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リアクション
大蛇の巣2
ヘビ型ギフトのいる部屋に、ギフトを得ようというもの、核の破壊を行おうというものたちが続々と到着し始めた。
迷彩効果による隠れ身のまま、青白磁は蛇型ギフトの動きを読み、エイミングによるシャープシューターを行おうとした。しかし先の詩穂の懸念どおり、熱感知センサーか、あるいは何か別の機能によってヘビ型ギフトは青白磁の存在を感知できるらしく、まっすぐに向かってきて暗黒の火炎を吹きかけてきた。
「おっと!」
素早く避ける。
「小細工は通用せんか。いくで!」
ゴッドスピードですれ違いざま、とどめの一撃を打ち込もうとする。が、シャープシューターも併用しようとしたのが仇となった。ヘビの尾が猛烈な勢いで振られ、全身を叩きつけられる。青白磁はそのままマヒして動けない。詩穂が背後に回り、ブラインドナイブスを仕掛けようとするが、ギフトはすぐにがっと開いた口から、炎を噴出しようとする。危険と見て取った瀬乃 和深(せの・かずみ)が疾風迅雷の素早さで飛び込んできて、ギフトの首をブラインドスナイプで一撃した。ヘビの首が床に叩きつけられ、炎の狙いは外れた。畳み掛けるように魔障覆滅を見舞うが、ギフトは素早い動きでそれを避け、さっと飛んで退避した。詩穂がすぐに青白磁をその場から退避させる。上守 流(かみもり・ながれ)がギフトの気を逸らすべく突っ込んでゆき、疾風突きを見舞う。ヘビは体を激しく左右に振り、尾でなぎ払おうとする。セドナ・アウレーリエ(せどな・あうれーりえ)が好機と見て、ヘビ型ギフトに向けてホエールアヴァターラ・バズーカを発射した。流が素早く飛びのき、バズーカの直撃を逃れる。ヘビにはヒットしたようだが、目だった傷もダメージもうかがえない。
「ちょっと、セドナ! 危ないじゃありませんかっ!」
「ギフトに直撃できるチャンスだったのだぞ? あれが最善の攻撃であろうが」
流が抗議するが、セドナはどこ吹く風である。
「セドナ、流……危ないぞ」
そう言って和深がヘビ型ギフトに向かって切りつける。ほぼ囮行動のようなものだ。
「……あとで覚えていてくださいよ」
「気にするな。ほら今度はアヴァターラが来てるぞ。まずは敵に集中するが先であろう」
恨めしげな流にセドナはしゃあしゃあと言い、流に忍び寄っていたヘビ型アヴァターラをわざとらしく切り捨てた。
「あれがうわさのギフトか」
国頭 武尊(くにがみ・たける)は多数のヘビアヴァターラに囲まれるようにして部屋の中を這い回っているメカニックな印象の大蛇に目をやった。
「パラ実にもひとつぐらいギフトが有っても良いと思うんだよな……」
猫井 又吉(ねこい・またきち)がざっと浦安から聞いた経路を参考に、銃型HCのマッピングと魔界コンパス、それに記憶術を駆使して地図を作成しながらここまでやってきたのである。当初武尊は、案内は浦安に任せれば大丈夫だろうと言っていたのだが、又吉は浦安は命からがらの脱出だから経路を完全に覚えているとは思えないと反論したのである。
「そのギフト、生け捕りにしてみようと思うんだが、アヴァターラどもの対応をお願いしても良いだろうか?」
和深が頷いた。
「ああ、いいぜ。流、セドナ、アヴァターラへの攻撃メインで行くぞ」
「わかりました」
「うむ、了解したぞ」
武尊はギフトの行動を観察し隙や弱点を探ってみていたが、特に弱点らしきものは見つからない。
「仕方ない。力ずくで行くぜ」
ギフトに向かってワイヤークローを射出する。ヘビの胴に絡みついたのを見て取ると、ヘビの首を力いっぱい掴んで抑えこむ。このために筋力を強化させる装備で全身を固めてきたのだ。細長い体のあちこちに真空波を打ち込んでみるが、目に見えた傷はつかない。スタンスタッフで力の限りの疾風突きを見舞う。
「パラ実を舐めんな、このギフト野郎!!」
合わせて又吉が放電実験を叩き込む。
「舐めんじゃねーぞ。この野郎!!」
だが、ヘビ型ギフトは全身をワイヤーで覆われていたわけではない。強力なシッポの攻撃が武尊もろとも又吉をを襲った。凄まじい勢いでカベに叩きつけられ、マヒする武尊と又吉。
