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【ニルヴァーナへの道】崑崙的怪異談(前編)

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【ニルヴァーナへの道】崑崙的怪異談(前編)

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【1】奇異荒唐……6


「光を帯びた武器か。準備してきて正解だったようだね」
 桃木剣をエペのように構え、黒崎天音は華麗な突きの連撃を繰り出す。
 光輝属性に触れたキョンシーの身体は傷口からボロボロと崩れ始めた。
 しかし、と天音は装着していたポータラカマスクを脱ぎ捨てる。
「こっちはダメか。呼吸を抑えれば標的から外れると思ったけど、大きさに関わらず呼吸をする者を襲うようだね」
 傍らでは、竜人ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)が如意棒を手に立ち回る。
「そっちはどうだい、ブルーズ」
「ぬうう……! 何度も殴りつけているが、びくともしないぞ! 物理耐性が高過ぎる……!」
「西遊記じゃこれで殴り倒してたけど、コンロンのキョンシーはそうはいかないのか……」
「そ、そんな理由で我にこれを持たせたのか!?」
「昔から残っているものは、何かしら大切なことを教えてくれるものさ。それに何事も試してみなくちゃわからない」
 不敵に微笑みながら、天音は敵の首を切り落とし、床に転がす。
 ブルーズは倒れた骸にむっと顔をしかめた。
「おまえと言う奴は、服だけじゃなく死体までもうこんなに散らかして……」
「ブルーズ、ここは僕の部屋じゃないんだからいいだろ?」
 と、不意にメルヴィアが生首を踏み付けた。
「ふん、こいつらが痛みを感じない骸なのが残念だ。敵をいたぶる楽しみがないではないか」
 唇を歪める彼女に、天音は目を細める。
 一目見た時から同じタイプだとは思ったけど、なかなかのものだね。いずれ決着を付けねば……。
「……私の顔に何か付いているか?」
「いや、別に……」
 そう言いつつも、天音の目には炎が踊る。同じSとして何か負けられないものがあるようだ。
 とその時、盛大な血飛沫が天井近くまで上がった。
 セシリア・ライト(せしりあ・らいと)による則天去私の一撃でほふられた屍人の中身である。
 黒い血が付着した撲殺天使専用野球のバットを担ぎ、まだまだわらわら湧いてくる敵にゲンナリした顔を見せた。
「売られたケンカは買うけど……ちょっとこの数はもたないよ……」
 メルヴィアの元まで下がると、護国の聖域を自分の周囲に展開し時間を稼ぐ。
「ねぇ、どうするの? このままじゃこっちがもたないよぉ」
「先ほどからディテクトエビルを張ってますけど、まだ奥に無数の反応があります……」
 シャーロット・スターリング(しゃーろっと・すたーりんぐ)は怯えた様子で言った。
 キョンシーも怖いが、彼女は暗所恐怖症、この霊廟自体が彼女の天敵のようなものだった。
「……ここで応戦していてもジリ貧だ。ここは強行突破しかあるまい」
「なら、突破口を開くのは任せてっ!」
 そう言って、フレデリカ・レヴィは探索隊の前列に躍り出た。
「どうにか出来るのか?」
「そろそろ西洋魔術の真価を見せとかないと、ミストルティンに面目が立たないからね」
 フレデリカは指先に嵌めたニーベルングリングを天に向ける。
「熱き翼よ、幻界より来れ! フレデリカ・レヴィの名において汝を呼ばん……フェニックスッ!!」
 刹那、彼女から炎が噴き上がる。炎は頭上でひとつの形を成し、次第にその輪郭線を浮き彫りにしていく……!
 大きな翼を天井いっぱいに広げて、甲高い声で鳴くのは炎を司る霊鳥フェニックス!
「行けっ!!」
 その羽ばたきは炎を巻き起こす。脈打つ火焔の本流が屍人の群れを飲み込んだ。
「大尉、今のうちに前進を!」
「よし、よくやった! 探索隊、我に続け!」