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夏合宿、ざくざく

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夏合宿、ざくざく

リアクション

    ★    ★    ★

「えっと、森に埋めろって言われたんだったよね。このへんでいいかなあ」
 森の入り口である90番区画にやってくると、デメテール・テスモポリスが、『古代オリュンポスの宝珠』の入った小箱を埋めました。ドクター・ハデスの鑑定では、古代にあったはずのオリュンポス文明の超古代遺産なのですが、当然そんな公式設定はありません。あくまでも、ドクター・ハデスの頭の中だけのローカル設定です。
 当然、そんなガラクタに興味はないので、穴もしっかりとは掘りません。むしろ、小箱の上の方が地面にのぞいてしまっています。けれども、これによって、デメテール・テスモポリスは命拾いしたのでした。その下の地面の中からは、「ふふふふ、早くこいこい」という葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)の不気味な声が聞こえてくるのでした。自らを埋めて、トラップとしていたのです。
「早く来ないと息が苦しい……」

    ★    ★    ★

「まったく、ゴミを埋めてる気分だわ」
 ウロボロスの描かれたオリュンポスのマークが入った大きな箱を土の中に埋めるために、森の中の92番区画にかなり大きな穴を掘りながら高天原咲耶がぼやきました。中に入っているのは、『冥王ハデスの闘衣』です。
 それにしても、鎧なのでむやみに大きくて埋めるのが大変です。
「あーあ、こんなことしていないで、海に入ってみんなと泳ぎたいわ。ううっ、なんだろ、悪寒が……」
 何か変な感じに、高天原咲耶が身を震わせました。すると、スコップにすくい取った土の上に何か封筒のような物が載っています。
「何かしら?」
 拾いあげてみると、その中には、天沼矛フリーフォール券が入っていました。
「落とし物かしら?」
 いえ、本来の宝物です。
「とにかく、いつまでもこんなことやってらんないわ」
 チケットをポケットにねじ込むと、高天原咲耶はさっさと穴を埋めてしまいました。
「さっ、埋める物は埋めましたし。後は兄さんたちと合流して、思いっきり海で遊びましょう」
 とんとんと足で地面を踏みならすと、高天原咲耶は海岸の方へとむかいました。

    ★    ★    ★

「うむ、これぞ究極の宝。掘り出した者は、感涙に咽ぶだろう。みごと掘り当てれば、はれて我らオリュンポスの一員だ」
 森の中に『オリュンポス入会届け』の入った封筒を埋めながら、ドクター・ハデスが満面の笑みを浮かべました。
 掘っているときに青いキャンディーを見つけたので、ちゃっかりとポケットに入れてしまっています。なめると、一日だけ十歳年をとる『大ババ様特製青いキャンディー』なのですが、当然気づいていません。
「さて、戻るとするか」

    ★    ★    ★

 さて、森の中の96番区画です。ここにはアルテミス・カリストが『オリュンポス・セイヴァー』を埋めに来ました。
「この剣はかなり珍しい物なのに、埋めてしまうのはちょっともったいない気もしますね」
 よいしょよいしょっと穴を掘っていきながら、アルテミス・カリストが言いました。
 ぐにゅ。
 なんだか、地面が急に柔らかくなったような気がします。
「あれれ、どうしたのでしょう」
 なおも勢いよく掘っていくと、カチンとスコップの先が何かに当たって、瓶が割れるような音がしました。次の瞬間、突然地面から赤い物がしみ出してきます。
「きゃあ! 血!?」
 まさかこれが幽霊かと思う間もなく、その赤い液体が突然盛りあがって襲いかかってきました。なんと、お宝として埋められていた『マジックスライム(赤)』です。
きゃあ、服がぁ! もう、見ないで……!
 あっと言う間に、アルテミス・カリストの着ていた双錐の衣、三日月の兜、イーダフェルトアーム、アトラスレギンスがバラバラのパーツに分解して辺りに飛び散ります。なまじ、魔法防御のある装備ばかりを着ていたのが徒になりました。当然、アルテミス・カリストはすっぽんぽんです。
ごめんなさい、みなさん……
 魔力を吸われて、アルテミス・カリストがバタンキューとその場に倒れて気絶しました。ひとしきりすっぽんぽんのアルテミス・カリストの上を這いずり回っていたマジックスライムですが、魔力を全て吸い取ると、満足したかのように地面に染み込んで姿を消してしまいました。