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悲劇がおそった町とテンプルナイツの願い

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悲劇がおそった町とテンプルナイツの願い

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プロローグ 囲まれた子供達は……}

「囲まれた子供達はどこですか!!」
「あっちだ!!」
 マリアは魔物達に囲まれたという子供達が無事であることを祈り、逃げ惑う人々をかけわけ前へと進む。
 街の奥の方では、紅蓮の炎が強く上がっている。
 その炎の光がマリアを焦らせた。

 一方その頃、マリアが救助に向かう子供達の居る場所ではゴブリン達がまさに襲いかかろうとしていた。
「クッケケケ、ガキども。もう逃げられないぜ」
「ついに囲まれてしまいましたねぇ〜」
「もう逃げられそうにないなの」
 肩パッドを身につけた、大柄なゴブリンは意地の悪そうな笑みを浮かべながら言うと
 スノゥ・ホワイトノート(すのぅ・ほわいとのーと)サリア・アンドレッティ(さりあ・あんどれってぃ)は困ったように目の前に並ぶゴブリン達を見回した。
 スノゥとサリア、そして及川 翠(おいかわ・みどり)ミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)は、大勢のゴブリン達にぐるりと360度囲まれていた。
 突然の魔物達の襲撃から4人は、ここまで逃げてきたがついに囲まれてしまったのだった。
「……ああっもうっ!! 何にも用意してないのに襲われるなんて!!」
 平和な街に遊びに来たつもりが一転して魔物達に襲われることに、ミリアは少々苛立っていた。
「ん〜、よくわかんないけど。こうなったら、とにかく魔物さんやっつけるの!!」
「そうですね〜。どうしてこんな事になったのか気になりますけどぉ。今は魔物さん達を倒しましょうねぇ〜」
 翠の言葉にスノゥは軽く頷くと、突然スノゥの背後に炎を身にまとう【フェニックス】が召喚される。
「なっ、あれは仲間じゃない!! こいつら……ただのガキじゃねぇな」
 大柄なゴブリンは空に舞い上がったフェニックスを見るなり、驚いた。
 ゴブリンは慌てて子分達へ指示を下した。
「オマエ達、変なのがさらに増える前にやれええええっ!!!」
「オオオオッ!!」
 子分だと思われる300近くのゴブリン達が雄叫びを上げ、4人へと猛スピードで駆け寄ってくる。
 が、すぐに6体のゴブリン達が悲痛な悲鳴をあげた。
「ギャアアアアッ、アシ元でナニカガ!」
「グウウウッッ、キヲツケロ銃をカクシモッテル…ゾ…」
 悲鳴を上げるゴブリン達の足下で、サリアとスノゥの【インジビルトラップ】がじわじわとダメージを与える。
 さらにはサリアの【スプレーショット】が、炎から逃れたゴブリン達を追い詰める。
 それだけでは足りず、スノゥの召喚したフェニックスが、地獄のような業火でゴブリン達を焼き尽くしていく。
「まだ、魔物さん達懲りてないなの!」
 それでも近づいてくるゴブリン達を翠はまばゆい光と共に、【我は射す光の閃刃】で一掃する。
 気がつけば4人の周りにはゴブリン達が死屍累々と転がっていた。

「ぐぐぐぐ……なめやがって! 鉄砲隊、あのガキをやれ!」
 大柄なゴブリンが鉄砲隊を呼ぶと、鉄砲隊はそれぞれ翠に向けて弾を発射しようとする。
 が、弾を発射する前に巨大な火柱が鉄砲隊を襲いかかる。
 鉄砲隊はみごとに燃え尽き全滅してしまうと、大柄なゴブリンは絶句した。
「なっ――」
「もう、そろそろあきらめて帰ってくれない!?」
 巨大な火柱、【天の炎】を放ったミリアは、大柄なゴブリンを睨み付けながら言った。

「ぐううううっ!! こんな餓鬼どもに舐められてたまるか!!」
分厚い肩パッドを身に着けた大柄は、子供たちを襲うつもりが逆に痛手を受けていることに腹を立てていた。
 まさか、子供達を簡単にひねり潰すつもりが、こんな事になるとは予想外だった。
 そんな大柄なゴブリンの肩パッドを突然、槍が貫いた。

