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【ぷりかる】みんなの力で祖国を救え!

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【ぷりかる】みんなの力で祖国を救え!

リアクション

「警告警告! モンスターがこちらに接近中! 臨戦態勢に入ることをオススメします!」
 壁抜けの術で周囲を警戒していたブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)が広間にいたコントラクターたちに警鐘を促す。
「スコリア! ここは僕たちで食い止めるよ!」
「うん!」
 ブリジットの警告にユーリ・ユリン(ゆーり・ゆりん)フユ・スコリア(ふゆ・すこりあ)は武器を構える。
「ブリジットさん、敵の数と到着する時間は分かる?」
「モンスターの数は中型が5体。あと三十秒ほどで我々がやってきた方向から接近中です」
 説明をしていると、二足歩行のモンスターたちは狭い廊下を縦列状態になりながらこちらに接近しているのが見えた。
「ワタシはここから発砲して敵の戦力を削ぎますので、残りをお願いします」
「うん、分かった」
 ユーリが頷くと、ブリジットはマスケット・オブ・テンペストを構えてモンスターたちに向けて引き金を引いた。
 瞬間、長い廊下で魔法の嵐が吹き荒れる!
「ッッッギャアッァアアアアア!!!?」
 その身を嵐に切り裂かれたモンスターは悲鳴を上げて床に倒れるが、後方にいた三匹はほぼ無傷で広間まで到達してしまった。
「やらせないよ!」
 ユーリは飛びかかってきたモンスター一体に向かってファイアストームを浴びせた、
「ッッガアアアアア!?」
 火だるまになったモンスターは地面を転げ周り、炎が消えずにもがき続ける。
 残る二体は真っ直ぐにスコリアを狙い、一匹がスコリアの頭を狙って丸太のような腕を横に薙ぎ払った。
「そんな攻撃当たらないよ!」
 スコリアは咄嗟に膝を曲げて姿勢を低くすると、頭上で空を切るような轟音が耳に届く。
「隙有りー!」
 スコリアはそのままの体勢でさざれ石の短刀を逆手に持つと、モンスターの胴を薙ぎ払いながら脇をすり抜けた。
「があああ……!?」
 斬りつけられたモンスターは徐々に身体を石にして、やがて不気味な石像となってしまう。
「ガアアアアアア!」
 残る一体はその隙を狙っていたかのように体勢の崩れたスコリアに対して両腕を乱暴に振り下ろす。
「援護します!」
 防御の態勢を取っていたスコリアの前にホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)が割って入り常闇の帳を展開する。
 ホリィの前に漆黒の闇が広がり、モンスターはその闇に向けてそのまま両腕を振り下ろすが、両腕の衝撃は闇に吸いこまれてしまう。
「ウッッァッガッッッッアアアアア!!」
 モンスターはヤケクソのように腕を振り回すがそのことごとくを闇が吸収し、威力を殺してしまう。
「無駄です! その程度の攻撃じゃこの闇を貫くことは出来ませんよ! スコリアさん、今のうちにトドメを刺して下さい!」
「うん、ありがとう!」
 スコリアは礼を言うと、短刀でモンスターの胴を切り裂いた。
「グオオオオ……!」
 モンスターの身体は徐々に石に変わっていき、二体目の石像が広間に出来上がった。
「戦闘終了ですね。こちらの損傷はありませんし、後は扉が開くのを待つだけですね」
「もう開いてるアルよー!」
 ホリィの言葉にチムチムが声を上げる。
「ククク……ご苦労だったな。さあ、後ろにいるがいい。今からわしが扉にトラップがないか探してやろう」
 夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)はそう言ってチムチムを後ろに下がらせるとディテクトエビルでトラップのような邪悪な存在がないか探し始める。
「……ふむ、危険なものは無いようだな……では進むとしよう」
 甚五郎が扉を開けると、いくつもの狭い分かれ道が広がっており、さらにその先で枝分かれしているうえに上下の階段まで顔を覗かせている。まるで幽霊城が本気を出し、侵入者の存在を受け入れていないようにコントラクターたちの目には映った。
楊霞はそんな廊下を見て、甚五郎の肩に手を置いて動きを止める。
「お待ち下さい甚五郎様。まだここが正しい道だとは限りません、あと二つの扉も調べないと……」
「それなら問題ない、オリカはこっちに向かって行ったようだ」
 そう言ってきたのは草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)だった。
「羽純様……? どうしてそのようなことが?」
「扉の先にある床を調べた。どうやら、オリカがここを通った跡があるのだ……だが」
「だが、なんですか?」
「この先、歩いたかどうかの形跡が確認できなかったのじゃ。念のため、サイコメトリを床に掛けてみたが分からなかったしのぅ」
