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―アリスインゲート2―

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―アリスインゲート2―

リアクション

 さて綾瀬たちが食事をしているその地下。アンダーグラウンドに奇妙なオブジェが形成されていた。
 原因は笠置 生駒(かさぎ・いこま)のせいだ。
「スゴイぞコレが完成すればアンダーグラウンドの性能が何倍にも成るんだ!」
 とか妄言を振るう。
 目の前にあるのはアングラと廃棄場から拾い集めてきた基盤とエンジンとその他もろもろのよくわからないものたちで作った巨大なコンピューターのようなもの。画面には車のフロントガラスを組み合わせてアナログチックにブラウン管ディスプレイにしてある。
 なおこれがアングラに影響をあたえることがあるとすれば、入り組んで狭い道を幾つか塞いで通れなくしている事だろう。迷子になる要素に+20%の補正といったところか。
「ウキ?」
「おージョージ! 帰ってきたね。 ん? あんた何持ってだよ」
 ジョージ・ピテクス(じょーじ・ぴてくす)の引っ張ってきた人型のそれに生駒が目を細める。引っ張られたそれはシーニー・ポータートル(しーにー・ぽーたーとる)と言うのだが今はそれが何なのか一人と一匹は知らない。
「うぃ……さけぇ……」
 明らかに酔いつぶれた浮浪者なのだが、
「だめだろう。そんなの拾ってきたら。元の場所にかえしてきなさい」
 捨て猫か捨て犬を拾ってきた子供を叱るように生駒がジョージを叱る。拾ってきたのは捨てヴァルキリー(酔)は果たして何処に戻せばいいのだろう。
「戻すのはあとでいいけど。その前にこいつの試運転だ」
 生駒の手がレバーを引く。前時代的なスイッチをオンにする。
 ガコンと作動音後に煙と火花を吹き出し始める。地面が揺れてゴゴゴとか嫌な音を鳴らし始める。
「これは、お約束かな――」
 爆発オチという嫌なフラグを立てつつ、生駒はその場からランナウェイしようとした。これでは爆破テロではないか。アンダーグラウンドでENIAC級の巨大PCが爆破しては上層階にも甚大な被害を及ぼすのは明白だ。
「あー!」
 爆発から我一人逃げようとする生駒を指さす少女がいた。
「こんなことしてあなたたち“わるいひと”でしょ! このへんにわるいひとがいてわるさしてるって、カーたんがいってたもん!」
「何を言ってるんだよこのこは!? そんなことよりアンタもにげないと――」
 コンピューターは更に甲高い悲鳴を上げる。スパークした電気が狭い通路の配管を伝わるのが見える。爆発まで時間の問題だ。
 そんな危険極まりない塊に少女は近づき、
「こんなあぶないものをここにおいてちゃダメでしょー!」
 片手で持ち上げた。持ち上げられたそれは勝手に体積を減らし半分の大きさに圧縮変化する。
「よいっしょーっっと」
 掛け声一つ、天井へと投げる。かつて誰かが落ちてきた穴へと向けて。
 鉄の塊は穴を大きくして突き抜け、商業都市の空に浮いた。速度が0に達した所でそれは爆散し鉄の雨を街に振らせた。
 少女がよしとガッツポーズを取る。
「ナンナだよ……」
 おまえと生駒が問うと少女が答える。
「あたしのなまえはスティレット・フォール!」
 名前を告げ、特殊戦略兵器カテゴリーF―code020712―は宣言する。
「いまからあんたたちわるものをみんなやっつけてやる!」


 隣の凄惨な食事風景から目を逸らし、
「よしじゃあ、気を取り直して……いただきま〜」
 す、と口を大きく開けたベリアル。スプーンで桜色のプリンらしきものを掬おうとしたその時だった。
 外で大きな爆発音が轟き、飛来したそれが窓ガラスを割って入ってきた。
 IBM98らしき形状のそれは綾瀬たちの座る席に突き刺さり、一口も召していないプリンかも知れないジェラートを皿とテーブルとベリアルの心ごと粉砕した。
「ぼ、僕のプリングガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
 怒りと悲しみと憎しみと空腹の叫びが店外にまで木霊した。

担当マスターより

▼担当マスター

黒井 威匠

▼マスターコメント

 やあ、またあったね。黒井威匠です。
 とりあえずコレを飲んで落ちつてほしい。そう、またなんだ。遅れてしまいました。そして書きすぎでまた続編書くことになりそうなんだ。今回で終わらせるつもりで計画してたのにうまくいかないものです。
 でも、これを読み終えたアナタはいいようのない強烈なデジャブに襲われているかもしれない。まるで『暗がりに響く声』から『アリスリモート』と同じ構成じゃないか。でも違うんだこうなるはずじゃなかったんだ……。
 今回は確実にバットエンドを目指して書いております。そこまで行き着かなかったけど、次回でそこに皆さんを貶めたいところです。しかしながら、ひっそりとハッピーエンドのフラグが立ってしまっているので久々の黒いエンドになれるかわからなくなっています。
 次回の続編。もしくは別の世界で合いましょう。
 それではまた。いろんな補足はマスターページにて。