「ガアアアアアアアアアアアアッ」
「みんな無事ですか!?」

 ゴブリンの後ろから槍の主、ウィル・クリストファー(うぃる・くりすとふぁー)が翠達に声をかける。
 すると、一緒に駆けつけたファラ・リベルタス(ふぁら・りべるたす)は驚きの声を上げた
「な……大変じゃウィル! もう犠牲者があそこに!!」
「えっ!?」
 ウィルがよく目をこらして、あたりを見回すとそこには確かにゴブリン達が転がっていた。
 ファラは、転がるゴブリンを人間の死体だと勘違いしていたのだった。
 ウィルの勘違いを的確に指摘したのはルナ・リベルタス(るな・りべるたす)だった。
「あの転がってる人影は、全部ゴブリンよ」
「なんじゃとっ!? あれ全部か!?」
 翠達の倒したゴブリンをファラは誰がやったのか分からないために驚きっぱなしだった。

「ククク……やるな人間……最後はオレが相手だ」
「まだあのでかいのやるつもりね……」
 負傷し沈黙していたはずの、大柄なゴブリンは血を流しながらも起き上がった。
「まだ、戦う気なの!?」
「も〜っ、いい加減おとなしくなってくださいよぉ〜」
 ルナは呆れたように言い、翠達は戦いで疲れてきているのか、弱音を吐いた。

「グオオオオッ」
 大柄なゴブリンは雄叫びを上げると、体中の筋肉が膨らみ血管がびっしり浮かび上がる。
 その直後だった、大柄なゴブリンは地面をえぐるようにしながら、翠達に向かって走り出す。
「私とウィルがこのでかいのと戦うから、その間に姉さんは子供達を!」
「分かっておるのじゃ!」
 ルナの言葉にウィルとファラは頷くと、走り出したゴブリンへ向け走り出す。
「少しこれでおとなしくするのじゃ!」
「グオッ!?」
 ファラの放った【天のいかづち】が、ゴブリンの上空から稲妻として直撃する。
 突然襲われた衝撃にゴブリンは一瞬よろめく。その間にファラはゴブリンの真横をすり抜けると翠達の元へと駆け寄る。

「グオオオオオオッッ」
 大柄なゴブリンは何とか体の自由を取り戻すと、そばに倒れてあった高さ五メートルばかりの石柱を軽々と肩より上に持ち上げる。
「バカ力……」
「呆れてる場合じゃないですよ! ほら、きますよ!」
 呆れるルナにウィルが石柱を警告する。
 ゴブリンは勢いよく、石柱をウィルとルナに向けて横降りに振り回し始める。
 それをウィル達はすばやく後ろに下がることで回避するが、接近戦に持ち込むつもりだった2人にとっては少々予定外だった。
「このままだと、拉致があかないわ!」
「僕がおとりになりますから、ルナさんはその隙に切りかかってください!」
「え、わかったわ!」
 ウィルの提案に一瞬戸惑ったルナだが、ウィルの提案を頷く意外他に無かった。
 ルナが頷いたことを確認したウィルは、槍を構えると間髪入れずゴブリンへと襲いかかる。
「グゥオオオッ」
 石柱を上空に振りかざし、ウィルへと勢いよく振り下ろす。
 ウィルは持っている槍を石柱に向けて振りかざすと、【歴戦の防御術】でその石柱を槍の先で弾くようにして受け流す。
 同時に反動でゴブリンの横腹を槍で切り裂いた。
「今です」
「わかってるわ!」
 ウィルの後に続いて、ルナが剣を振りかざし【ソニックブレード】で一気に斬りかかる。
「グウウウウッオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ」
 大柄なゴブリンは、腹部を真横に切られその場に倒れ込んだ。

「大丈夫!?」
 髪の長い女性、マリア・ラヴェルが息を切らせながら現れた。
 マリアは、すでに倒されたゴブリン達を見るとほっと安堵のため息をつくと、持ち構えていた銃をポケットに放り込んだ。
「遅いなの〜」
 翠は呑気に笑いながら答えた。
「とりあえず、ここは避難した方がよかろう?」
「そうですね。皆さんはひとまず街の外に向かってください」
 マリアはファラの言葉に頷くと、全員を安全な場所へと案内した。