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一会→十会 —鍛錬の儀—

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一会→十会 —鍛錬の儀—

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【最後の二つ名】


 あれから――。
 平太は三日三晩かけて、契約者たちの武器を作り上げた。
 出来上がったものを受け取り、契約者たちは次々に山を下りていった。
 最後に残ったのは、一際大きな石。
 美しく、力に溢れている――と思った。これを渡されたときのことを、平太は思い出した。

「【大気を震わせる音】。これなら多分、【風を喚ぶ】魔法使いに対抗できる」
 アッシュの言葉にふむと頷いた平太は、一度納得しかけたそれに改めて疑問を持った。その風を喚ぶ魔法使いは、トゥリンやベルナデット達が相対した君臨する者の三人の中の一人で、真が見た影の特徴を当てはめるとピオ・サピーコという者だろう。
 彼等はケーブルカー組へ「戦いの日がくる」と言ったようだから、対抗する武器が必要になるのは確実だったが、ピオが何時何処へ現れるのかは分からないのだ。
「他の人の武器にも、それ付ければいいんじゃないですか?」
 対抗できる人間は、多い方がいいに決まっている。そんな平太の質問に、アッシュはかぶりを振った。
「さっきも説明したけどね、 魔法世界の二つ名は、その名を持つ魔法使いの力に応じて、能力が異なるんだ。
 魔法力の低いものは【水】【風】【土】のような単純なものしか持てないし、魔法力の高いものは――、例えば君臨する者サヴァスのように【融解】とか、特殊なものも持てるし……。
 今回の武器は、魔法力と機晶エネルギーの組み合わせで、魔法力だけ能力を反映してる訳ないんだけれど、それと同じシステムで作ってるから――」
「能力が低いものには、使いこなすのが難しいんですね?」
 豊美ちゃんが言うのに頷いて、アッシュは続ける。
「それに二つ名は単語の組み合わせだから、幾つも組み合わせる事は出来るけど、そうするとより複雑になって、やっぱり使いこなすのが難しいんだ」
「あ、つまり【大気】【振動】【音】、三つの特殊な単語の組み合わせになるんですね。
 ……でもそんなすごいもの、誰が使えるって言うんです?」
「うーん……僕が今迄見て来た中では、一人、いるかな」
「Hey,what’s wrong?」
 他の契約者同様、下山の準備を終えたアレクサンダル・ミロシェヴィッチがやってきたのに、平太はなるほどと頷いた。
「【大気を震わせる音】。
 確かにアレクさんなら使いこなせると思います!」
 得心した彼の笑顔に、アレクは話の全てについていけないながら「俺じゃあ無理だ」と平太に言って、こうつけ足した。
「相性が良さそうなのは、一人知ってる」