リアクション
現在から約15年後。 ◆ 現在から数年後。 葦原島、長屋。 「……お父さん、これどういう意味?」 黒髪ロングの少女が読んでいた魔法関連の本から顔を上げ、父親を呼んだ。雰囲気はクールで冷めた感じだ。 「あぁ、それは……」 呼ばれた父親はベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)であった。ベルクは幼い娘に理解出来るようにとかみ砕いて説明した。 「それならこのページに書かれている魔法と掛け合わせたらもっと強くなるよね」 娘は数ページ前を開いて自分の考えをベルクにぶつけた。ベルクと同じで知識欲は高くベルクが買い与える本はことごとく読破するのだ。 「そうだな。お前はなかなか聡明だな」 うなずいた後、ベルクは聡い娘の頭を撫でた。 「だってお父さんの娘なんだから当然よ」 娘は当たり前のようにクールに言って本に戻った。術者でもあるベルクを相当慕っている。 「そうか」 父親として嬉しいベルクはもう一度娘の頭を撫でた。 「もうそろそろ夕御飯ですが、帰りが遅いですね」 台所で夕食の準備をしていたフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)がひょっこり姿を現した。 「あぁ、お前に似てるから好奇心を刺激されたものでも能天気に眺めているのかもな」 ベルクも心配の溜息を吐き出す。フレンディス達が心配するのは友達と遊びに行った上の子供の事だ。いつもならとっくに帰宅している時間なのに帰って来ない。 両親が心配してたその時、 「ただいま!!」 茶髪の元気で能天気そうな少年が現れた。フレンディス達が心配していた子供だ。 「お兄ちゃん、遅いよ。お父さんとお母さん、心配していたんだよ」 現れた兄に妹は厳しい口調で注意した。もうどちらが上なのか分からない。 「……ごめんなさい」 息子は肩を落として心配させた両親に謝った。 そして、 「急いで帰ろうと思ってたんだけど、帰り道で素敵な物を見つけたんだ」 ポケットからいろんな物を取り出しながら弁解を始めた。 「素敵ですね。これは時間を忘れてしまいますね」 息子の掌で輝くガラス玉や形の良い石、色鮮やかな木の実にフレンディスは目を輝かしていた。 「でしょう。あとね、面白い動物がいてずっと見ていたんだ。それにね、この花、はい」 息子はフレンディスの様子に嬉々として話しをし、別のポケットからピンク色の花を取り出して差し出した。好奇心旺盛な様子から息子は明らかに性格もフレンディス似であった。 「綺麗ですね。早速、飾りますね」 花を受け取り早速、飾ろうとするフレンディス。すっかり何かを忘れている。 「……お母さん、違うでしょ」 「……フレイ、違うだろ」 娘とベルクが同時にフレンディスにツッコミを入れた。娘は外見でなく性格も父親とそっくりらしい。 「……そうでした。帰りが遅くなるのは分かりますが、心配しますからなるべく早く帰って来て下さい」 夫と娘のダブルツッコミにフレンディスは我に返り、屈み息子と視線を合わせ母親らしく注意をした。 「……はい」 息子はうつむきながらこくりとうなずいた。 「ほら、ご飯を食べましょう」 フレンディスは息子の頭を撫でた後、夕食の準備に戻った。お土産の花は水の入ったコップに入れて食卓の真ん中に飾られた。 現在から数年後。 「……なのですよ!」 獣人姿の忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)は楽しそうに隣に座る女の子に話しかけていた。聞き手である女の子は楽しそうにポチの助の話に耳を傾け、時々相づちを打っていた。 「……でもこの僕が……」 話し続けるポチの助。なぜか相手が女の子である以外誰なのか、ポチの助との関係が親友なのか恋人なのかも全く分からない。 ただ、分かるのは 「……それとですね……」 ポチの助が獣人姿で女の子と一緒にいる事に幸せを感じている事だけだった。 ■■■ 「マスター、ポチ! アゾートさんが未来を体験出来る魔法薬の被験者募集中との事です。 私、申込みしておきましたので是非とも参加致しましょう!」 被験者募集の話を聞きつけたフレンディスはその場でアゾートに参加の旨を伝えたのだった。好奇心満々である。もはやベルクとポチの助には拒否権が無くなっていた。 「未来か、俺にとっては暗い未来も明るい未来も決まってるも同然なんだがな。まぁ、作ったのが双子でなくアゾートなら何も問題ねぇか」 ベルクは製作者がアゾートであるためか珍しく拒否を示さなかった。 「ふふん。この超優秀な僕に暗い未来なんてある訳ないのですよ? 何しろ僕の将来は犬の頂点に立つと決まっているのですからね! 体験する未来は予想通りでしょうが、興味はありますので使ってやりましょう」 無駄に自信満々のツンな言葉とは裏腹に魔法薬に興味津々のポチの助。 フレンディス達は早速体験しに行った。 体験後。 「……こればかりは死んでも言えませんっ!!」 アゾートに内容を聞かれるとフレンディスは赤面し焦り気味に拒否した。当然、アンケートへの記載も断った。 「……初夢の時と違って内容を覚えているのはいいが、あんな未来が本当に来るのか」 フレンディスと共にいるかどうかが重要なベルクにとって体験した未来は願望そのものだが、現在からは遠い道のりでもあった。 「……何で僕はあのような未来を見たのでしょう? それにあれは一体誰だったのでしょうか?」 未だ恋愛感情に目覚めていないポチの助はひたすら首を傾げるばかりだった。 |
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