスに身を包んでいた。
魔女っ子アイドル、あすにゃん参上♪ 悪い人はお仕置きだよ☆」
 男が思わず生唾を飲み込むような衣装。
 すぐ隣でも、マルクス著 『共産党宣言』(まるくすちょ・きょうさんとうせんげん)が魅力的魔法少女衣装に変身を終える。
禁断の赤き魔道書、ミラクル☆きょーちゃん! いつでもいけます!」
 スタイルの良さが見て取れる、チャイナドレス風の魔法少女衣装。
 多種多様な生徒達の魔法少女姿は、さながら珍妙なファッションショーのようでもある。
 そんな白銀の砂浜から離れた岩陰に、桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)は身を隠していた。
「ここなら大丈夫だな……エヴァっち、女装の件頼む」
「あいよ、任せておきな」
 エヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)は、煉の女装を手伝い始める。
 煉は島に乗り込むため、やむなく魔法少女になることを決意したが、さすがに変身後の衣装を着て行動するのは恥ずかしい。
 せめて、マシな形に……できれば気づかれないくらいに変装して……頼むぞ、エヴァっち。
「あっ、あんまコッチ見んなよ」
 エヴァはヒミツの補正下着と胸パットの調整を終え、ウィッグを直してくれていた。よく見ると、その顔が赤く染まっている。
「悪い……」
「ちょ、どこ向いてんだ! 正面じゃなきゃ、化粧ができないだろ!」
 ……見えるなと言ったのに、どうしろというのだ。
 結局、正面で目を瞑って待つこと数分。
「出来たぜ」
「またこの恰好になろうとは……」
「いい加減諦めろよな」
 エヴァの手伝いで魔法少女へ変身を完了させた煉。
 鏡には、黒の風紀委員制服をベースにした魔法少女衣装を着る凛々しい女性の姿が映っていた。
「よし、風紀少女マジカルエヴァ準備完了っと」
 変身を終えたエヴァも、自身の姿に問題がないかチェックする。
「そうだ、レン」
「なんだ?」
「今回はビシッと名乗りを決めるんだぜ」
「……善処する」
 煉の表情がどんより重くなる。

「それじゃあ、わたし達は先に行くね」
 生徒達全員が魔法少女およびマスコットへの変身を完了すると、古城を目指す魔法少女ポラリス遠藤 寿子(えんどう・ひさこ))が先に出発することになった。
「気を付けてください」
「うん。アウストラリスも気を付けて!」
 アウストラリスに手を振ると、ポラリスは生徒達と共に≪シャドウレイヤー≫の中へ飛び込んでいった。
「さて、皆さん」
 残った生徒達に向き直ったアウストラリスは、真剣な眼差しで面々を見つめる。
「私達は塔の攻略に挑みます。ですが――」
 アウストラリスは魔法のタクトで砂浜に、楕円状の島の縮小図を描いた。
「この島のどこに塔があるか、まだわかっていません」
 調査報告書には、四つの塔で≪バイオレットミスト≫を生み出す儀式が行われているらしいと書かれてた。
 だが、その場所までは記されていなかったのである。
「ですので、この霧の中で大変だと思いますが全員で分散して――」
待って!
 ふいに、波の音に混ざって女性の声が聞こえた。
 全員が振り返ると、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が極寒の海から上がってきているところだった。
「塔のだいたいの場所ならわかるわよ。あたし達、調査団に加わって島に乗り込んでたの」
「セレンの言う通り、けど急に体が自由が効かなくなってきて、咄嗟に海へ飛び込んだのよ」
 セレンフィリティの背後から、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)も体についた海藻を落としながら歩いてきた。
 唇を紫色にした二人は、生徒達が起こした火で温まりながら、調査でわかったことを伝える。
「ごめんね。三つまでが限界。それも正確な位置まではまだだったの」
「いいえ、ありがとうございます。後は任せて――」
 アウストラリスが立ち上がろうとすると、セレンフィリティがその手を掴んだ。
「何言ってるのよ。今は人手が欲しいんでしょ。だったら、あたし達だって働くわ。文句なんて言わせないわよ?」
「……すいません」
 セレンフィリティとセレアナも契約書にサインをして、魔法少女となる。
「皆さん――行きましょう」
 アウストラリス達は四チームに分かれて、それぞれの塔を目指した。