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【ですわ!】パラミタ内海に浮かぶ霧の古城

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【ですわ!】パラミタ内海に浮かぶ霧の古城
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 グラキエス達が戦っている間に、他の月詠 司(つくよみ・つかさ)達は逆側の支柱を狙っていた。

 魔鎧能力が残しされたまま、魔法少女契約を交わしたアイリス・ラピス・フィロシアン(あいりす・らぴすふぃろしあん)
「……向こう、順調……」
「そうですね。私達も頑張りませんと」
 赤い包帯のアイリスを纏ったネコ姿の司は、少々不気味な感じだった。
 二人が話をしていると、司の口を使ってミステル・ヴァルド・ナハトメーア(みすてるう゛ぁるど・なはとめーあ)が話に入ってくる。
「『なぁ、ツカサ。もっと前に出ようよぅ。ここじゃつまんないじゃんかぁ』」
 体に寄生しているミステルは、包帯の隙間から伸びた腕の代わりになっている樹海の根で、司の猫の髭を引っ張る。
「いたっ、いたた……無茶いわないでください。この姿で出来ることは限られているんです。ここは仲間と協力して確実に――
『暴れさせてくれる約束だったじゃん!? 一回ぐらい死んだって構いやしないって♪』
いやいやいや、死んだら駄目だって!?」
「……ツカサ……護る……」
「『ほら、アイが護ってくれるらしいしぃ。大丈夫じゃね?』」
 ミステルは引っ張る本数を増やして抗議した。
 止めさせることができず、あまりの痛さに涙目になる司。
「わ、わかりました。でも、本当にまずい状況になったら下がりますからね。
『やったぁー! じゃあ、さっそく派手に暴れさせてもらうよ!』」
 ミステルは鉤爪状の刃になった黒い茨の蔦(樹海の根)で敵を斬りつける。
 司は敵の動きを見てうまく立ち回り、アイリスの負荷をできるだけ減らそうと戦った。
 そんな司達の動きを確認しながら、後方の非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)に指示を出す。
「司さんが前に出るみたいです。アルティアさん、援護に入れますか?」
「はい。お任せください」
 アルティアが【神降ろし】で能力を上げ、御札を取り出す。
「あと、ユーリカさんは司さんを巻き込まないように注意してください」
「万事了解ですわ」
 続いて指示を受けたユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)が、ワンドを掲げてみせた。
「イグナさんは――」
 最後の指示を出そうとした時、目の前に敵の魔法が迫ってきた。
 隙をつかれ、動きにくいヌイグルミの姿になった近遠に回避は間に合わなかった。
「――!?」
 直撃を覚悟して目を瞑るが、衝撃はなかった。
 ゆっくりと開いてみると、騎士の鎧に煌びやかな布で装飾を施した格好をしたイグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)が立っていた。
 イグナは盾を構えたまま、首だけ振り返る。
「我は皆の盾と敵の分断、で問題ないな?」
「お願いします」
 イグナは頷き、敵前へ飛び込む。
「貴公らに我が仲間はやらせん!」
 敵が再び魔法を放とうとする。それを近遠が吹雪を巻き起こし、妨害する。
 視界を奪われた敵はがむしゃらに魔法を放つ。
 狙い定まらぬ攻撃の間を抜け、イグナは業火の剣で敵を斬りつけた。
「追撃だ!」
「裁きの光を受けるのですわ!」
 ユーリカの放った激しい光の雨が、降り注ぐ。
「雨に打たれて冷えたでしょう? でしたら、お熱いのはいかがですの?」
 闇夜の炎が敵を覆い尽くす。
 無邪気に放たれる更なる攻撃に、敵の戦力が削られていく。
 一端、距離をとり仲間を護れる位置に移動するイグナ。
 すると、周囲に黄金の粒子が飛び交う。
「イグナさん、お体は大丈夫ですか?」
「ああ、これくらいなら問題ないだろう」
 飛び込んだ際に受けた傷が、アルティアによって癒される。
「えっと……魔法少女CQCパート6!」
 司が体に巻きついた包帯を【サイコキネシス】で動かして、狩人を締め上げた。 
「司さん、行きますよ」
 そこへ、近遠が【ファイアストーム】を叩き込む。
 燃え盛る狩人――と、燃え盛る包帯&司。
「うわっ、あちちっ!?」
「大丈夫ですか?」
「い、一応、私は……」
「……大丈夫……治して、もらえる……」
 包帯(アイリス)がボソボソと呟いていると、アイドルのような煌びやかな衣装で人目を引きながらアルティアが走ってくる。
「お待たせいたしました」 
「……ありがとう……」
「いいえ、お気になさらず」
 アルティアは額の汗を拭うと、急いでアイリスの回復を行い始めた。
 そんな時、傍らでカメラのシャッターが押された。
「う〜ん、個性豊かな魔法少女がたくさんっ! アイも満足してくれそうだわ!」
 満足げなシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)は、次々と魔法少女になった生徒達を撮影していく。今の所、彼女が参加している気配はない。
 パートナーの司は皆に申し訳なく思った。
「シオンくん、いつまでもカメラを握ってないで、皆さん一緒に戦ってください」
「ええ〜、しょうがないわね。じゃあ、ツカサ。魔法少女CQCパート7で行くわよ」
 シオンの合図で、二匹のアンデッド:包帯ネコが治療中の司に近づいてきた。
 そして司の包帯を掴むと、思いっきり――
「うわっ!?」
 敵中へぶん投げた。
 頭を地面から引っこ抜いて振り返ると、シオンとアンデッド:包帯ネコが笑顔で手を振っていた。
「魔法少女CQCパート7……たしか私とミステルくんで敵を引きつけるんでしたよね。
『ま、そういうこと……でいいんじゃん?』
え、何ですか、それ?」
 ミステルの曖昧な返事に戸惑う司。
 しかし、敵はそれは待ってくれない。
「『ほら、きたきた☆ 一気に叩くよぉ〜♪』」
 続々向かってくる狩人の剣を避けながら、ミステルが炎と雷が刃を繰り出す。
 すると――
「魔法少女CQCパート7!」
 背後から聞こえるシオンの声。
 ゴォォォォォ!!
 と何やらやばそうな音。
 振り返ると、炎と雷が混ざった巨大な塊が目の前に迫っていた。
「うぎゃああああああああああ!!」
 狩人達ごと呑みこまれる司。
「い、今、手当てをいたします!!」
 駆けつけたアルティアは、慌ててほぼ消し炭状態の司を治療しはじめた。
「『綺麗に燃え尽きたじゃんか』」
「ツカサの丸焼きね」
「……ロリコン、滅却……」
「え?」