校長室
【ですわ!】パラミタ内海に浮かぶ霧の古城
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再三の勧告を終えたルカルカ・ルー(るかるか・るー)は、マイクのスイッチを切ると深く息を吐いた。 「ふぅ……これで妃美達は方はどうにかなるよね」 すると、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が視線をノートパソコンの画面を向けたまま話しかけてくる。 「よくあんな嘘がつけた物だ」 「だって、そうしないと収まりそうになかったんだもん」 ルカルカは小さく舌を出して笑う。 「それでダリルの方はどうなの?」 「こっちは駄目だ。一応持ち帰るが、有益な情報は期待できないだろうな」 ダリルはを飛空艇の端末からデータを引き出していた。しかし、≪バイオレットミスト≫や≪シャドウレイヤー≫に関する情報は得られなかった。 「そっか。じゃあ、あとルカ達がやるべきことは、飛空艇を着陸させるだけ――え?」 飛空艇の操縦に移ろうとしたルカルカの目が見開かれる。 彼女が目にした物。 それは、端末に表示された真っ赤な文字。 『WARNING!!』 それが艦橋にある全て端末に表示されていた。 「ルカ、上だ!」 「――!?」 ダリルの叫ぶ声に見上げようとしたルカルカは、背後から身体を引っ張られた。 次の瞬間――目の前の空間が光に飲み込まれた。 「……大丈夫か?」 「ダリルこそ!?」 腰に手を回され、抱きかかえられたルカルカ。 ダリルは飛空艇外に吹き飛ばされぬよう、もう片方の手で出っ張り部分を掴み、そして背にはルカルカを護って受けた無数の金属片が刺さっていた。 「掠っただけだ。それよりあれを見てみろ」 ダリルは首だけで、光が駆け抜けて吹き抜けとなった天井を示す。 そこには彼らの乗っている巨大飛空艇と同型の物が数機。それと、銀色の龍を模した飛空艇が滞空していた。 「敵の増援!?」 「霧の中にでも隠れていたんだろう」 その時、飛空艇が大きく揺らいだ。 「まずいな……」 ダリルの背から流れた血が、吹き抜けの床を目指し進みだした。 傾いた飛空艇が、ゆっくりと海面に向かって降下し始めたのだ。 「祖母ちゃん、急いで! こっちに脱出用の飛空艇があるから!」 祖母との再会を祝うのも早々に、弓彩 妃美と生徒達は救助者と共に、脱出用飛空艇が置かれていた最初の場所を目指していた。 体力が衰えている人々を支えながら到着してみると、兵士達が集まっていた。 「どいて!」 妃美は兵士達を押しのけ進む。 すると―― 「うそ、どうしよう……」 出口が大量の瓦礫で塞がっていた。 飛空艇のほとんどが瓦礫に押しつぶされながらも、一つだけ使えそうなのがあった。しかし、出口となる場所が塞がっている。これでは全員を連れて脱出することができない。 扉から一人一人連れ出すには、時間がかかりすぎる。 やはり、脱出用飛空艇を使うしかない。 その時、突如轟音と共に天井に、大穴が開いた。 「満を持して登場であります!」 「みんな無事?」 天井をぶち抜いて現れたのは葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)とコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)だった。 目を見開いて驚く妃美。 すると、再びの砲撃で飛空艇が大きく揺れる。 「迷ってる暇はないわね。みんな、ここから脱出するわよ!」 「ん、んん。よくわからないでありますが、了解であります!」 敬礼する吹雪に、妃美は簡潔に説明する。 そして、ギリギリまで収容した飛空艇を、全員で持ち上げる準備をはじめた。 「なんでエンジン部分が壊れてるよ! ちゃんと整備しときなさいよ!」 妃美達が苦戦してると、清泉 北都(いずみ・ほくと)達外部で戦っていた生徒も駆けつける。 「僕達も手伝うよ! 救助者はこれで全員!?」 「そう! 収容してたのはこの飛空艇だけみたい!」 ゆっくり引き上げていては引っかかる恐れがある。 生徒達は武装やスキルを駆使して、一斉に救助者と兵士の数十人が乗り込んだ脱出飛空艇を持ち上げる。 そんな無防備は生徒達を、上空の敵が見逃すはずはない。 銀色の龍が口内に取り付けられた大口径の銃口を向けてくる。 すると、龍と生徒達の間に、リネン・エルフト(りねん・えるふと)達『シャーウッドの森』空賊団が立ち塞がった。 「ヘイリー! フェイミィ! 砲撃を私達に引きつけるわよ!」 「もちろんよ!」 「任せな!」 リネンの両脇をヘリワード・ザ・ウェイク(へりわーど・ざうぇいく)とフェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)が固める。 そして、ヘリワードがリネンに指示を出した。 「リネン、派手に決めるわよ!」 「わかったわ。リネンよりイーリへ、砲撃支援をお願い。場所は……」 リネンが座標を指示すると、砲撃が敵の飛空艇を直撃した。 それは、霧の中に隠れていた仲間の空賊船からの物だった。 「【『シャーウッドの森』空賊団】の戦い方を見せてあげるわ!」 パラミタ内海上空に集まった団員と共に、ヘリワード達は敵飛空艇に向かって行った。