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特別なレシピで作製された魔法薬

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特別なレシピで作製された魔法薬

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「まずはシンリさんを捜して完璧な解除薬を用意しなければ」
 舞花は皆と打ち合わせを終えた後、調薬探求会の会員特にシンリを捜索していた。
 捜索だけに集中する事は無く、途中で出会う被害者にも解除薬を渡して避難するよう警告したりと救助のための仕事は怠らず頑張っていた。

 捜索を開始してすぐ。
「シンリさん!」
 『捜索』を有する舞花は無事にグラキエス達に同行するシンリを発見した。
「君か」
 顔見知りの舞花の登場にシンリはすぐさま足を止めた。
「調薬の準備が出来ていますので完璧な解除薬と空気清浄薬の製作に取り掛かってくれませんか? 現在、調薬担当の者が分析をし作業をしています。被害者が増える一方でこのままでは妖怪の山だけにはとどまらず他の場所にも被害が拡散します。お願いします」
 舞花は手早く事情を話し、人道的見地を含めつつ行動を起こしてくれるよう頼む。
「構わないよ。丁度、データも十分集まって戻ろうと思っていた所だよ」
 シンリの返答は思いの外あっさりしたものであった。なぜならシンリのやるべき事は終わっているし他の会員が動いているためだ。
「では、お願いします。何か必要な素材がありましたら採取しますが」
「それなら……」
 舞花の協力にシンリはグラキエス達と巡回する中ですでに解除薬の構想が組まれたらしく必要素材を手早く指示した。
「分かりました。採取し、すぐに届けますので作業を始めて下さい」
 『野外活動』を有する舞花はすぐさま駆け素材を採取し、宿に届けた。以前ここで採取した経験が役に立っている事は言うまでもなかった。

 救助に出撃した者達を見送った後。
「さてと始めようか。ダリル、淵」
「あぁ、早くしなければな。何せ、皆の命がかかっている」
 ルカルカと夏候淵はイルミンスールよりも危険とあってかなりやる気である。
「……作製するのは空気清浄薬、液体型の解除薬、念には念をで液体用のフォローとして錠剤型か。かなり手間が掛かりそうだな。しかも黒亜が他の魔法薬をばら撒いたら意味をなさなくなる」
 『博識』を有するダリルは作業について確認する。
「確かにね。でもあれだけ人数がいるんだからきっと大丈夫だよ! 絶対に間に合うはず」
 ルカルカは先程集まった救助者達の顔を思い出しながら笑顔で言った。
「そうであればいいが。とにかくシンリが来るまでに作業を進める。この宿に被害者がいるのなら彼らの衣服等に付着した物と血中成分の解析で構造等を調べる。足りない部分はシンリが集めた情報と併せて確認すればいいか。間違い無く情報集めをしているはずだからな。とにかく時間は無駄には出来ないから始める」
 『薬学』のダリルが中心となり空気清浄薬と完璧な解除薬作製に入った。
「それじゃ、ルカは被害者から衣服を借りて来るね」
 ルカルカはダリルの手伝いに動き
「俺は救助の手配をして来る。機械であれば被害には遭わないから迅速に被害者をここに集める事が出来るはずだ」
 夏候淵は飛行機晶兵達に命じて被害者の搬送に行かせて自身は運び込まれる被害者の対応に追われる事となった。
 しばらくして捜索者によってシンリと会員達が帰還し空気清浄薬と完璧な解除薬の製作に入った。人手と腕が一気に増えた事で作業は進み、空気清浄薬が先に完成し散布となった。続いて完璧な解除薬が完成しルカルカ達は散布に出撃し、残ったシンリ達は空中散布から洩れた被害者のために錠剤の製作に入っていた。

 温泉宿『のっぺらりんの宿』前。

「そうですか。分かりました。十分に気を付けて退避して下さい。受け入れの準備も整えておきますね。こちらは順調に事が運びましたのですぐに完璧な解除薬と空気清浄となります」
 素材を渡し終えた舞花に羽純から『テレパシー』による退避するという報告が入り舞花はついでに自分の状況も伝えた。
 そして、舞花は歌菜達の受け入れ準備を整え、待機してすぐに歌菜達が現れ素速く対応した。
 その後、空気清浄薬が先に完成を迎え、
「急いで散布をしなければ」
 舞花は急いで散布用機器を設置した小型飛空艇に乗り込みすぐさま散布に飛んだ。

 舞花が飛んでしばらく後、液体版の解除薬が完成した。
「確か黒亜はまだだったな。余計な事をされないか多少気になるな」
 ダリルはまだ黒亜が発見されていない事に危惧を抱いていた。
「そうなる前に見付けないとね。あと、散布の時は黒亜が別の魔法薬をばら撒いている可能性も考えて警戒していくよ」
「あぁ、当然だ。もしかしたら散布中に遭遇する事もあるかしれんぞ。その時は……」
 さらなる警戒事項を提示するルカルカと正義感の夏候淵は即答した。夏候淵は遭遇した時の事も考えていたりしてる。とにもかくにも液体版解除薬が入ったタンクを持ち『肉体の完成』で耐性を上げてからダリルは氷雪比翼、ルカルカは火炎比翼、夏候淵は暗黒比翼を使って散布のため空を飛んだ。

 妖怪の山上空。

「……これでひとまず空気の汚染は防ぐ事が出来ましたが、解除薬の完成はまだですから安心は出来ませんね。それに黒亜さんも発見されていないとなると。何か魔法薬を散布される可能性も……その前に発見出来れば」
 真っ先に空気清浄薬散布を終えた舞花は眼下に広がる山の景色を安堵と危惧の入り交じったつぶやきを洩らした。捜索に奮闘する者達の健闘を祈り宿へ帰還した。