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百合園女学院の進路相談会

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百合園女学院の進路相談会
百合園女学院の進路相談会 百合園女学院の進路相談会

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「進路相談? ってそもそも百合園の生徒じゃねーし……お悩み相談でもいい? でも俺ぁ悩み事なんて特に……」
 お菓子はうまい。お茶もうまい。お茶菓子だから、一緒に食べるともっとうまい。
 ヴァイシャリーは美食の街でもある。で、百合園女学院は高級品を惜しげもなく使う。
 庶民的な屋台のクレープやドーナツから、ちょっと美味しいジェラートから、高級レストランのケーキまで。各種揃ったお菓子をぱくぱく食べ歩いているのはアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)だ。
 お茶と茶菓子に釣られてやって来たので――そして交流もメインだったので、これは正しい姿である。
 尤も、女性のパートナーであるルシェイメアを連れて来たのは、女の子ばかりの状況に尻込みしたから、だった。
「うむ、あちらが相談室のようじゃな」
 廊下に続く扉をルシェイメアが示す。
 アキラは最初、その扉を通り過ぎた。またお菓子を貰ってはもぐもぐほっぺたに詰め込んだ。
 その途中にふと頭によぎるものがある。
 そして、もう一口シュークリームをぱくりと食べた。味は、美味しい。美味しいのだが……決め手に欠ける。その原因をちょっと考え、頭によぎったものを考えて。席を立って、考えて。
(あーちょいとアレ聞いてみるかなぁ)
 アキラはルシェイメアと一時別れて、丁度開いた相談室へと入っていった。
 そこには、桜井静香がいる。彼を選んだのは、唯一の地球人だったからだ。
「こんにちはー」
「こんにちは。あ、お菓子持ってきてくれたの?」
「食べてる暇がないんじゃないかってさー」
 会場で食べ歩いたうち、アキラがセレクトしたオススメだ。それを差し出しながら、アキラは頬杖でもつきそうな雰囲気で、のんびりした声で尋ねる。
「静香校長ってさー地球に家族とかっているの?」
「うん、いるよ。両親が」
「おじーちゃんとか兄弟は?」
「いないよ、両親だけ」
「友達とか、学友とか、幼馴染とか仲の好い子とかは?」
「え? ……うーん……友達はいるけど、特別親しい子はいなかったな」
 その理由はアキラにも想像が付く。パラミタでは目立たないだろうが、静香は女装が好きだった。百合園女学院に通いたがるような子でもあったから。
 アキラにも家族がいる。両親と、二人の姉妹だ。
「……でまあ、なんでそんなことを尋ねるかというと」
 アキラはクッキーを口にする静香を見て、口を開く。
「――もし5千年前と同じように、地球とパラミタの繋がりが断たれてパラミタが消えてしまい、双方自由に行き来できなくなっちゃったらどっちに残る?」
「……絶対はっきりこうとは言えないけど、パラミタに残るんじゃないかな。……どうかしたの?」
「杞憂かもしれないけど昨今の状況を見ているとそうも言ってられないし。地球を選んでもパートナー達は皆ついて来てくれる……だろうけど、パラミタにある繋がりはそれだけじゃないし」
 アキラはぼんやりした中にも、真剣な表情だった。
「親は『お前はもう一人前の大人なんだからお前のやることにとやかく口出しはしない。悔いのないようにやりなさい』て言ってくれてたけどパラミタに残って二度と会えなくなるってなったら多分母ちゃんと下の妹は泣くと思うし、どーしたもんかなぁと」
 静香は顔を上げ、物憂げなアキラの慰めに少しでもなるように、そして決意を改めて応える。
「悲しむ人が少しでも減るように、僕も頑張るよ」
「……まあこんなの起きなのが一番なんだけどね」
 静香の答えは、一助に過ぎない。一助ですらないかもしれない。
 ぼんやりしながら、アキラは、答えのない悩みをぼんやりと心に留めながら引き続きお菓子を食べ歩く。