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【ダークサイズ】灼熱の地下迷宮

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【ダークサイズ】灼熱の地下迷宮

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「総員、戦闘配置!……ううむ、いかん。まさかマグマイレイザーが向こうからお出ましとは……」

 一体目のマグマイレイザーとの戦闘後、戦闘要員の多くは、護衛と回復を兼ねて遺跡へ出払っていた。

「総帥、ダイダル卿も遺跡へ帰っておるのだな」
「あ、はい。本人よりぱんだ部隊の回復に」
「アルテミス、食料はもつか」
「シシル、カレン、円、アキラからの献上品があります。ただ残りがわずかなので、補給があるまで魔力はセーブせねばなりません」
「そうか。今総力戦をしかけるのは早計だな」
「閣下、マグマイレイザーのやつ、ドームを壊して入ってきたりしませんかね?」
「うむ。このオアシスは、破壊させるわけにはいかぬ」
「しかしダイソウトウさま。オアシスの堅牢さは、先ほどジュレールが確信しましたが」
「マグマイレイザーの力をあなどるわけにはいかぬ。今度はオアシスの防衛戦になるな」
「何とかオアシスから出て戦わないとダメですね」
「しかし、補給隊が戻るまで打って出るわけにはいかぬな」

 ダイソウと超人ハッチャンとアルテミスが打ち合わせる中、満を持して大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)の登場である。

「一戦目は様子見するハメになったけど……いくらマグマイレイザーとはいえ、人間の都合で殺してしまうのは忍びないで」
「泰輔……やっぱり本気なのかい」

 フランツ・シューベルト(ふらんつ・しゅーべると)は、巨大なマグマイレイザーを前に、さすがに少し足が震える。
 泰輔はフランツに親指を立て、

「ああ。マグマイレイザーを……手懐けるで!」
「酔狂にもほどがあるが、まぁもの好きな泰輔の事じゃ。好きにしてみるがよかろう。危険と判断したなら、我を呼ぶのだぞ?」

 讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)は、泰輔の意思を尊重している。
 レイチェル・ロートランド(れいちぇる・ろーとらんと)が巨大な猫じゃらしを抱えている。

「ほ、ほんとにこういうものでマグマイレイザーを懐柔できるのでしょうか……それに、マグマイレイザーって、コミュニケーションは可能なんですか?」
「大丈夫やレイチェル。愛さえあればラブイズオーケーや。友達になれば、誰もケガせんで部品を吐きだしてくれるかもしれへんし!」
「そうですね……平和的に事が運べば、私たちにもマグマイレイザーにも、それが一番いいですし……分かりました。では行きましょう」
「いや、待つのだレイチェル。複数で行くのは危険であろう。むしろ敵愾心を刺激するやもしれぬ。ここは泰輔、そなた一人でゆくのだ」

 と、顕仁が冷静なアドバイス。
 さすがにフランツが驚く。

「そ、そんな顕仁! 泰輔一人だって? そりゃあいくらなんでも……」
「いや! ええんやフランツ。顕仁の言う通りや。大人数で行って友達も何もあるかい。そんなもんただの恫喝や。手懐けるなら、僕一人の方が都合がええ。友情は人数やない、一人の心や!」
「た、泰輔さん……!」

 何だか感動的な雰囲気を醸し出しながら、レイチェルが泰輔に猫じゃらしを渡す。
 泰輔はダイソウを振り返り、

「そういうわけでダイソウトウ! 僕がマグマイレイザーと友達になって、部品を吐きだしてもらうさかい」
「な、泰輔。何を無茶なことを言っている」
「マグマイレイザーは平和に暮らしとったんや……それを邪魔しに来たのは僕たちやないか。よってたかって痛めつけるのは……気に入らんで!」
「むう、それはそうだが」
「それに……人が少ない今、攻撃したらこっちは下手すりゃ全滅。そうやろ?」
「泰輔……おまえは……」

