天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

真・パラミタレンジャー結成!

リアクション公開中!

真・パラミタレンジャー結成!

リアクション



第4章 「対決! イエローVSピンク」の対決

 D棟は、どのプラントよりも大きかった。
 建物の大きさに反して、召喚獣はいままでの中で一番小さい。
 というよりも。その姿を視界に映して捉えることができなかった。
 幻獣ミラージュは、不定形の存在だからである。敵はプラント内に立ち込める、すみれ色の霧に紛れ、静かに息を殺していた。

「人質は俺が助ける!」
 イコンヨクを操縦するコード・イレブンナイン(こーど・いれぶんないん)が、怒りを押し殺すように言う。彼は同じ機晶を命とする者として、機晶姫への連帯意識が強かった。
「その意気だよコード! でも、気負いすぎないでね」
 サブパイロットとして乗り込んだルカルカ・ルー(るかるか・るー)が、優しく、かつ力強い声で告げた。
「イコンの操縦はバランスと思い切りが大切よ。私がサポートするから、どーんとやっちゃって!」
「サンクス。頼んだぞ!」
 頼れるパートナーの励ましに、コードから肩の力が抜ける。鋭い眼光で構える彼の表情には、初めての実践による緊張など微塵も無かった。

「しかし。これだけの霧だと、敵の姿が見えませんね」
 スフィーダ飛行形態ファスキナートルの操縦席で、富永 佐那(とみなが・さな)が目をしかめた。幻覚作用のある霧の奥、鎖で繋がれた二体の巨大ロボットがうっすらと見える。
 だが、いくら目を凝らしても、ミラージュの姿は視覚できない。
「なんとか感知しましょう。スキルを駆使すれば、必ず見つかるはずですわ」
 エレナ・リューリク(えれな・りゅーりく)が物静かに言った。彼女はまず、【ディテクトエビル】を使い周囲を警戒する。
「十一時方向上方……敵の気配を感じますわ」
「まかせてください」
 エレナの指示した方向へ、佐那はすかさずイコンを転換させる。迎撃に備えるファスキナートル。
「いつでもかかってきなさい」
 キリッとした表情で、身構えた彼女たちの前に。
 なんと、巨大な戦艦が突っ込んできた。


「さて。派手にやってみるであります!」
 鼻息あらく言ったのは、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)だ。彼女の操縦する機動要塞伊勢が、プラントの天井に食い込んでいる。
「……後で少佐に怒られても知らないわよ」
 サブパイロットのコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が肩をすくめていた。パートナーの強引な作戦に、やれやれといった様子である。
「なあに、このくらい派手なほうが景気いいであります! 豪快にいくでありますよ!」
 吹雪の豪放磊落な笑い声が響くたび、天井からは瓦礫がパラパラと散った。


 型破りな作戦だったが、効果はあるようだ。霧のなかに明らかな動揺が生まれる。
「コード! 敵は向かいの壁沿いを移動しているわ」
 ルカが【行動予測】を使い、確実に敵の動きを捕捉する。コードは無駄のない動きで【マジックカノン】を放った。
「よしっ」
 弾丸は敵を仕留めたかに見えた。
 しかし、ミラージュは体をぐにゃりと歪ませ、直前で回避する。
 巻き上がる爆風に紛れ、敵はまたしても姿を消した。

「コードさん。敵は背後に回りこんでいます」
 魔道レーダーで気流を読みながら、佐那が告げた。
 指示を受けたコードはすぐに機体を転換させた。ミラージュが仕掛けた攻撃を、ヨクは紙一重でかわす。
 また、敵の気配は消えた。
「ルカルカさん。敵の動きは私たちに任せて、攻撃に集中してください」
「ありがとう、佐那!」
 佐那は魔導レーダーに加え、【殺気看破】を試みた。添乗するエレナも、ディテクトエビルに傾注する。
 すみれ色の霧のなか。彼女たちは精神を研ぎ澄まし、姿の見えない幻獣を探した。


「相手が形を変えるなら、ここは冷凍ビームで凍らせて!」
「オーケイ」
 ルカの指示を受け、コードはビームを構えた。次は確実に決めるという想いが、彼を静かに滾らせていた。
 佐那たちが指定するミラージュの位置は、徐々に狭まっていく。
 だが、仕留めるにはまだ広すぎた。

「ふははは! とりあえず撃っときゃ、そのうち当たるでありますよ!」
 別方向から、銃撃と笑い声が聞こえた。
 プラント内に潜入していた吹雪が、ライフルを手当たり次第に撃ちまくっていたのだ。【一騎当千】を発動させた彼女の乱射は、生身とはいえ、無視できない破壊力を持っている。
「まったく。あなたの作戦は、どうしてこう大胆なのかしら」
 コルセアがやれやれとため息をつく。そんな彼女もまた、【歴戦の武術】を施した後、イレイザーキャノンをぶっ放した。
 二人の爆撃により、ミラージュに微かな動きが生じた。
 それは、花びらが落ちた湖面のような、小さな変化だった。

 だが、すでに明鏡止水の境地に達していた、コードの前では命取りになる。
「行くぜ!」
 雄々しく吠え、彼は冷凍ビームを放射した。

 ミラージュの体は瞬く間に凍りつき、この世でいちばん不味そうな氷菓になった。