「う……さすが歴戦の契約者すら昏倒出来る代物だぜ……
首尾よく捕獲できたら分校に連れてってこき使ってやろうと思ってたのに……」
武尊が呻くように言い、又吉がうなり声を上げる。
「……まったく、分校の為とは言え面倒な野郎だぜ」
「厄介そうだな、大丈夫か? 話はできそうか?」
ジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)がサルガタナス・ドルドフェリオン(さるがたなす・どるどふぇりおん)と協力して武尊と又吉を蛇のいる部屋から引きずり出して言った。
「ひでえ目にあった。ああ、体が動かねえだけだ」
又吉がぼやく。
「浦安を案内役でまっすぐ来るつもりが、あいつの怪我が思ったより酷くてな。到着が遅れちまった」
「そうですわ。せっかくの秘伝の妙薬が無駄になってしまいました」
サルガタナスも言う。
「でな? オレはこの巨大イレイザーがまだ動いているのは、あのギフトの影響もあるんじゃないかと思ってるんだ。
それで、ギフトを正気に戻す事が中継基地を救う事に繋がるんじゃないかと考えたんだが……」
ジャジラッドが言った。
「それはどうだろうな……あのギフト、今までのと違って全く話ができない状態だった」
武尊が言う。
「ほう?」
「怒ってて話をしたくないというのではないんですの?」
サルガタナスが聞き返す。
「正常な判断力も何もない、そういう印象を受けたがなー」
又吉が言う。
「まあ、いい。オレの考えに則ってやってみるさ」
「グッド・ラック」
武尊が呟いた。
(成功してくれなければ困りますわね。魔威破魔にこの巨大イレイザーを確保できれば、どこにも類を見ない移動式の巨大迷宮のアトラクションを備えた遊園地が手に入る。その構想を話して機嫌を取っったのが無駄になってしまいますわ)
サルガタナスは彼女なりにまた、思惑を抱えているのである。ジャジラッドは先の部屋に戻ると、ギフトの隙を見て組み付いた。
(さあ巻きついて来い、鬼神力で振りほどいてこのオレの体内に仕込んだパラサイトブレードで両断してくれる)
だが、ギフトは良く大蛇が取るような行動は取らなかった。組み付かれた胴体を激しく振って、ジャッジラッドもろともあたりに叩きつけはじめたのだ。自分自身も相当なショックがあると思うのだが、意に介していない様子だ。さすがに怪力があってもこれにはかなわない。何度かあちこちに叩きつけられ、ジャッジラッドは半ば意識を失って床に転がった。羽純が急いでやってきて、彼を部屋から引きずり出した。そこでは回復要員であるエレノアが武尊と又吉の打ち身などをを手当てしていた。
城 紅月(じょう・こうげつ)はギフトの部屋に入とすぐ、アヴァターラの数と、先に来ていた契約者たちのギフトと戦う様を見ていた。
もともとは蛇型ギフトを可能ならば無視して進む、無理な場合それらの足止め。最終目標としては水晶まで辿り着き破壊するという目的をもっっていた。だがこのギフトには光学迷彩を無効にする能力があるのを目の当たりにし、周囲のアヴァターラの数も半端ではないことなどから無視して進むのは無理そうだと結論付け、レオン・ラーセレナ(れおん・らーせれな)を見やった。
「レオン、どうやらここは回避不可のようだ」
「そうですね。熱感知器官か何かを持つのでしょう。光学迷彩は使えませんね」
「……まてよ……それを逆手にとって、ファイアーストームを壁として使えないかな?」
「どういうことです?」
「つまり……」
紅月は説明した。水晶を破壊するメンバーが、このままでは通れない。通過したいメンバーが隣室に至る通路に抜けるまでの間、ヘビとメンバーの間をファイアーストームで遮るようにする。わざわざ好き好んで魔法を放っているところにやってくることはないだろうし、体温を感知するヘビたちへの隠れみのになるのではないか。
「いい案だと思いますよ」
この方法ならば紅月の身が直接的な危険にさらされる心配はない。レオンは二つ返事で頷いた。先遣としてやってきた核の調査隊をこの方法で無事通すことができた。紅月はにやっと笑ってレオンに向かい、親指を立てて見せた。
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