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四枚の贋作

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四枚の贋作

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第1章 犯人は誰だ?

 金元なななの指示の下、美術館はただちに閉鎖された。
「このアホ毛が告げているよ。犯人は近くにいる!」
 ただの寝癖にも見える髪の毛をひょこひょこさせて、なななは言い張った。
 そんな彼女の主張にも、根拠がないわけではない。
「なななさん。そのデータを見せてください」
 堀河 一寿(ほりかわ・かずひさ)が受け取ったデータを参照する。絵画が飾られるまでの工程を見る限り、外部の人間が手を加えることはほぼ不可能だ。
「犯人は関係者。そう考えて、間違いなさそうですね」
 ヴォルフラム・エッシェンバッハ(う゛ぉるふらむ・えっしぇんばっは)の言葉に、一寿は荒々しくうなずく。
「うん。時間的に考えても、犯人は遠くまでいけないはず」
 ふだんは穏やかな一寿が苛立っているのは、愛する芸術を、犯人によって冒涜されたからだ。
「僕たちは、この事件を解決しなければならない」
 なななに向き直って、一寿が厳かに言った。
「あなたは正義を愛する者として。僕は芸術を愛する者として。力を合わせ、冒涜者に鉄槌を下しましょう!」

 そこへ、いち早く入口の封鎖に赴いていたコード・イレブンナイン(こーど・いれぶんないん)が戻ってくる。
「警護に抜かりはない。スペアボディを置いて、「誰も出すな」と命令したからな」
「ルカたちの【動く肖像画】も 飾っておいたよ!」
 別方向から、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)が駆けつけて言う。
 これで監視は万全だ。
「でもあれだね。美術館に自画像を飾るのって、ちょっと照れるかも」
「いいなぁ。なななも飾られてみたい!」
 などと言いつつ、変なポーズで固まるななな。
「見て! 題して、『宇宙意志を受け取る美少女の像』だよ!」
「馬鹿なことをしている場合ではない」
 コードが冷静な声でぴしゃりと言った。しゅんとするななな。
「俺は犯人を憎んでいる。せっかくの芸術鑑賞を、邪魔されたのだからな」
 絵のなかへ取り込まれないよう、遠くから贋作『ひまわり』を見つめながら、彼はつぶやく。
「……しかし。あの絵もまた、侘び寂びがあって良いかもな」
「なかなかよい鑑賞眼をお持ちですねぇ」
 一寿が、コートに話しかけた。
「コードさんにはぜひ、本物の芸術を見て貰いたい」
 みんなを見回しながら、一寿は告げる。
「絶対に犯人を捕まえましょう。奴はまだ、この近くにいるはずです」