「サイコメトリは物品に使用するもの、と聞いております。建物など広範囲に亘るものに使用しても効果は得られないかと愚考いたします」
「ふむ……だが、この道の先からは得体のしれない悪意のようなものを感じるぞ」
 羽純と楊霞の遣り取りに、道の先を警戒していた甚五郎が一言付け足すと、クククと笑い始めた。
「しかもこれだけの分かれ道があれば探すのはさらに困難を極める……面倒なことだ」
「だが、分かれ道にも特にこれといった目印は無いようじゃ。……さすがにこれだけの分かれ道があっては龍騎士たちも容易には目的地まで辿り着けぬような気もするがのぅ」
 ふむ、と羽純と甚五郎が腕を組み熟考を始める。この分かれ道の数では
「ひょっとすると、この道が全てフェイク。というのは考えられないでしょうか?」
 楊霞がなんとなく、そんな考えをそのまま口にすると甚五郎が感心したような顔をする。
「なるほど……それなら、目印のようなものが無いのも頷ける。扉を開けた近くにある隠し扉の存在を一つ知っていれば、目印の必要性はないじゃろうからのぅ」
「ですが、目印が無いのでは結局隠し扉がどこにあるのかも……」
「それなら私に任せてくれないかな?」
 楊霞たちが手詰まり状態になっていると、天野 木枯(あまの・こがらし)が前に出た。
「木枯様には何か秘策があるのですか?」
「秘策って程じゃないけど……まあ見てて」
 そう言って木枯は超感覚と野生の勘を使い周囲を隈無く観察し始める。
「……石の壁から冷たい空気が流れてきてるね……どこか、隙間が空いてるんじゃないかな?」
 木枯は壁に手をついて、慎重に風が送られてくる場所を辿っていく。
「……ここみたいだね」
 床に手を置いた木枯が石造りの床に指を入れて思いっきり引っ張ると、石の床が剥がれ、下から階段が現れた。
「なるほど……歩いた形跡が消えていたのはこれが原因か」
「逆に言えば、オリカ様がここを確実に下りて行ったとも言えますね。木枯様、ご助力感謝致します」
 楊霞がペコリと頭を下げると、木枯は照れくさそうにはにかんだ。
「そこまでだ! 貴様たち、そこで止まれ!」
 コントラクターたちが階段を下りようとしたその時、背後から声をかけてきたのは堅固な鎧に身を包んだ従龍騎士たちが立っていた。
「これ以上、この城の中をうろつくのであれば力づくで出て行ってもらおう! これもオリカ様のためだ。許せ……!」
 従龍騎士たちは悲壮感漂う表情で鞘から剣を抜き放ち、切っ先をコントラクターたちに向けた。
「どうも、あの人たちはテミストクレスに無理やり従っているみたいですね」
 天野 稲穂(あまの・いなほ)は呟きながらそう確信する。
「おそらく、下に行けばオリカ様が囚われていると思うのですが……素直に行かせてくれそうにないね。……どうする稲穂?」
 木枯が訊ねると、稲穂は刀を抜いた。
「私が足止めするからみんなは先に言ってオリカさんを助けてあげて」
「稲穂様! それでは、あなたが……!」
「大丈夫だよ楊霞さん、時間を稼ぐだけだから。だから……早く行って!」
 叫ぶなり稲穂は疾風迅雷で従龍騎士たちに接近すると、死角に回りこみブラインドナイブスを喰らわせた。
「ぐぅ……!」
 刀は鎧で弾かれるが、衝撃が鎧の中まで走り従龍騎士は低く唸る。
「貴様!」
 敵に背を向けて他のコントラクターを追うわけにいかず、他の従龍騎士も稲穂に剣を向ける。
「早く行こう! オリカさんを探さないと!」
 木枯が叫ぶと、他のコントラクターたちも背中を押されるように階段を駆け下りた。
 まるで地獄まで続いているかのように長く深い階段を下りていくと、扉のない入口が一つ口を開けており、そこを出ると、
「これが……オリカ様?」
 楊霞を含めた全員が息を呑んだ。
 オリカが捕らえられていることは全員が知っていた。が、誰が想像できただろうか。
 ──氷柱の中に囚われ、その氷柱の周囲を太い鎖で巻き付けられた石像の光景など。
「テミストクレスがどれだけオリカ様を危険視していたか分かりますね……ひとまずではありますが、これで従龍騎士の方々も無理に戦わなくて済みますね」
 楊霞がオリカに近づこうとすると、再び背後から物音が聞こえ稲穂と従龍騎士たちが地下まで下りてきた。
 オリカの姿に龍騎士たちは剣を落とし、呆然と見上げた。
「オリカ様……! こんなところに……!」
「オリカ様はこちらで保護させていただきます。もう、あなた達がこちらに刃を向ける必要は無いと思いますが?」
「……確かにその通りだ。先ほどの非礼はお詫びする。……我々は仲間にこのことを伝えて君たちの仲間に助力しに行こう。それまで、オリカ様を頼む」
「はい、任せてください」
 楊霞が答えると、従龍騎士たちはコントラクターに深々と礼をすると、再び階段を上がっていった。
 氷柱に囚われたオリカの表情が心なしか安らいだように見え、コントラクターたちはひとまず、安堵のため息をつくと鎖を外す作業に取り掛かった。
「この人がオリカさんか……ソフィアさんのお母さんなのに、お姉さんにしか見えないね!」
 鎖を外しながら、氷柱の中を見ていたユーリがそう呟いた。
 オリカはソフィアと同い年くらいの美少女だった。