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ようこそ! リンド・ユング・フートへ 4

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リアクション

「そろそろ船が出港するわよ! さぁ、皆で幸せの歌を合唱して、気持ちよく彼らを送り出しましょう〜♪ 」
 波止場をゆっくりと離れて沖へ向かいだした「あけぼの号」に向かい、ラブの先導によって全員が幸せの歌を輪唱する。
 チルチルとミチルも加わって、新しい世界へ旅立つ彼らへのたむけとして心から歌っていると、小さく何かが聞こえてきた。

 それに最初に気付いたのはミチルだった。
「お兄ちゃん、何か聞こえてこない?」
「ん?」
 耳をすますと、たしかに海の向こうから声が……。

 それは、まるで深い谷底、海の底から沸き起こる音。さまざまな声、言葉。
 何と言っているかまでは分からないけれど、それが歓喜と希望、祝福の輝きに満ちたものであることはあきらかだった。

「きれいねえ」
 ほうっとミチルがため息をつく。
「母親が歌っているのよ。生まれてきてくれてありがとう、って。……多分」
 鈿女が言う。
「そっか。
 なあ。本当に青い鳥、ここにはいないのか?」
「どうして?」
「だって……もしいたら……捕まえられたら、あいつ、死ななくてすむかもしれねーだろ? 俺たち、しあわせになるんだから!」
「それは……でも」
「知ってるのか!? なら教えてくれ! 青い鳥はどこにいるんだ!!」
「えーと……まぁ、知っているような知らないような…」
 ごにょごにょと。
 口ごもる鈿女に何か隠し事を感じて、チルチルは叫んだ。
「いいから言ってくれ!!」


「ここだ! ここにいるぞ! 少年!」


 突如大広間じゅうに響き渡る雄声。

 あああ……と手に顔をつっぷした鈿女以外全員が声のした方を振り返る。
 そこにいたのは、巨大な……巨大な…………(ええと)


 巨大な、コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)ブルーバードバージョンだった。



「ピピピーピピピーピーチクピー」


「お、お兄ちゃん……あ、あああああああれってもしかして…?」
「考えるな、考えるんじゃない。考えると何かが崩壊するぞ!」
 きっとたぶん。


「ピチッチピチッチピピピピピー」


 油汗をたらたら垂らしているチルチルとミチル――というよりもうまるっきり健勇とピュリア――の前、コアは素知らぬ顔で鳥の鳴き真似をしているが、その青い鳥の真似した外見同様、かなりおそまつだ。(大人の男が裏声使って鳥の鳴き真似してると想像してください)

 みんなドン引き。


 ざわざわ、ざわざわ。
 ざわざわ、ざわざわ。
 赤ちゃんたちもどう反応していいか、かなりとまどっている。
 多分逃げるべきなんだろうけど、向かってくる気配も攻撃してくる気配も見せないので、反応のしようがないのだ。


 一生懸命首を振り、羽根っぽい手をばたつかせて鳥真似をしていたコアだったが、さすがにそろそろ空気がおかしいことに気付きだした。
 どよ〜んとして、だれもみんな笑っていない。

「………………」

 何やら腰のあたりでゴソゴソし始めたと思ったら、鳥の羽を取り出して、ペチッと額に貼りつけた。
 どうやら、自分は青い鳥である、という無言の主張らしい。
 そして再び始まる

「チチチチチチチチ、ピーチクピー」


「おいおまえら! あれ、おまえらのパートナーだろ!? なんとかしろよ!」
 口角泡吹き、指突きつけて叫ぶ健勇。

「あーあーあー、聞こえなーい」(ラブ談)
「青い鳥が欲しかったんでしょ、青い鳥が。よかったわね、ご希望の青い鳥じゃないの」(鈿女談)

「開き直るな! あれのどこが青い――」
 と、そこで健勇は背後からものすごい威圧感を感じ取った。それはもう、あまりのすごさに言葉が出なくなってしまうほど。
 コア・ハーティオン、ブルーバードバージョンが、ぴったり距離を詰めて彼の背後に立っていた。

「あ……青い……とり……さん…?」

 コア、こっくり。
 さあ連れて行け、とばかりに健勇を見下ろす。
 ゴゴゴゴゴゴゴ……と地底から響いてくる、地鳴りのような圧迫感。


 この青い鳥に、ご利益ははたしてあるのか!?


「は、はは、ははは…。
 この世に悪の栄えた試しなし! ここには「正義の心」を持って生まれてくる子だってたくさんいるんだぜ?」
 健勇は涙目で握りこぶしを突き上げた。

 ――現実逃避ですね、分かりますん。