 泰輔とダイソウの間を、風が抜ける。
 ダイソウのマントがたなびき、泰輔は髪をなびかせる。
 ダイソウは彼の前髪の隙間から垣間見える細い瞳から、漢の覚悟を見た。

「よかろう。任せたぞ」
「あいつをペットにできたら、部品は買い取ってもらうさかい、お金用意しといてや……!」
「……泰輔め、ぬかしよるわ。アルテミス、泰輔に加護を。外へ出させるのだ」

 ダイソウと頷きあい、泰輔はマグマイレイザーを向き直る。
 泰輔はアルテミスの加護を単体で纏い、オアシスのドームを出る。
 マグマイレイザーは一人出てきた人間を見下ろし、巨大猫じゃらしに目を留める。

「うおおおおお! マグマイレイザー! 今この瞬間から、僕たちは友……」

ぱしっ……

『た、泰輔――――!』

 フランツたちが騒然とする。

「大変だ! 泰輔が猫パンチみたいなの食らっちゃった!」
「いや待つのだ、フランツ。まだ泰輔はやられておらぬ」

 見ると、猫じゃらしを杖に口から血を流す泰輔が立ち上がる。
 フランツたちのみならず、ダイソウたちもすさまじい緊張感で泰輔を見守っている。

「なるほど。これがマグマイレイザー流の挨拶ってわけやな。分かってるで。君はこの猫じゃらしにじゃれただけ……」

ぱしっ

「うぐう! ほら……僕は味方やで」

ぱしっ

「く……一緒に、人間と共存するんや」

ぱしっ

「ぐおっ! ……怖くない……ほら、怖くない」

ぱしっ

「ぐはっ!……そ……そなたは美しい」

ぱしっ

「……顕仁……ダメや」
『諦めたーーーー!』

 顕仁が急いで【地獄の天使】を展開して、泰輔の救出に向かう。

「さてと、ねえ向日葵。さっきから完全に空気になってるけど、今こそ出番じゃないの?」
「え、な、何?」

 菫の言葉に、向日葵がドキリとする。

「来がけに行ってたわよね。スクープ撮ってかないと、クビになるかもって。今ダークサイズは手を出せないから、チャンスよ?」

 空京放送局と連絡を怠っており、局をクビになりそうな向日葵。
 フレイムタンの発見と、マグマイレイザーの情報を持ち帰れば、首の皮一枚つながるというもの。
 菫の言うことは分かるが、マグマイレイザーの泰輔への反応を見る限り、明らかに向日葵も危ない。

「えええええ、えーとね……」

 向日葵は一生懸命言い訳を考えているが、

「なるほど、サンフラちゃん。さっき応援に終始しておったのは、このための体力温存だったのだな。なかなかの策士よ」
「ちょっとダイソウトウ! あんた乗って来てんじゃないわよ!」
「ほう、ではもう戦いを開始してよいのだな?」
「いや、それはちょっと待って……」
「マグマイレイザーを取材して放送局に復帰するか、クビになってダークサイズでバイトするか。二つに一つだな」
「わかったわよ! 行けばいいんでしょ行けばー!」

 半ば自棄になった向日葵は、巫女服にマイクを持って、おそるおそるマグマイレイザーの前へ。
 しかも、リニア組立班で抜け、優希もまだオアシスに戻っていない。
 完全に一人で取材に挑戦する向日葵は、

「こ、怖いよぉ〜……ひーん……」

 と、泣き出してしまった。

「サンフラワーちゃんいじめちゃだめー!」
「てめえダイソウトウ! なかなかグッジョブじゃねえか!」
「言ってることめちゃくちゃだぞ……」

 ノーンとゲブーがダイソウにクレームをつけ、永谷が二人を諭す。
 しかし、泰輔と向日葵の行動がついに功を奏す。

「戻ったぞダイソウトウ……うおー! マグマイレイザーがおるー!」

 遺跡からダイダル卿たちが戻り、早速マグマイレイザーに驚く。

「泰輔、サンフラちゃん。時間稼ぎ、見事であった!」

 狙っていたのかどうか、ダイソウは二人に労いの言葉をかけた。